※本連載は、株式会社ソリューション代表取締役の長友威一郎氏の著書、『“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術』(合同フォレスト)から「社員が自然に育つ仕組みづくり」の章をメインに抜粋し、事業を拡大するために、経営者として組織をどのようにマネージメントすべきかを見ていく。

能力のある社員には「その先の仕事」を見せるべき

仕事というのは流れているもので、断片的なものではありません。たとえば、組織コンサルティングの仕事は、お客様にヒアリングを行ったら、そこで得た情報を活用し、お客様のご意向に沿った内容で提案書を作成します。それを持って先方へうかがって説明し、契約となれば、その先のスケジュールを決めて…というような流れがあります。

 

社員には、こうした全体的な仕事の流れを見せたうえで、「あなたには、この部分の仕事をお願いする」と頼むと、意識が高い人間、成長する意欲が高い人間というのは、自分が担当する仕事のみならず、その次の仕事までやってみようとします。

 

たとえば、仕事の流れが1~10段階あったとして、「あなたには1~3の仕事をお願いします。次の4~6はAさんが担当し、7~9はBさんが担当して、10でお客様に提案書を持っていく」と説明します。

 

本当に3までしかやらない人間に比べたら、「できそうだったので、4までやっておきました」という社員のほうが、成長意欲は高いのです。しかし、3までの仕事しか説明していないと、成長意欲のある人間でも4の仕事に手をつけることができません。

 

つまり1~3の仕事を任せる場合でも、その次の4~6の仕事を見せれば、「ここまでできました」と、次の段階までやってくれる可能性があります。たとえ至らなくても、自発的にそのようにやってくれたら、経営者としては嬉しい限りです。

 

私の場合は、「そこまでできたんだ。4~6はこういう風にやったら、もっとうまくいってたよ。まだまだ、甘い!」などと挑発的に指摘することがあるのですが、そうすると言われた本人は「くそっ!」と悔しい思いになる。それが次の仕事へのバネになり、別の機会に「もう少し任せる範囲を広げてみようかな」と思って任せると、今度はちゃんとできているのです。

 

「今度はしっかりできたな」と言うと、たいていの社員が「ほらみろ」という顔をしてきます。こうしたやり取りから、経営者もその社員の成長をみられますし、本人も成長を実感できるというのが、とても大切だと思っています。

 

社員の成長を促すには、目の前の仕事だけでなく、その先の仕事も見せてあげなければいけませんし、「こいつは無理だ。できない。ここまでだ」と、こちらがブレーキを踏んでいるがために、その社員の可能性を止めている可能性も大いにあるわけです。ぜひ、仕事の流れと、今やっている仕事の次の仕事についても、社員に示してください。まずは任せた仕事をきちんと仕上げることが一番ですが、それ以上に能力のある社員であれば、先の仕事を見せるだけで、成長しようと伸びてくれるはずです。

社員が自分で「小さなP-D-C-A」をまわすようになる

その成長を確かなものにしていくために、経営者(もしくは幹部やリーダー)がやるべきことは、仕事で成功した社員の「なぜ、うまくいったのか?」を引き出すことです。「この間、あの先輩がすごかったんですよ」と言う社員がいたら、「何がすごかったの?」「どういうことをして、すごいと感じたの?」などを聞いてみるのです。

 

実はこれがその社員にとっての「振り返り」となり、1つの体験をさらに深め、自分自身の理解につながっていきます。小さなP-D-C-Aを自分の中でまわすことによって自分の立ち位置が明確になり、そこで自分が理解したこと、わからなかったことなどが解消されていきます。

 

私たちコンサルタントの仕事において、営業に行く前の事前準備は非常に大切なのですが、それ以上に「帰ってきたときの『振り返り』を大切にしろ」と言っています。そこで「何がよくて、何がダメだったか。何がお客様の心に響いて、何が響かなかったか。では次に、どんなアクションが必要か」を考えることは、自分が準備してきたことの答え合わせにもなります。

 

この「振り返り」をするのとしないのとでは、社員の成長スピードが大きく異なってきます。それにもかかわらず、「振り返り」を行っていない企業が多いのは残念なことです。「振り返り」をすると、その営業においての「自分の良かった点と悪かった点」「準備してよかった点、準備したけれど意味がなかった点」などが見えてきます。そこから「なるほど、じゃあ次はどうする?」となれば、その先のアクションが思い描けますし、実際の行動にもつながりやすくなります。

 

「振り返り」は非常に重要です。ぜひ、多くの企業に、社員の力を引き出すための「振り返り」の時間を取っていただけたらと思っています。

 

最初、「振り返り」を提案すると、社員の多くは面倒くさがります。当社の場合も「えー…(そんなことまでやるんですか⁉)」という社員がほとんどでした。ただ、実際に「振り返り」をやり始めると、自分で自分の成長を実感できるようになるので、「えー」と言っていた社員でも、「今ちょっと、『振り返り』の時間をもらってもいいですか?」と言うようになっています。ぜひ「振り返り」が社内の習慣として根づくよう、社員を育ててください。これが習慣化すれば、社員の力の底上げは、自然とできるようになっていきます。

“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術

“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術

長友 威一郎

合同フォレスト株式会社

中小企業を中心に1000社以上をコンサルティングしてきた著者が明かす、再び成長できる会社をつくるノウハウ、社員も会社も幸せになる秘訣。組織を成長させるために、何をすべきかが見えてくる!

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