※本連載は、株式会社ソリューション代表取締役の長友威一郎氏の著書、『“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術』(合同フォレスト)から「社員が自然に育つ仕組みづくり」の章をメインに抜粋し、事業を拡大するために、経営者として組織をどのようにマネージメントすべきかを見ていく。

会社における「結果」と「成果」の違い

社員がイキイキと働くには、社内における称賛の場というのが非常に重要だと考えています。そこで当社では、毎月1回、全社員が参加して行う会議の中で、「SOLISM(ソリズム)」を行っています。これは社内投票で営業部門、支援部門、マーケティング部門の3部門からそれぞれ選ばれた社員が、「お客様とのエピソード」「お客様が変わった様子」などを語る成果発表の場です。

 

ちなみに名前は「Solution×Ism(ソリューション×イズム)」に由来します。株式会社ソリューションが大切にしている「イズム・らしさ」を伝え続けたいという想いから、このような造語が生まれました。

 

なぜ、このような場を設けたかというと「会社の本来の経営目的に基づいた成果を出している社員を全社員で称えたい」という想いからです。

 

会社には「結果」と「成果」があります。「結果」というのは、売上をどれだけ達成した、前月比何%アップしたという「数字」です。一方の「成果」は顧客満足だったり、自分たちの会社の経営目的や経営理念に基づいた働きだったり、なんのためにこの事業をしているかにクローズアップしたりした部分です。

 

たとえば、「お客様に喜んでいただくため」「お客様に最高のサービスを提供するため」というのが本来の経営目的であり、そこを目指した仕事をしたことで、地域の人たちに喜んでもらえたり、お客様が感動してくださったり、しあわせを感じてくれたりした。その結果、売上が1億円を突破した、などというように、「成果」を出している企業は自然と高い「結果」も出しています。

 

そう考えるならば、本来の経営目的に基づいた「成果」を出している人が、本当は会社の中でも一番輝いていなくてはいけません。この部分をクローズアップして設けた表彰制度が、「ソリズム」なのです。

 

社員たちの「仕事のやりがい」「働きがい」「入社動機」というのは、数字ではなく、ここから生まれています。その原点に基づいた仕事で表彰されることで、ほかの社員たちもそこに注力したり、集中したりできる環境をつくることができます。

 

そこで、当社では月に1回、AKB48の総選挙のような形で、「この1カ月で、自分が一番○○さんの仕事に興味を持った。お客様とどういう関わりをしているのか話を聞きたい」と思った人間に、社員みんなで投票するのです。

 

選ばれた人間は、月に1度、大阪・東京・福岡の社員が全員集まる会議の場で、約20分間、自分とお客様の関わりなどを話します。「会社の理念や目的」「私たちがお客様と接する際にこだわっていること」は何なのか。それを発表するというルールだけ設け、あとは自由に「自分はどの項目にこだわったのか」「どのようにやりとおしたのか」を語ってもらいます。

 

数字ではなく、「仕事のやりがい」という部分を評価しているので、選ばれた人間も嬉しいですし、自分がお客様のことを発表できる喜びも得ることができます。それを聞いている人間にとっては、顧客情報の共有にもなり、全国の仲間同士で「お客様に対してそんな仕事をしていたんだ」「そういう細かい関わり方をしていたのか。だからあのお客様にそういう変化が起きたのか」というように、たくさんのヒントに満ちた勉強の場になるのです。

 

誰が発表するかは当日までわからないのですが、「今月は誰が発表するんだろう?」というドキドキ感もみんなで楽しんでいます。先日も新入社員が1人、お客様と契約してきたのですが、「今月のソリズム、○○君かもしれないな」「俺、○○君に投票するから、これまでのプロセスとかみんなの前で発表しなよ」などのコミュニケーションが自然と生まれ、社内の共通言語として根づいているのを感じました。

 

毎月の「ソリズム」にはクライアントのお客様も参加することができます。社員たちの話を聞いていただくことで、「そんな想いで私たちと接してくれているのか」「自分たちもそういう関わり方をしてもらえるのか」などの期待や安心感をお持ちいただくことが多いようです。

入社3年目から会社に対するロイヤリティは下がる⁉

新卒採用というのは、会社の未来への投資です。そこには経営者や幹部が関わってきますが、仕事の現場で一番関わるのは、一緒に働く社員たちです。そこで、私たちは社員が中心となって、新卒採用に関わることをご提案しています。

 

大体3年目あたりから辞める社員が増え始めます。1年目で辞める理由としては、会社とのミスマッチなどがありますが、3~4年目で辞める場合は「未来が不安」で辞めていくのです。「このままこの仕事をやっていても、給料も上がらない」と思ったり、隣の芝生が青く見えたりして、会社に対するロイヤリティが下がっている状態に陥りやすいのです。

 

こうしたことを防ぐために、私たちは「新卒3~4年目の社員を中心にプロジェクト型で新卒採用活動をしましょう」「プロジェクトを組んで、未来の自分の部下を探しに行きましょう」と提案しています。現場で会社の未来を創るのは、新卒社員、その新卒たちを育成していく3~4年目の社員たちだと考えているからです。

