※本連載は、株式会社ソリューション代表取締役の長友威一郎氏の著書、『“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術』(合同フォレスト)から「社員が自然に育つ仕組みづくり」の章をメインに抜粋し、事業を拡大するために、経営者として組織をどのようにマネージメントすべきかを見ていく。

社会の面白さ、成長の楽しさを教えれば一気に伸びる

みなさんは「ゆとり社員」「ゆとり世代」について、どのようなイメージをお持ちですか? 多くの方が、あまりよいイメージを持たれていないかもしれません。でも、実は「ゆとり世代」の社員ほど、マネージメントしやすい世代はないのです。

 

「ゆとり世代」というと、一般的には1987年生まれから1995年生まれの社員たちで、ゆとり教育といわれた教育を受けて育ってきました。

 

「ゆとり世代」やその後に続く「さとり世代」の人たちは、「ゆるい」「根性がない」などの印象が強く、世間的には「ゆとり教育は失敗だった」という認識が高いのですが、実はこの世代では、ものすごく学力が上がっていることがわかっています。

 

「円周率が3.14から3になったりしたし、本当に学力が上がっているのか?」という見方が多いのですが、これこそが40代以降の私たち世代の、ものの見方なのです。私たちの世代には「暗記が得意な人間はすごい」「物知りな人間は賢い」という認識が浸透しています。そのため、私たちが一般常識として知っていることを「ゆとり世代」以降の人たちは知らないことが多いので、つい「こいつらはダメだ」という発想になってしまうのです。

 

ところが、暗記というのをほとんどしてこなかった「ゆとり世代」の人たちは、深く物事を考えたり、自分自身を見つめたり、言われたことを確実に実行したりという点において長けています。

 

彼らは、上の世代から見たら、「ストレスに弱い」「すぐに仕事をやめてしまう」「仕事よりプライベート重視」「自信満々だけど実践に弱い」というイメージが強いのですが、よく考えてみてください。こういう言葉は、40代以降の私たちが新人のときに言われていた言葉でもあるのです。

 

「ゆとり世代」というのは、今ではもう死語となっていますが、昔の言葉でいう「新人類」と同じニュアンスです。「ゆとり世代」が生まれてきた時代は、バブル崩壊後で社会全体が落ち込んでいる時代でもありました。メディアがこぞって「不景気だ」と言い立てるのを聞いたりしながら育ってきています。阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件など、社会的な出来事があったのも1995年でしたから、外部から入ってくる情報は、圧倒的にマイナスなものが多かったわけです。

 

そうした背景を考慮しながら、会社としてはマニュアルなど整えるべきものは整えて「社会は面白い」「成長は楽しい」など、彼らにちょっとした安心感や成長実感など、未来に対して期待を持たせてあげると、ものすごく伸びていきます。社会の面白さ、成長の楽しさなどを知らずにきているだけなので、そういうことを教えてあげたら、一気に開眼していきます。

 

実際には、彼らのパフォーマンス力はとても高く、スピードも速いのです。とくにパソコンや携帯電話などを使った処理速度は、非常にスピーディーです。現在の仕事の業務効率化、IT化で生産性を上げるとなれば、彼らの経験がものすごく活きてくるはずです。こちらから質問すれば、「もっとこうして、こうすれば速いですよ」「こういうアプリを使えば効率的ですよ」という答えがすぐに返ってきます。「え、そんなアプリがあるの?」と驚く私に、涼しい顔で「いつもこれ、使ってやっていますよ」という社員が当社にもたくさんいます。

 

5年後、10年後を考えたら、そういう社員たちが活躍している組織のほうが、絶対に強くなっているはずです。「彼らの能力をきちんと引き出せる企業ですか?」ということも、これからは同時に問われてきます。彼らの力を上手に伸ばせる会社が伸びていき、旧態依然とした会社は衰退の道をたどることになります。今のうちからそこに気づいているかどうかも、経営者のビジネスセンスにかかっています。

 

