今回は、企業内の円滑なコミュニケーションを促進するための環境づくりについて取り上げる。※本連載は、株式会社ソリューション代表取締役の長友威一郎氏の著書、『“がんばる経営者”が会社をつぶす~最強の組織をつくる経営術』(合同フォレスト)から「社員が自然に育つ仕組みづくり」の章をメインに抜粋し、事業を拡大するために、経営者として組織をどのようにマネージメントすべきかを見ていく。

社内で開催される「食事会」で見えてくる社員の本音

社員同士、社員と幹部、経営者と幹部が自由に意見を言い合えるような環境づくりの一環として、ソリューションでは「社内勉強会、食事会、誕生日会」を非常に大切にしています。

 

「社内勉強会」では、社員一人ひとりの現在の立ち位置や状態が一目でわかります。もちろん、私自身が経営者としてみんなに必要なことを教えたい、知識を学んでほしいという想いも半分あるのですが、もう半分は、みんなの状態を社長である私が再確認する場だと考えています。

 

さらに、社内勉強会に社員が集まることで、自分自身の状況を再確認してほしいという願いもあるのです。ただ、社内勉強会に参加しても、「新しいことを学べてよかった」と思うだけの人と、「自分にはここが足りなかった。だからあのときお客様とうまくいかなかったんだな。じゃあ、次はこうしよう」と考えられる人にわかれます。

 

学んだことを活かすことに気づく人と気づかない人がいます。自分の状態を把握して掘り下げ、自ら改善策を考えることができるか。私はそうした視点から社内勉強会の様子を観察しています。

 

社内勉強会の後の「食事会」では、勉強会で2つ3つ伝えた事柄について、「どうだった?」と聞くようにしています。するとここでも、わかったつもりになっている人間と、自分の行動と重ねあわせて理解し、次の行動につなげている人間とにわかれます。

 

たとえば、「すごく勉強になりました」「お客様に試してみたいと思います」という人は、わかったつもりになっている場合が多いのです。そういう人たちはまだ、映画を観ている感覚だといえるでしょう。初めての知識に触れて、「なるほど、すごい。それやってみよう!」と思っても、実際にやり方がわかっていない。そこで、こういう社員たちには、少し丁寧なフォローを入れていったほうがいいということがわかります。

 

一方、「あの件に関しては、僕の中ではすごくつらかったです。前に一度失敗しているので、次はこの点を改善して臨みたいです」というような反応をする社員は、勉強会での話を本当の意味で理解し、自分の行動につなげていくことができます。こうした社員は、こちらも安心して見守ることができます。

 

また、「先月の勉強会ではすごく話が入っていたのに、今月はなんとなく反応がない。何か悩みがあるのだろうか」というような推測もできます。

 

食事会では、社員の食事中のマナーを確認することもできます。グラスに飲み物が少なくなってきたら注文したり、相手の食事を取り分けたり、使った皿を取り替えてもらったりなどの気遣いができるのは、周りがきちんと見えているという証拠です。

 

一方、同僚とずっとしゃべっている社員がいた場合、もしかしたら何か心の中に溜まっているものがあって、それをみんなに聞いてもらいたいのかもしれません。ただ、話に夢中になって、周囲への気遣いにまで意識がいっていない場合は、「最低限のマナー」を教えます。お客様との食事の機会も多いので、会食の場で恥ずかしい思いをさせたくないからです。

 

食事会では何気ない社員たちの言動をよく見聞きするようにしています。経営者にとって、言葉だけでなく、行動や態度でその社員の状態を汲み取る力が非常に重要だと考えているからです。

「お酒を飲む」よりもイベントの力を借りる

今の20代の若い社員たちは、食事会でお酒を飲んでも、そうそう本音など話しませんが、行動や態度に表れる気持ちというのは隠しようがないので、そういうところから見極めていかなくてはなりません。

 

ある社長は「社員と酒を飲むとき、私はお酒を飲まないよ」とおっしゃっていました。「今日は前の仕事があったから車なんだよ」と、自分で運転する車でその店に行くなど、何かしらの理由をつけて、ご自身ではお酒を飲まず、社員の話に耳を傾け、行動や態度を見るようにしているのだそうです。

 

「誕生日会」も大切にしているイベントの1つです。これは大阪、東京、福岡ごとに行っているのですが、誕生日の社員がいると、社員全員でメッセージカードやメッセージビデオなどをつくってプレゼントと一緒に渡しています。誕生日になると、こうしたプレゼントをもらえるというのが、本人もわかっています。

 

そのため、「いつもらえるのかな」とドキドキしているんです。サプライズ好きな社員が多いので、あえて本人が朝来た瞬間にお祝いしたり、帰り際まで一切そのそぶりは見せず、本人が「あれ、誕生日なんだけどな…」とちょっとソワソワしながら、「お疲れ様でした」と帰ろうとしたところで「おめでとう!」と渡したりしています。誕生日の社員がいると、なんとなく全員がその人のためのお祝いモードになっていきます。

 