 

実は、この裏目的は、新人と3~4年目の社員双方への「社内育成」です。3~4年目の社員たちというのは、仕事の内容やお客様とのやり取りを聞いていくと、それぞれに体験を積んで活躍しています。

 

その一方で、「この会社に入りたい!」と思った原点、入社動機として思っていたことなどが記憶の中で薄れがちです。そこで、「新しく入る人たちにどういうことを伝えたら、御社の魅力が伝わると思いますか?」などと質問し、自分が入社した当初の原点を思い出してもらいます。そこから、「実は僕、こういう気持ちで入社してきて」などと、それぞれに語ってもらいます。すると、3~4年目の社員たちの間に「共通点」が生まれたり、自分たちがこの会社に「貢献できることは何か」を考え始めたりします。

 

さらに「そういう気持ちで今の学生さんたちに御社のことを伝えたら、きっと心に響きますよね」という話をして、ディスカッションしてもらいます。その結果、「このことは伝えたほうがいい」「○○さんが言っていた話、すごくよかったよね」など、新卒採用の活動に向けた彼らの意思統一を図ることができます。

 

そこまでできたら、今度は「どんな人が入ってきたらいいですか?」と聞いていきます。求める人物像を自分たちで決めることによって、「どんな人に新卒で入ってもらいたいか」が明確になります。その中で「3~4年目でこういう人間になってくれれば一番いい」ということもイメージしてもらうのですが、そこでは「じゃあ、自分は今そのようになれているのか」と、イメージする人物像と現在の自分自身を比較してもらいます。すると、「ここはできているけれど、ここはまだ足りない」など、自分にとって本当に足りない部分がみえるようになっていきます。

 

こうしたやり取りのあと、「学生の前であなたの仕事と、これから求めたい人物を語ってください」と10分間のプレゼンをしてもらいます。これを繰り返してもらっていると、学生の前で行うプレゼンが、自分に対するプレゼンに変わっていきます。そのうちに、だんだんと会社に対する想いが強くなり、「会社は未来に対してこう思っているから、こういう人材を求めているのです」という話は、自分で自分のことを語っているのと同じことになっていくのです。

若手社員の「やる気スイッチ」が入る瞬間とは

会社説明会の最後に学生たちからアンケートをとるのですが、そこに「一番輝いていた社員は誰ですか?」という質問も交えています。そうすることで、「学生の△△さんは、今日、説明してくれた○○さんに憧れて入社したいとか書いていますよ」というフィードバックを社員たちにできるからです。

 

そこから、「△△さんにうちの会社の内定を出すには、○○さんの力が必要だから、△△さんのメンターになってあげてね」などと伝えます。実際に、△△さんの来社時には、「○○さん、△△さんが今日は面接に来るから、10分間対応して」とお願いします。そういうことをプロジェクトとして仕かけていくと、入社3~4年目の社員たちの中で下がりかけていた会社に対するロイヤリティが自然と上がっていきます。さらに、自発的に育成やマネージメントにも興味を持ち始めます。

 

人間には本能的によいところを見せたいという心理があるので、△△さんが「○○さんと一緒に働きたいです!」なんて言ってくれたら、もうパチッとスイッチが入り、「あいつ、かわいいな。あいつを育てていきたい」と思うようになっていくのです。

 

「△△さんが○○さんの部下になるのなら、○○さんはもう少し、この部分をがんばらないといけないですよね」

 

「今、後輩にちゃんと教えられるようになっておかないと、部下には教えられませんよね」「△△さんが『○○さんの部下になりたい!』と熱く言っていますね。そのためにも、絶対に成長しましょうよ」

 

このような会話をしていくうちに、間違いなく本人にもやる気スイッチが入ります。

 

ただ、この新卒採用方法は、採用人数が5~6名の企業までしか通用しないのです。5~6名の新卒採用というと、業種業態にもよりますが、だいたい30~60名規模の企業でしょう。そうした企業で行う場合には、非常にマッチングしているという手ごたえを感じています。これが10名以上の新卒を採用する企業では、新卒社員を現場のプロジェクトにしっかり巻き込むことは難しいため、この方式が適用できないこともあります。

 

新卒採用が「未来投資」であるというのは、もちろん「お金」の投資という意味もありますが、「人材育成」における投資、先輩が後輩に教えるという「社内風土」を築くための投資の意味があります。売上、社員数ともある程度の規模の会社となり、「第二創業期」を目指す企業の場合、新卒採用をすることで、会社組織を固め、プロジェクトという流れの中で、社員たちの力を伸ばしていくことができます。

“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術

“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術

長友 威一郎

合同フォレスト株式会社

中小企業を中心に1000社以上をコンサルティングしてきた著者が明かす、再び成長できる会社をつくるノウハウ、社員も会社も幸せになる秘訣。組織を成長させるために、何をすべきかが見えてくる!

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