それと同時に、会社として大切にすべき風土や守ってきた良き習慣は、1つずつ丁寧に教えてあげなくてはいけません。彼らがそれを受け入れられるような形にして、伝え続けてあげることが非常に大切になってきます。

「『わかりません』は禁止な!」

さらに「ゆとり世代」の後には「さとり世代」が続きます。2016年度、17年度入社の新卒社員たちから、「さとり世代」に入っています。「『さとり世代』は『ゆとり世代』以上にやる気も気力もない」という声が増えています。

 

彼らは、そもそも「こうなりたい」「これがほしい」「こんなことをしたい」という欲求があまりありません。でも、彼らが育ってきた社会を考えてみれば、そうなって当たり前かもしれません。

 

何か買いたいと思えば、手ごろな価格の量販店に行き、それなりにお洒落な服を安く買えますし、インターネットで探せば、なんとなくいい感じのものが見つかり、クリック1つで配送してもらえる。たくさんの物や情報が氾濫しすぎていて、なんとなくほしいと思ったもの、なんとなくいいもの、なんとなくおいしいもの・・・ばかりを選んでいるうちに、「どうしてもこれをしたい!」「どうしてもこれを食べたい!」「どうしてもこういうデートをしたい!」などの想いが、実に希薄になっているように感じます。

 

では、これからの経営者は、「ゆとり世代」「さとり世代」の社員たちと、どのようにコミュニケーションを図っていけばよいのでしょうか。

 

まず1つは、成功体験を積極的につくるサポートをしていくこと。彼らの多くは自信がないので、石橋を叩きまくってから渡る社員が多いのです。ただ、それだとうまくいくものもうまくいきません。そもそも、うまくいくかどうかなんて、やる前には誰にもわからないのですから。

 

そこで経営者(もしくは幹部やリーダー)が、「答えはこうだ」と、まずは答えを与えます。すると不思議なもので、たとえそれが100%確実な答えではないとしても、自信を持って彼らはやり出すのです。成功率50%だとしたら、「大丈夫、100%うまくいくから」とやらせてみます。それでうまくいくときもあれば、失敗することもある。失敗した場合は、「ダメだった。俺のミスだ」と言います。本人は自分のせいにならずに安心するのです。もちろん、うまくいけばその社員の手柄にします。

 

最初はそのようにして、自信を持たせていきます。「まずはこれをこうやってください」と伝えて、成功体験を積ませる。そうすれば、みんな真面目ですし、失敗したくないので、きちんとやってくれます。それを繰り返し行うことで、自信をつけさせていくのです。ここで自信がつけば、もともと頭の良い人たちなので、そこからは自分で考えたり、工夫したりして取り組めるようになっていきます。

 

人を育てるうえでの要諦は「褒めて伸ばして自信をつける」ところにあります。これはいつの時代も変わらない部分ではありますが、とくに「ゆとり世代」「さとり世代」の社員との関わり方においては、こちらがシフトチェンジしていかないと、うまくコミュニケーションを取ることができません。

 

仕事のプロセスを見せながら「まずはここからここまでできるようになってほしい。半年以内には、さらに先のここまではいけるようになってほしい」と伝え、そのうえで毎月のゴール設定をきちんと決めてともに確認し、小さな成功体験をたくさん積み上げることが重要なのです。

 

この世代の社員たちと話をしていると、「わかりません」という言葉がよく出てきます。自社の社員と話していて気づいたのですが、これは本当にわからないという意味ではなく、「言いたくありません」と同義語でもあります。自分が言いたくないことを聞かれると、無意識のうちにわからないふりをするのです。そのため、若い社員たちと話すときには「『わかりません』は禁止な!」と言って話を進めていくと、自分の頭で考えるようになります。

“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術

“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術

長友 威一郎

合同フォレスト株式会社

中小企業を中心に1000社以上をコンサルティングしてきた著者が明かす、再び成長できる会社をつくるノウハウ、社員も会社も幸せになる秘訣。組織を成長させるために、何をすべきかが見えてくる!

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