アメリカ不動産投資の魅力というと、「キャッシュフロー」を最大化できる点があげられるでしょう。そのためには、国内不動産投資と同様に、物件の価値を見極める「目利き」が必要となります。そこで重要となるのが、物件を正しく目利きする「アメリカ人の目」を持つことです。本記事では、書籍『日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話』より一部を抜粋し、アメリカ不動産市場の現状を解説します。※アメリカ不動産投資 詳しくはコチラ

アメリカの不動産価格は、17年間で「約2倍」に

◆年平均4%強で上昇しているアメリカの不動産価格

 

着実な人口の増加と、堅調な経済成長を基盤として、アメリカの不動産価格も着実に上昇しています。代表的な不動産価格指標であるS&Pケースシラー全米住宅価格指数を見ると、2000年を100とした全米の住宅価格は2017年には199.7と、ほぼ2倍に上昇しています。

 

あくまで過去の実績ベースですが、17年間で約100%の上昇だと考えると、毎年4%強の利回りで複利運用しているのと同じです。

 

[図表1]S&P ケース・シラー全米住宅価格指数 出所:S&P/Case-Shiller U.S. National Home Price Index 2000年1月の住宅価格を100とした指数
[図表1]S&Pケース・シラー全米住宅価格指数
出所:S&P/Case-Shiller U.S. National Home Price Index 2000年1月の住宅価格を100とした指数。

 

一方、日本の状況を示す例として、住宅地公示地価(全国)の推移を示しているのが下記図表2のグラフです。アメリカとはまったく状況が違うことはすぐ分かります。これを見れば、日本人が、自宅を自分の資産を増やしてくれる投資対象だと考えられないのも、無理はありません。

 

[図表2]日本の公示地価推移(全国、東京圏) 出所)国土交通省 2000年の公示地価を100とした指数。
[図表2]日本の公示地価推移(全国、東京圏)
出所:国土交通省 2000年の公示地価を100とした指数。

 

長期的に見て、アメリカの不動産価格は上昇基調が続いています。ただし、グラフからも分かるように、必ずしも常に右肩上がりで推移しているわけではありません。リーマンショック後から冷え込んだ市況が2012年ごろで底を打ち、2013年ごろから再上昇している様子がわかります。現在では、リーマンショック前の水準を抜いて、さらに価格が上昇しています。

 

現在の水準を見て、アメリカ不動産は「バブル」になっているのではないかと思う人がいるかもしれません。また、2008年にリーマンショックを引き起こす原因となった、住宅ローンに関連したサブプライムローン問題、過剰融資問題がまた起こるのではないかと、心配している人もいるかもしれません。

 

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結論から言うと、現在の不動産市況はバブルではなく、またリーマンショック時のような過剰融資問題の兆候は現れていません。

 

まず、2008年以前にサブプライムローン問題がなぜ起きたのか、簡単に言うと、通常なら住宅ローン融資を受けられないような信用力が低い人たち(これをサブプライム層と言います)にも、融資ができる商品を開発し、どんどん売ったからです。ただし、もともと信用力が低い層ですから、その人たちの収入ではローン返済は無理で、住宅が値上がりすることによって、その値上がり差益も組み込んでローンを返済してもらうような仕組みでした。

 

ところが、当時の住宅市況が頭打ちになったため、ローンを返済できない人が続出したのです。しかも、サブプライムローンは単に融資をしていただけではなく、その融資自体が証券化されて、さまざまな金融商品に組み込まれていたため、全米、全世界を巻き込んだ金融ショックにつながりました(実際はもっと複雑ですが、ごくおおざっぱにまとめています)。

 

また、その背景には、アメリカの住宅ローンが、ほぼすべて「ノンリコースローン」になっているという事情もあります。ノンリコースローンとは、融資物件の担保力以上の担保が必要ないローンです。金融機関はローンに対して、担保となる不動産以外の担保(保証人など)を求めません。万一、ローンが返済不能になった場合は、担保の不動産を手放せば、後はそれ以上の返済を求められることがないのです。融資と担保物件とが常に同等だと考えられている、と言ってもいいかもしれません。

 

