不動産に関する制度が、州や都市によって大きく異なる
◆連邦国家アメリカ
ちなみに、ご存じのようにアメリカは合衆国連邦です。連邦国家、つまり、国に準じるような高い独立性を持った州が集まって構成されている国家だということです。そのため、アメリカの各州は日本の「県」とは比べものにならないくらい強力な権限を持ち、行政制度、法律(州法)、税金(州税)なども、州によって大きく異なります。経済的な状況も州や都市ごとに、大きく異なります。
例えば、日本は国全体の均質性が高い上に、やはり東京一極集中の国だと感じられます。大阪や名古屋、福岡などがいくら活気づいていても、日本全体の経済を牽引するのは東京(首都圏)です。日本全体が好況なのに東京は不況ということは、想像しにくいでしょう。逆に東京は好景気でも、それが地方まで及んでいないということはよくあります。これはイギリスも同じで、イギリスは経済面では、やはりロンドンの国なのです。リバプールやマンチェスターがあっても、ロンドンの影響力とは比べものになりません。
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ところが、アメリカは違います。ニューヨークの経済がだめなときでも、ロサンゼルスがあり、ロサンゼルスが不調なときでもシカゴがあり、ダラスがあり、シアトルがあり……、といった具合に、全米各地の大都市がある程度自立的で巨大な経済圏を作っていて、それらの好不況の波がサイクル的に回っています。そのため、アメリカ全体が同時に全部ダメになるということが、起こりにくいのです。
このように、州の独立性が高く、不動産に関しても制度や状況が州や都市によって大きく異なるため、その全部を解説することは、とてもできません。私が書いていることは、主に私が生まれ育ったユタ州や、テキサス州、ジョージア州、オハイオ州などの例であり、必ずしもアメリカすべてについて当てはまるとは言えないことをご承知おきください。
「7000万人増」のアメリカ、「1900万人減」の日本
◆先進国で随一の人口増加と経済成長を続けるアメリカ
アメリカは、移民の流入もあり先進国では珍しく、人口が大きく増加している国であり、その傾向は今後も続くと予想されています。国連が発表しているデータでは、2015年に約3億2000万人だったアメリカ人口は、2030年には約3億5500万人、2050年には約3億9000万人に増加すると見込まれています。一方、日本は、2015年に約1億2800万人だったのが、2030年には1億2200万人、2050年には1億900万人にまで減少すると見込まれています。
7000万人も人口が増えるアメリカと、1900万人も減る日本。それぞれの国で住宅の需要がどう動くのか、これだけでもだいたい想像がつくのではないでしょうか。
しかも、日本の場合、人口が減る一方で、2045年ごろまでは65歳以上の高齢者は増え続けると予測されています。人口が減る割合以上に64歳以下の労働力人口は減少し、一方で高齢者が増加するのですから、現役世代が負担する社会保障費などはさらに増加し、可処分所得は減少すると思われます。一方で、労働力不足から生産も縮小する懸念があります。
今、日本の政権は、外国人労働者を大幅に受け入れる方向に政策の舵を切り、この人口減+高齢化による経済のシュリンク(縮小)を回避しようとしていますが、日本で多数の外国人労働者の受け入れが着実に進むかどうかは不透明な気がします。
余談ですが、多民族国家のアメリカから来た私から見ると、やはり日本は国民の同質性の高さによって上手く成長してきた社会だと感じます。その日本で文化も風習も異なる外国人労働者を増大させる政策が上手くいくのか、アメリカ人から見て、心配です。
ちなみに、アメリカのトランプ政権は不法移民に対する取り締まりの強化を行っています。あれを見て、これまで移民による人口の増加が成長要因の一つとなってきた、アメリカの体質が変化してしまうのではないかと心配する日本人もいるようです。しかしトランプ政権の政策は「不法」な入国者を締め出すものであり、長期的に見ればアメリカ社会経済へのプラスがあると考えられており、それはまたアメリカ不動産の価格にも、基本的には良い影響をもたらすはずだと言われています。そもそも、不動産デベロッパーから身をなしたトランプ大統領が、不動産業界にとって多大な悪影響を及ぼす政策を実行するとは、私には考えられません。
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次に、アメリカ経済の今後の成長性を確認します。
人口が増えていることもあり、アメリカ経済の実質成長率(実質GDP成長率)は、リーマンショック後の2010年以降、1.5~3.0%で堅調に推移しています。当然ながら、BRICsやASEAN諸国などの新興諸国と比べれば成長率は低いですが、世界最大の経済規模を持ちながらこれだけの成長を続けていることが重要です。経済の長期予測は難しいですが、IMFの予測では2020年からはやや成長が鈍化し、1%台の成長率になると見込まれています。
一方、日本の実質経済成長率は、2010年こそ、リーマンショックで落ち込んだ前年の反動から4.4%を記録しましたが、その後はマイナス0.1~2.0%の間で推移しています。そして今後5年間では1%以下の数字が続き、ほぼゼロ成長になると見込まれています(IMF〝WorldEconomicOutlookDatabases〟より)。
ブロドスキ・ザクリ
株式会社オープンハウス ウェルス・マネジメント事業部 エグゼクティブコンサルタント