先日の社員旅行では、誕生日のWという社員がいたので、旅先で誕生日会をやりました。旅行中、Wだけを外した社員のLINEグループをつくり、誕生日会をまとめる担当者から「みなさん、今から『Wさん、おめでとう』という動画を20秒くらいで撮ってください。その動画には必ずWさんを入れてください」というミッションが与えられたのです。

 

近くで動画を撮るとバレてしまうので、ちょっと離れたところで、背後にWの姿が映るようにして、それぞれ動画をつくり、それをつなぎ合わせて贈りました。当社の社員はそういうことをするのが大好きなので、そこでまた一体感が生まれたり、社員同士のコミュニケーションが生まれたりしています。みんなで何かをやるというチームワークも強化されるように感じています。

 

また、お祝いのメッセージを書いたり、動画を撮ったり、何かサプライズするときには「今、○○さんはどんなことをやっている?じゃあ、こういうことをメッセージに入れようか」というように、その社員の状況をつかむという意味でも、一役買っているところがあるのです。そうした情報を社員全体で共有できるという機能も、こうした誕生日会にはあると考えています。

 

当社の創業者であり、現在、関連会社である株式会社CONY JAPANの代表取締役社長を務める小西正行は、誕生月が同じ社員を集めて、毎月1回誕生日を祝う食事会を開いています。そこでは、誕生日を迎えた本人の上司からの手紙をプレゼントしています。その場に上司はいないのですが、「いつもがんばってくれてありがとう」という内容の手紙を人事部長が集め、みんなの前で読みあげるそうです。

 

そうしてみんなで「おめでとう!」と祝うため、そこでも一体感が生まれます。さらに、社長である小西が「そうか。がんばっているんだな」と声をかけたりすると、社員たちはやはり嬉しいようです。

 

小西の会社は社員数が大阪と東京とあわせて約250名なので、社員と社長の距離が少し遠くなっていますが、年1回は社長と一緒に食事をし、なおかつ、そういう手紙を読みあげてもらい、「がんばっているね」と声をかけてもらえることが、社員にとってはモチベーションアップにつながっているようです。

 

こうした取り組みについて、お客様に「うちの会社ではこんなことをしていますよ」とお伝えすると、「うちでもやってみるよ」と真似してくださる経営者がたくさんいらっしゃいます。社内勉強会、食事会、誕生日会などを通じて、社員一人ひとりの現状を把握したり、コミュニケーションやチームワークを円滑にしたりしてもらえたら、私たちにとっても、こんなに嬉しいことはありません。

「本音を50%伝える」くらいがちょうどいい理由

社内のコミュニケーションを円滑にすることは、「第二創業期」を迎えるにあたっては、とても重要なことです。ただし、なんでもかんでもあけすけに社長と話せばいいというものではありません。

 

とくに幹部社員が経営者と話す場合には、本音を50%伝えるくらいでいるのがちょうどいいと考えています。

 

この「50%の本音」には、2つの捉え方があります。

 

1つ目は、「社長にやみくもに全部言っても意味がない」という考えから、あえて50%しか言わない場合。ここには、「社長にはタイミングを見計らい、思っていることの50%を伝えるくらいでちょうどいい」という考え方です。

 

2つ目は、「そんな、社長に全部なんて言えません」という気持ちから、50%しか言えない場合。ここには「社長には勇気を振り絞ってなんとか50%の意見を伝えよう」という考えが含まれています。

 

1つ目の考え方は、きちんと組織のことを理解し、社内の組織を円滑にまわすには、今、何が必要かをわかっている人のやり方です。「この部分について言うのは、今はタイミングが悪いから後にしよう。でも、これは今、伝えておけばうまくまわるはずだから、まずはこれから言ってみよう」ということで、的を射た意見が多いため、経営者もそうした意見には耳を傾けます。ここであまりにも意見しすぎると、経営者のほうも「もういい、わかった」と感情的になってしまうので、そこを見越して50%しか言わないというわけです。

 

2つ目の考え方は、「そんなこと社長に言ってもいいんですか。私は言えないです。でも、とりあえずここだけはお願いしたい」ということで、3つ言いたいことがあるけれど、勇気を振り絞って、ようやく1つを言えるというケースです。そういう人はたどたどしいけれど、一生懸命なところがありますから、経営者自身も「何が言いたいんだ」ということで、聞く姿勢ができますし、話を聞いたときには「そんなふうに考えてくれていたのか」と嬉しく思い、なんとかそれを実行に移そうとしてくれます。

 

私たちも経営者をサポートするときは、ありのまま全てを社長に報告するということはしません。タイミングを見ながら、「これは今言うべきこと。これは今、言わなくてもいいこと」という判断をしています。本音を伝えるときにはタイミングを見計らい、50%の本音を伝えるよう心がけるくらいが丁度よいと考えています。

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    長友 威一郎

    合同フォレスト株式会社

    中小企業を中心に1000社以上をコンサルティングしてきた著者が明かす、再び成長できる会社をつくるノウハウ、社員も会社も幸せになる秘訣。組織を成長させるために、何をすべきかが見えてくる!

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