※本連載は、株式会社ソリューション代表取締役の長友威一郎氏の著書、『“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術』(合同フォレスト)から「社員が自然に育つ仕組みづくり」の章をメインに抜粋し、事業を拡大するために、経営者として組織をどのようにマネージメントすべきかを見ていく。

一人ひとりの社員の強みが何か、答えられますか?

経営者にまずお考えいただきたいのは、「社員一人ひとりの強みを具体的に答えられますか?」ということです。ここには「仕事ができる・できない」だけでなく、どのような性格で、社内ではどのような役割を持っているか、なども含まれます。

 

私たちが企業の組織コンサルティングをさせていただく際、経営者(もしくは幹部社員)と社員とのコミュニケーションが希薄な場合は、当社で用意させていただく「社員理解シート」を使った宿題を出させていただいています。1人の社員につき10~20項目ほど埋めていく欄があるのですが、最初はだいたいの経営者の方が埋められません。

 

たとえば、「社員のフルネームを書いてください」とあっても、正式な姓名を漢字で書けない方が意外と多いのです。宿題を出しても20項目中10項目しか埋まらなかった場合は、「1カ月後に同じことをするので、3人の部下の方のこのシートが全部埋まるような関わり合いをしておいてください」と、再度宿題として出します。その際、部下とコミュニケーションを取る中で答えを引き出し、埋めてもらうことがポイントです。

 

この「社員理解シート」は、項目を埋めることが目的なのではなく、そこに至る過程で社員の方とコミュニケーションを取り、話を広げてもらうことが目的なので、そのときに「必死で埋めました」という方に対しては、「1カ月後までに、今回書いていただいたことをもとに、ご自分と部下の方、もしくは部下同士の共通点を10個探してきてください」とさらに宿題を出します。

 

ここまでやっていただくと、「部下と自分の間に意外と共通点があるんだな」と、みなさん気づかれます。「実は同じ趣味だった」「実は娘と誕生月が同じだった」「実はあいつもラーメンやカレーが好きで、好きなラーメン屋やカレー屋が一緒だった」など、仕事だけの関わりでは見えなかった相手の一面が見えてきます。そこに共通点を見出すことで、距離が一気に縮まるのです。

 

「社員理解シート」は部下の方の項目を埋めるだけでなく、ご自身のシートもきちんと埋めて、それを相手の方に見せてもらっています。相手に聞くだけだと、事情聴取のようになってしまうので、自分のシートを埋めて「実は俺はこうなんだ」と見せながらやっていくと、お互いにだんだんと相手のパーソナルな部分が見えてくるのです。

 

そうすると面白いもので、意外な発見がたくさん出てきます。「高校時代に野球やってた? 俺もだよ。ポジションはどこだった? おお、そうか!」などの会話が生まれるだけで、相手との距離が縮まるのを実感していただけるはずです。

 

お互いの心の距離感が縮まると、関係性も大きく変わってくるので、仕事のしやすさも劇的に変わります。さらに「そうした関係性の心地よさを広げるために、次はどうしたらいいですか?」という質問をすると「もっと、こういう話をしていきたい」という想いがたくさん出始めるのです。

社員との距離が一気に縮まる「魔法のシート」

「社員理解シート」の一例として、私自身が部下と実際にやっている取り組みをご紹介したいと思います。私は野球が好きなので、学生時代に野球をやっていたという部下がいた場合、「じゃあ、うちのチームの打順を考えようか」と持ちかけることがあります。

 

野球の打順は1~9番までありますが、1番バッターは塁に出ることや走力が求められ、4番はここ一番の場面で長打を出す力が求められるなど、それぞれの役割が異なります。それと同様に組織内の役割についても一緒に考えていき、

 

「うちの組織で1番バッターは誰だと思う? 俺は□□だと思うけど、○○君はどう思う?」

 

「私は△△君だと思います」

 

「へえ、その理由は?」

 

「あいつはこういうところがあって、ああいうところもあるからです」

 

「なるほど。そういう見方もあるのか。俺はこういう考えで、あいつがこういう発言をするところが1番に見合うなと思って」

 

「ああ、なるほど、そうですね」

 

というように、話も盛り上がります。サッカーが好きな社員なら、サッカーのポジションでもいいですし、共通項は何でもいいのです。その社員が好きなこと、興味のあることでたとえ話をすると、ものすごく盛り上がりますし、相手も内容を深く理解してくれます。

 

こうした関係性が出来上がってくると、業務も頼みやすくなり、「この仕事は誰に任せよう?」と悩む必要がなくなります。また、一人ひとりの性格や強みがわかってくるので、適材適所の強い組織をつくれるようになります。

 

社員の強みを発見することは、会社全体のボトムアップにもつながります。それぞれの役割が明確になり、「この社員には少し上のポジションを与えてみようか」「この新しい取り組みはあいつに任せるのが一番いいな」「もし1人では無理なら、あの社員とペアにしてプロジェクトを組んだらうまくまわるだろう」など、社員全体の配置を経営者が設計することができます。

 

経営者が現場の仕事にかかわるのではなく、このように現場がうまくまわるような役割や環境を設計します。それを社員に伝えたら、あとは「任せて任さず」(関連記事「実践でわかった…松下幸之助の名言「任せて任さず」の真の意味」参照)を実践していくのです。

“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術

“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術

長友 威一郎

合同フォレスト株式会社

中小企業を中心に1000社以上をコンサルティングしてきた著者が明かす、再び成長できる会社をつくるノウハウ、社員も会社も幸せになる秘訣。組織を成長させるために、何をすべきかが見えてくる!

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