今回は、法律事務所に所属し、不動産関連の案件に多く携わっている司法書士・木宮瑛子氏が、株式会社を設立している場合に必要となる「定時株主総会」について解説します。※本連載では、不動産投資に関連する様々な契約や手続きについて、専門家がそれぞれのポイントを説明していきます。

株式会社なら「定時株主総会」は必須

不動産投資をしている会社員のなかには、資産管理会社を設立している方も珍しくないでしょう。自身で株式会社を設立した場合、1期目が終了したあと、あるいはそれ以降も、定時株主総会を開く必要があります。しかしまだ1期目が終了していないような方の場合、有名企業の株主総会がホテルなどで開催されている報道を耳にしたことはあるものの、具体的にどのような会なのか、何をしなければいけないのか、わからないというケースもあるでしょう。

 

そこで今回は、株式会社を持っている場合、必ず開催をしなければいけない定時株主総会について解説していきます。

 

定款で定時株主総会についての事項をチェック

定時株主総会は、決算期ごとに一定の時期に開催しなければならないと定められています。つまり、すべての株式会社は、必ず年に1度は株主総会を開催する必要があるのです。

 

定款に、定時株主総会の開催時期に関する定めがあれば、その時期に開催する必要があるので、自身の会社の定款をチェックしてみてください。定款では、いつの時点の株主が定時株主総会に出席できるか(決議することができるという意味)について、基準日を定めていることが多いようです。

 

定時株主総会の手続き

定時株主総会を開催する日を決めて、株主に通知します。これを「株主総会招集手続き」といいます。

 

取締役会がない会社の場合、原則開催日の1週間前まで、または定款で定められた日までに、株主を招集します。呼ぶべき株主は、定款で確かめた基準日の株主、又は現在の株主が該当します。

 

招集手続きの具体的な方法は、取締役会がない会社の場合、原則適宜の方法で招集して問題ありません。適宜の方法とは、招集通知を郵送する方法でなくても、口頭、電話、FAX、メールで構わないという意味です。

 

定時株主総会の決議事項

定時株主総会では、大きく以下3つの決議事項があります。

 

(1)年度決算の報告・決議

取締役は、終了した年度内の会社の状況についての重要な事柄を株主に報告します。そして、終了した年度についての貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表など、いわゆる決算書の承認を求めます。

 

(2)剰余金の配当の内容

投資をされている方は、株の配当金という言葉をご存知である方も多いでしょう。株主に対して、決算期の期末配当が出せる場合には、

 

● 配当する財産は現金か現金以外なのか

●その帳簿価額の総額

●1株あたりの配当金額

●効力発生日(いつ配当をするか)

 

を決議します。

 

(3)任期満了役員の改選

役員の任期は、選任後何年以内に終了、その事業年度のうちの最終のものに関する定時株主総会の終わりの時間で任期満了となります。役員の任期は、定款に定められているので、自身の会社の定款をチェックしてみてください。2年か10年と定めている場合が多いようです。

 

なお、今回がその任期満了の年度に該当する場合には、その役員の改選を行ないます。

 

●現職の方を引き続き再選するか?

●現職の方が任期満了退任するだけなのか?

●新しい方に交代するか?

 

を決める必要があります。任期満了役員がいる場合は、2週間以内に登記変更する必要があるので、登記変更手続きも忘れずに行ってください。毎年1回は、年度決算の報告・決議をするのが定時株主総会だと理解しておけば結構です。

 

定時株主総会の議事録

株主総会は、書面または電磁的記録で議事録を作成しなければならないと義務づけられているので、必ず作成しましょう。記事録の項目は、以下のとおりです。自身の会社の実情に合わせて作成してみてください。

 

●開催日時・場所

●議事の経過の要領及びその結果

●重大な事柄の意見又は発言の内容の概要

●出席した役員氏名

●議長氏名

●議事録作成者氏名

 

法務局のWEBページからテンプレートをダウンロードできるので、活用するといいでしょう。

 

定時株主総会の開催が遅れた場合

まずは、遅れずに開催するようにしてください。なお、万が一遅れてしまっている場合でも、決算の税務申告が遅れずにできており、一人会社の場合であれば、大問題となることはないので、速やかに開催し、次の年度末からは忘れずに開催しましょう。

 

しかし任期満了の役員がいる場合は、ただちに開催してください。なぜなら、選任懈怠・登記懈怠ということで代表取締役に過料の制裁の可能性があるからです。

 

「一人会社」でも株主総会はすべきか?

「株主は自分一人で、取締役も自分一人なので、株主総会を開催するといっても実際どうすればいいのか分からない」という質問をよく聞きます。そこで、一人会社の場合に適用される「株主総会の決議の省略」という手続きを紹介します。

 

まずは、株主として「定時株主総会の目的事項について同意する」という書類を作ります。この同意書には、個人の認印で押印することで構いません。

 

次に、代表取締役として、株主全員の書面による同意があったので株主総会の決議があったものとみなされたとする「定時株主総会議事録」を作ります。この株主総会議事録には会社の印鑑を捺印します。

 

作成したふたつの書類は、10年間、会社で保管してください。

 

 まとめ 

定時株主総会という言葉は、聞いたことはあるものの、あまり馴染みがないことで、何をすればいいのかが分からない方も少なくなかったでしょう。定時株主総会は、義務付けされていることから、年に一度会社の経営を見直す機会ということで、必ず行なうようにしてください。

 

なにか疑問があったら、近くの司法書士に気軽に相談してみるといいでしょう。

本連載は、株式会社エワルエージェントが運営するウェブサイト「Estate Luv(エステートラブ)」の記事を転載・再編集したものです。今回の転載記事はこちら

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