「扶養控除」は同居していなくてもOK
国税庁の調査(平成28年)によると、日本人の平均給与は「420万円」。20年前は「465万円」でした。平均すると日本人の給与は20年間で「10%」下がっているという計算です。つまり、今の日本は、ずっと右肩上がりに給与が上がっていくというのは難しい時代といえるでしょう。
給与が増えることに過度の期待をすることができない時代ですが、手取り金額を増やす工夫はできます。総支給額からあれやこれや引かれている部分を少なくすることができれば、手取り金額は増えるのです。
そこで今回は、控除をできるだけ増やして、手取り金額を増やす方法を紹介していきます。
まず手っ取り早い方法は、税法上の「扶養する家族」を増やすことです。基本的には、日本の税金は「独身の一人暮らし」が最も不利なようにできています。「配偶者控除」「扶養控除」は、家族がいればその分の税金が安くなるという制度です。
配偶者控除は、結婚しているという前提条件があることはよく知られています。それに対してあまり知られていないのが、扶養控除に関して、税法や社会保険制度が規定している「扶養家族」とは、単に同居している家族というだけではないことです。同居していなくても経済的な連携があることで、税制上、社会保険上の恩恵を受けることができます。以下にて、具体的にみていきましょう。
(1)税法上の扶養範囲は?
所得税法上の扶養の範囲は「6親等以内の血族、3親等以内の姻族」となっています。玄孫(やしゃご)の子である来孫(らいそん)は5親等、その来孫の子である昆孫(こんそん)は、6親等の血族なので、扶養に入れることができます。
(2)扶養の定義とは?
この親族は一定の条件をクリアしていれば必ずしも同居していなくても扶養に入れることができます。一定の条件とは、
●扶養していること
●生計を一にしていること
と税法上は難しく書いてあるのですが、要するに「経済的に面倒をみている」という概念です。
具体的に「いくら以上の仕送りをしなければならない」とか「生活費の何割を払わなければならない」などといった規定はまったくありません。たとえば、親が老人ホームに通っていて月々の支払いは年金で賄えているけど、親の口座の管理だけしているといったケースでも十分扶養ということになります。
(3)具体的に扶養親族を増やす方法とは?
では、具体的にどのように扶養親族を増やせば良いでしょうか。
①年金収入がある場合
親を扶養に入れたくても親自身の年金収入が結構ある、ということもあるでしょう。実は、公的年金受給者で65歳以上の場合、年金収入が「158万円」以下であれば扶養に入れることができます。これは一人あたりの金額です。
たとえば、両親がそれぞれ年間140万円であれば、両親ともに扶養に入れることができます。しかも、親の年齢が70歳以上であれば、通常の扶養控除38万円よりも10万円高い48万円で、両親ともに扶養になっていれば96万円もの控除が受けられます。さらにその親と同居していれば、一人当たり58万円もの控除ができます。
☆ポイント☆
親が遺族年金を受給している場合も考えられます。その場合、遺族年金は所得税法上の収入とはなりません。たとえば遺族年金が200万円で、自身の年金が100万円の結構場合は、収入となるのは100万円だけとみなされますので、扶養に入れることができます。
②両親に生活費を渡している場合
実家から会社に通っている独身の方で、ある程度の金額を毎月親に渡している場合も、両親の収入状況によっては扶養に入れることに問題ないでしょう。
ただし、兄弟で共同して親の面倒をみている場合には、兄弟のなかで親の扶養控除を申告できるのは一人だけなので、基本的には収入が一番高い人の扶養に入れるのが効率的です。
③離婚した場合
日本は離婚大国です。離婚して子どもの養育費を元妻に払っているという方もいるでしょう。自分は子どもを養育しているわけではないから子どもの扶養控除を使えないと思っている方でも、子どもの年齢が16歳以上であれば使えるケースもあります。
次の要件を満たせば、バツイチお父さんも扶養控除が使えます。
●養育費を払っていること
●元妻が子供を扶養に入れていないこと
妻の収入がパート収入程度で130万円ぐらいであれば、元妻は基礎控除、給与所得控除、寡婦控除を使えば、そもそも子どもを扶養に入れなくても税金はかからないので、お父さんの方の扶養に入れた方が得です。
④社会保険上の内縁関係の場合
税法上の配偶者控除は、正式に結婚していなければ使えませんが、社会保険上の夫婦は実は内縁関係みたいな場合でも認められます。同棲中のパートナーが高い国民健康保険料を払っていれば、自分の扶養に入れることで年間何十万円か節約できます。
その要件としては、
●相手の年収が130万円以下
●生計を一にしている
●内縁関係である
内縁関係を示すためには、二人の戸籍謄本が必要で、重婚にならないことの証明という意味合いにもなります。
不動産投資をしているなら確定申告で赤字を損益通算
続いて、税額控除の活用方法について紹介します。
(1)「住宅ローン控除」
住宅を購入した方に限定されますが、税額控除の代表格は何といっても、「住宅ローン控除」です。税額控除は他にも、政党等寄附金等特別控除や配当控除があるものの、会社員にとって節税効果が断然高いのがこの「住宅借入金等特別控除」です。
この「住宅ローン控除」は簡単にいえば、住宅ローン残高の1%分の税金が安くなるという制度です。適用する要件がありますが、単純な例を挙げますと、2000万円の住宅ローン残高がある人なら所得税が20万円戻ってきます。住宅ローン控除に関しては、1年目は必ず確定申告をしなければならないのですが、会社員の場合は2年目からは会社でやってくれます。
なお、注意しなければいけないのは、この「住宅ローン控除」はあくまでも住宅にかかる借入金の残高が基準となりますので、「土地」だけを先行してローンで買った場合には適用がないことは注意が必要です。
また要件は厳しいながらも、買った家が「認定長期優良住宅」か「認定低炭素住宅」の場合は節税額がさらに増え、限度額が50万円に増えます。
(2)所得金額そのものを減らす方法
上記の確定申告書Bの黄色で囲っている青い部分の所得金額そのものを減らす方法です。この部分は、たとえば給与所得控除のように法律でがっちりと決められているので、あまり手を加えることができないと考える方も多いと思いますが、この所得金額を効率よく少なくして節税する方法は、所得税法69条に規定があります。
所得税法69条1項
総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除する。
つまり、所得税法69条1項に記載されている、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得にマイナスが出た場合は、他の所得、例えば給与所得から差し引いてもいいよという制度です。この制度のことを「損益通算」といいます。たとえば会社員として働き、副業で不動産投資をしているとして、その副業で赤字が出た場合、本業の会社員の利益から補填できるという制度です。
しかし、ここで注意していただきたいのは、株などの金融商品で損をしても、給与との損益通算できないこと認識しておきましょう。
具体的に手取り金額を増やす方法について紹介してきましたが、参考になったでしょうか? 無理して実践するのではなく、該当している項目があれば、まずは試してみましょう。