ですから、担保物件が値下がりした場合でも、その担保物件を手放せば、それ以上の融資返済を求められることがありません。逆に言えば、ローンの借り手にとっては、値下がりしたら担保物件を手放した方がいいとも言えるのです。

 

ちなみに、日本のように、担保の価値が下がっても、必ず融資全体を返済しなければならず、そのため連帯保証人をつけたり、別担保を用意したりしなければならない仕組みは「リコースローン」と言います。

 

日本では、投資用賃貸物件を買った人が、その物件価値が下がっても残債割れしていてローンが残るから、売るに売れないということがよくあります。それは日本の住宅ローンがリコースローンだからです。融資対象とする物件のみを担保とするノンリコースローンの方が、借り手にとっては合理的な仕組みだと言えます。

不動産市況を読むには「住宅ローン金利の動向」に注目

では、現在のアメリカの住宅ローンはどうなっているかと言うと、基本的には、その人の信用力、収入にあわせた融資しか行われませんし、不動産の担保力の7~8割程度の融資しか組めません。最低は2割ですが、実際には3割程度の頭金を求められることが普通です。それなら、住宅価格が3割程度下がっても、担保評価が融資の残債を下回らないということです。

 

つまり、住宅購入者は頭金を2~3割用意する必要があります。サブプライム層にはそもそもそれが用意できないという事情があります。

 

なお、これは一般的な銀行などから借りるローンの場合です。それとは別に、低所得者向けに連邦住宅局が債務保証をしているFHA(Federal Housing Administration)ローンというものもあります。こちらは、頭金は10%以下で済みますが、その分、保険に加入してけっこう高い(月100ドル以上)保険金を払い続けなければなりません。一度に支払う頭金の多さではなく、毎月支払う保険によってリスクを低減している形です。

 

金融機関の貸し出し債権のうち、どれくらいが優良貸し出し先でどれくらいが不良化しているかは、金融機関のアナリストたちが四半期ごとに公表するレポートなどからわかります。

 

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サブプライムローン問題のような事態が大きく顕在化する前には、徐々にこの不良債権比率が高くなっていくのですが、現在のところ、アメリカの住宅ローンの不良債権比率が上昇している傾向は見られません。これは、サブプライム層への融資が増加していないことを意味しています。希望する額の融資を受けられない人は、持ち家をあきらめて賃貸に住みます。そのこともあって、現在のアメリカでは賃貸物件の需要が高く、全米平均の賃貸住宅空室率は約6%程度です(日本では、全国平均の空室率は約18%、東京に限っても約11%です)。

 

また、売り出し物件があってから、それに買い手が付くまでの成約日数の平均は、ダラスの場合で約36日と、非常に短くなっており、この点からも需給は緩んでいないことが分かります。

 

[図表3]ダラス都市圏・平均売出日数
[図表3]ダラス都市圏・平均売出日数

 

不良債権比率、タイトな賃貸住宅空室率、短期化している成約日数などを見ても、住宅価格が堅調に上昇しているのは、市場の需要に応じたものであり、バブル的な状況になっているとは考えられません。

 

ただし、アメリカの住宅ローン金利の動向には注意が必要です。

 

市況には波がありますから、今後も長期間上昇を続けるかどうかは、分かりません。個人的には、中期的には上昇が一服する踊り場になるか、あるいは多少下げるタイミングがくると思います。それは、住宅ローン金利が引き上げられていることが原因です。もし今後さらなる金利引き上げがあり、それによって住宅市況が冷え込むタイミングがきたら、むしろ不動産購入のチャンスなのではないかと考えています(個人的な見解です)。

 

 

ブロドスキ・ザクリ

株式会社オープンハウス ウェルス・マネジメント事業部 エグゼクティブコンサルタント

 

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本連載は、2019年3月13日刊行の書籍『日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話

日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話

高山 吏司
ブロドスキ・ザクリ
豊岡 昂平

幻冬舎メディアコンサルティング

2年間で約700棟の物件を仲介する今もっとも注目の最強集団が 本邦初公開の知識を惜しげもなく明かす! アメリカ不動産投資の知名度は、以前と比べれば上がっているとは言え、やはり「投資目的で、海外の不動産を購入する」…

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