遺言書がない場合、州法にもとづく法定相続人が相続
アメリカに不動産や金融資産を所有している方が亡くなると、例外を除いて(関連記事『共同名義、リビングトラスト…米国にある財産の所有形態とは?』参照)、米国資産の相続は、遺言書があってもなくても「プロベート」という裁判所の監視下で行われる遺産分割・相続手続きを経て行われます(関連記事『米国に資産がある人は要注意!相続の壁となるプロベートとは?』参照)。
遺言書がない場合や、プロベートで遺言書が無効とみなされた場合には、その州法にもとづく「法定相続人」が相続します。アメリカでは州によって法律が異なるため、法定相続人の定義も各州によって異なります。
まず一例として、ハワイ州の法定相続人について見ていきましょう。
◆配偶者がいる場合
❶被相続人に子供と親がいない場合
⇒100%配偶者が相続。
❷被相続人の子供が全員配偶者との間の子供であり、かつ配偶者に被相続人以外との子供がいない場合
⇒100%配偶者が相続。
❸被相続人に子供がなく、親がいる場合
⇒最初の200,000ドルと残りの3/4を配偶者が、残りを親が相続。
❹被相続人の子供が全員配偶者との子供で、配偶者には被相続人以外との子供がいる場合
⇒最初の150,000ドルと残りの1/2を配偶者が、残りを被相続人の子供が相続。
❺被相続人に配偶者以外の者との間に子供がいる場合
⇒最初の100,000ドルと残りの1/2を配偶者が相続、残りを被相続人の子供が相続。
◆配偶者がいない場合
①被相続人に子供がいる場合
⇒子供が相続。
②被相続人に子供がなく、親がいる場合
⇒親が相続。
③被相続人に子供も親もいない場合
⇒親の子孫(つまり兄弟姉妹、姪や甥)が相続。
④被相続人に子供、親、兄弟姉妹、姪・甥もいない場合
⇒母方の祖父母の子孫と、父方の祖父母の子孫で1/2ずつを相続。
⑤上記に該当する人物が誰もいない場合
⇒ハワイ州のものに。
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州によって「法定相続人」が大きく異なるので要注意
次に、カリフォルニア州の法定相続人について見ていきましょう。
◆配偶者がいる場合
❶被相続人に子供も親もいない場合
⇒100%配偶者が相続。
❷被相続人に子供が1人いる場合
⇒共有財産は100%配偶者が相続。特有財産の1/2を配偶者が、残りの1/2を子供が相続。
❸被相続人に子供が2人以上いる場合
⇒共有財産は100%配偶者が相続。特有財産の1/3を配偶者が、残りの2/3を子供が相続。
❹被相続人に子供がなく、親がいる場合
⇒共有財産は100%配偶者が相続。特有財産の1/2を配偶者が、残りの1/2を親が相続。
❺被相続人に子供も親もなく、兄弟姉妹がいる場合
⇒共有財産は100%配偶者が相続。特有財産の1/2を配偶者が、残りの1/2を兄弟姉妹が相続。
*カリフォルニア州では、婚姻中に得た財産は基本的にすべてが夫婦の共有財産とみなされます。たとえ1人だけの名義になっている不動産や銀行口座でも、カリフォルニアの法律上は共有財産とみなされます。婚姻前に得た財産や、婚姻中でも遺産相続、贈与で得た財産は、所有者の特有財産とみなされます。
◆配偶者がいない場合
①被相続人に子供がいる場合
⇒子供が相続。
②被相続人に子供がなく、親がいる場合
⇒親が相続。
③被相続人に子供も親もいない場合
⇒兄弟姉妹が相続。
④被相続人に子供、親、兄弟姉妹もいない場合
⇒祖父母が相続。
⑤被相続人に子供、親、兄弟姉妹、祖父母もいない場合
⇒祖父母の子孫が相続。
⑥被相続人に子供、親、兄弟姉妹、祖父母もなく、配偶者が先に亡くなっている場合
⇒亡くなった配偶者に子供がいれば、その子供が相続。
⑦最終的に相続人が誰もいない場合
⇒カリフォルニア州のものに。
このように、州によって法定相続人は大きく変わります。また、法定相続人であっても相続権がない財産もあります(関連記事『共同名義、リビングトラスト…米国にある財産の所有形態とは?』参照)。アメリカに不動産や金融資産を所有している方は、トラブルにならないようにアメリカの相続に詳しい専門家にご相談されることをおすすめします。
佐野 郁子
弁護士法人 佐野&アソシエーツ 弁護士
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