州によって「不動産の所有形態」が多少異なる
アメリカでは州によって法律が異なるため、不動産の所有形態も多少異なりますが、原則として以下の4つが挙げられます。
①Tenancy in Severalty またはSole Ownership(単独所有)
②Tenancy in Common(共有所有権)
③Joint Tenancy with Rights of Survivorship(合有所有権 生存者取得権付)
④Living Trust(リビングトラスト)
以下の州では、「Tenancy by Entireties(夫婦での連帯所有権)」という所有形態もあります。
アラスカ州、アーカンソー州、ワシントンD.C.、デラウェア州、フロリダ州、ハワイ州、イリノイ州、インディアナ州、ケンタッキー州、メリーランド州、マサチューセツ州、ミシガン州、ミシシッピ州、ミズーリ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ノースキャロライナ州、オクラホマ州、オレゴン州、ペンシルバニア州、ロードアイランド州、テネシー州、バーモント州、バージニア州、ワイオミング州
カリフォルニア州では、「Community Property(夫婦共有財産)」という所有形態もあります。
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それぞれの所有形態のメリット・デメリットとは?
以下で、ハワイ不動産の所有形態と、その条件やメリット・デメリットを見ていきましょう。
◆Tenancy in Severalty(単独所有権)
単独での所有、個人または法人
【生前の管理・売買】
⇒所有者本人または委任状の代理人
⇒不動産を使用したり、抵当に入れたり、売却または賃借することができる
【相続】
⇒遺言書で指定された相続人またはハワイ州法に基づく法定相続人が相続
⇒プロベートが必要
◆Tenancy in Common(共有所有権)
2人以上で共有、個人または法人、各自個別の所有権を保有、割合は平等でなくても可
【生前の管理・売買】
⇒所有者本人または委任状の代理人
⇒それぞれの所有権のみを自由に売買することができる
⇒自分の持分に対し、抵当権を設定することも可
【相続】
⇒遺言書で指定された相続人またはハワイ州法に基づく法定相続人が相続
⇒プロベートが必要
◆Joint Tenancy with Rights of Survivorship(合有所有権 生存者取得権付)
2人以上で共有、個人のみ、全員で全体の所有権、所有権の割合は平等
【生前の管理・売買】
⇒所有者本人または委任状の代理人
⇒それぞれの所有権を自由に売買することができるが、その所有権を得た者は共有不動産権になる
⇒自分の持分に対し抵当権を設定することも可能、合有不動産所有者としての関係が解消される
【相続】
⇒残された他の所有者が権利を引き継ぐ
⇒相続人を指定できない
⇒死亡証明書を登記所に記録し、不動産所有権証書の修正をする
⇒最後の所有者が亡くなった時点でプロベートが必要
◆Tenancy by Entireties(夫婦での連帯所有権 生存者取得権付)
婚姻している夫婦のみ、夫婦で全体の所有権を保有、離婚をした場合はTenancy in Commonになる
【生前の管理・売買】
⇒売却や抵当権を設置するときには必ず、夫婦両人の承諾・署名が必要
⇒夫婦一方の個人負債や事業債務を回収する目的で、連帯不動産権を差し押さえたり、その一部の売却を強要したりすることはできない
【相続】
⇒残された配偶者が所有権を引き継ぐ
⇒死亡証明書を登記所に記録し、不動産所有権証書の修正をする
⇒残された配偶者が亡くなった時点でプロベートが必要
◆Living Trust(リビングトラスト)
個人または夫婦でのトラストを設定、トラストの「トラスティ」が所有者
【生前の管理・売買】
⇒「トラスティ」
⇒ご自身で資産管理ができる間は、自身が「トラスティ」として自由に不動産を使用、管理、売却できる
⇒ご自身で資産管理ができなくなったら、トラストで予め指定しておく引き継ぎの「トラスティ」が資産管理を継続
【相続】
⇒トラストで相続人を指定
⇒相続条件も明記できる
⇒プロベート不要
⇒「トラスティ」が相続人への名義変更手続きを行う、または売却手続きを実行
なお、本連載第4回で述べた「Transfer on Death Deed(TODD)」は、不動産の所有形態ではありません(関連記事『共同名義、リビングトラスト…米国にある財産の所有形態とは?』参照)。不動産の登記所有者が亡くなったときの不動産の相続人を予め指定し、登記しておく書類です。TODDを登記しておくことで、プロベートなく不動産の相続ができます。法人名義やリビングトラスト名義で所有する不動産の相続は、プロベートの対象にならないため、TODDは適用されません。
米国に不動産を所有している方は、ご自分で資産管理ができなくなった時のために、また遺産分割時に厄介なプロベートにならないように、あらかじめ所有形態の見直しをされることが好ましいでしょう。
佐野 郁子
弁護士法人 佐野&アソシエーツ 弁護士
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