採用と育成を通じて企業を強くするコンサルティングを通じ、多くの企業で社員インタビューを行っている長友威一郎氏。経営者向けに書かれた氏の著作『がんばる経営者が会社をつぶす ~最強の組織をつくる経営術』(合同フォレスト)では、「社員から一番よく出る不満の声」について言及している。それは「うちの上司は言ったことを守らない」とのことだ。長友氏は経営者にどのようなアドバイスをおくるのか? 書籍より該当部分を抜粋して紹介する。

社員が「自ら考え行動する」チャンスを与える

会社というのは、「ルールがあります。これをやりなさい」と、仕事のルールややり方を「与える」という考え方もあると思います。ただ、社員が自発的に動く環境をつくる場合の「与える」は、「社員自ら動くチャンス」を与えることが重要です。

 

私の口ぐせは「何をやりたいの?」「どうしたいの?」です。もちろん、本人に聞くだけではなく、「私はこうしたい。○○さんはどうしたいの?」と、私自身の意見も伝えています。「長友さんがそうしたいなら、そのようにやります」とならないために、必ず「○○さんはどうしたい?」と聞くようにしています。

 

結局、納得しないと人は動きません。「自分はどうしていきたいのか?」と考える環境をできるだけ社員に与えることで、社員が自ら考え行動するチャンスを与えるようにしているのです。

 

「与える」のあとは、本人に「決めさせる」ことが大切です。「じゃあ、何ができるの?」「何をしたいの?」と問いを投げかけ、「こういうことをやりたいです」という意見が出たら、「じゃあ、そうするためにはどうしたらいい?」ということで、次の行動を社員に決めさせる。自分で決めなければ、責任を持たないですし、自分で決めるからこそ「本当にやりたい!」という想いが生まれてくるからです。

 

「本当にやりたい!」となれば、もう一押し。その行動を取るための第一歩まで、きちんと示してあげることが大切なのです。

 

コンサルティングの現場でよく見かけるのは、やることが決まっても「よし、がんばれ!」で終わってしまう企業が多いのですが、それだとなかなか社員も動きません。

 

自分で行動を決めさせたら、「ファーストステップをこの日に始めよう」と、行動の内容と日付も必ず決めるのです。そこで決めたことは、経営者(もしくは幹部やリーダー)と社員との約束になります。それを果たしているかどうか見届けることで、自然と「任せて任さず」の形になっていきます。

 

たとえば、社員に読んでほしい本があるとしましょう。その場合、「3日後に絶対に第1章を読んでおく」とお互いに決めるのです。「OK。3日以内に第1章を読むんだな。読んだら、感想を聞かせてね」という具合に。さらに、その約束の前日くらいに「読んだ?」と連絡を入れて、行動を促していきます。マネージメントする側がどれだけ部下との約束をつくり、それを「守れるようにサポートするか」ということも非常に大切なことなのです。

 

実は、企業にインタビューをする際、社員から一番よく出る不満の声というのが「うちの上司は言ったことを守らない」なのです。「僕たちには『約束は守れ』と言って、指示や指摘をしてくるのですが、その上司が一番、約束を守っていないんですよ」と。上司側は自分が言ったことを忘れてしまったりして、約束を果たしていない。それを部下たちは見ているので、信頼関係が欠如する大きな理由にもなっています。

 

マネージメントというのは、社員との約束を絶対に実現すること。その上で社員に次に何をするかを決めさせて、そのための行動内容と日付を約束し、確実にそれを実行できるように促していくことが必要です。

経営者は「社員のアドリブ」を引き出す監督たれ

基本的に、人には承認欲求があり、褒められれば誰もがうれしいわけです。そこで、社員に対しても、経営者が彼らに「期待していること」を伝え、気分よく仕事ができるようになれば、その社員の力はさらに引き出されていくはずです。

 

そのために、図に乗ったら鼻っ柱をへし折る必要がありますが、基本的には、「期待」を伝えて、気分を上げてあげるくらいの気持ちでいるのがちょうどいいのです。まだ少し力が足りないとしても、「あなたなら、できる!」「ここがあなたの強みだよ。俺はここまで期待しているし、ここまでできたら、ほんとすごいよな」など、経営者からの期待やその社員に対する想いを伝え続けていくことが非常に重要です。

 

ただし、注意したいのは、とうてい無理なことを「あなたはできる、できる」と言い続けるのは洗脳になりますし、相手にとってはプレッシャーでしかなくなってしまいます。そこまでではなく、背伸びしたら届くくらいのことを設定することが大事です。

 

気をつけたいのがその伝え方です。相手の目を見て真剣に「あなたはできる」と伝えるより、少しリラックスした雰囲気で「これやったら絶対にいけるよな」「これをやったらお客様、喜んでくださるよな」など、一緒になってちょっと先を思い描けるようなイメージを持たせてあげることが、大切なポイントです。

 

私自身、実際に仕事は舞台だと思っています。監督や脚本家などを務める社長や幹部がいて、お客様に対して演じてみせる社員がいる。彼らに台本通りの演技をやらせるか、ある程度のアドリブをつけて、各自の個性や強みが生きる演技をさせていくか。そのどちらにするかは、経営者次第です。

 

それでも、完璧な台本通りの舞台よりも、その一人ひとりのちょっとした個性が垣間見えるアドリブありのほうがよいのではないでしょうか。予想外の動きをすることに、お客様も驚きや喜びを感じられるのではないのでしょうか。仕事をそういう楽しい舞台にしていくためには、経営者がどれだけ社員に期待を寄せているかを伝えること、また、彼らの行動に対して「それでOKだよ」という想いを伝え続けていくことが必要だと考えています。

 

 

長友 威一郎

株式会社ソリューション 代表取締役

 

“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術

“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術

長友 威一郎

合同フォレスト株式会社

中小企業を中心に1000社以上をコンサルティングしてきた著者が明かす、再び成長できる会社をつくるノウハウ、社員も会社も幸せになる秘訣。組織を成長させるために、何をすべきかが見えてくる!

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