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「リビングトラスト」は、一体どのような仕組みなのか
米国には様々は種類のトラスト(信託)があります。その中で「リビングトラスト」(正式名称:Revocable Inter Vivos Trust)は、裁判所の監視下で行われる「プロベート」という厄介な遺産分割手続きの回避目的で用いられます。
相続対策では「遺産分割がスムーズに進むリビングトラストが万全」だと思われている方も多いのですが、今回はリビングトラストで失敗した事例をご紹介します。
◆リビングトラストの仕組み
トラストは、以下の3者の役割によって構成されています。
①セットラー(設立者・委託者)
②トラスティ(管財人・受託者)
③ベネフィシアリー(相続人・受益者)
まず、米国財産を所有する本人がセットラーとして、リビングトラストを設立します。 リビングトラストは、本人とトラスティの間で「トラスト合意書」を交すことによって成り立ちます。
リビングトラストの場合、トラスティはセットラー本人で、本人の存命中はベネフィシアリーもセットラー本人になります。つまり1人3役の役割を果たします。(関連記事:米国の資産管理で活用したい「リビングトラスト」の仕組み)
◆『トラストのファンディング』
トラスト合意書を作成したら、米国の所有財産をトラスト名義に変更することが極めて重要です。本人が個人名義で所有している米国財産をトラスト名義に変更することを、「トラストのファンディング」といいます。
トラスト合意書は、本人が他界した後にトラスト名義で残った財産について、「誰に何を託すか」を予め明記しておく書類です。つまりトラストは遺言書の役割を果たすのです。
本人が他界した時、トラスト名義で残った財産は「個人の遺産」 ではなく「法人の財産」とみなされるため、プロベートの対象になりません。裁判所の関与なくスムーズに相続手続きが完了し、時間と費用を大幅に節約できることになります。
◆『引継ぎのトラスティ』
トラスト合意書では「引継ぎのトラスティ」も指定しておきます。本人が他界した時、「引継ぎのトラスティ」 がトラスト合意書の指示に従い遺産分割を実行します。つまり「引継ぎのトラスティ」は遺言執行人の役割を果たします。
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また、セットラーの存命中でも、自身で財産管理をすることができなくなった時には 「引継ぎのトラスティ」 がご自身に変わってトラスティとなり資産管理を行います。
◆リビングトラストの特徴
リビングトラストの最大の特徴は、本人の存命中はトラスト名義にした財産でも自身の財産と変わらず利用できることです。 これは前述の通り、本人がトラスティでありベネフィシアリーでもあるためです。リビングトラストは本人の他界後、初めて「法人」の扱いになる特別なトラストです。
「リビングトラスト」で失敗した事例とその理由
【事例1】
カリフォルニアに住む日本人女性は、プロベートを避けスムーズに相続が行われるよう、生前にリビングトラストを作りました。しかし、肝心な「トラストのファンディング」がされておらず、自宅も金融資産も個人名義のまま他界しました。
結果、回避するはずだったプロベート(裁判所の監視下で行われる、厄介な遺産分割手続き)を通して遺産分割が行われ、余計な時間と費用が発生することになりました。
リビングトラストを作成しても、死亡時に個人名義で所有している米国財産はプロベートの対象になります。リビングトラストでは「トラストのファンディング」が極めて重要です。
【事例2】
ハワイに住む日本人女性は、プロベートを回避するために生前にリビングトラストを作
成し、米国の財産を全てトラスト名義に変更しました。ところが、トラスト合意書で指定していた「引継ぎのトラスティ(遺言執行人)」が、本人より先に他界していました。
結果、遺産分割を行う「引継ぎのトラスティ」がおらず、裁判所で「引継ぎのトラスティ」の選任手続きが行われることになり、余計な手間と費用が発生しました。
リビングトラストでは、遺産分割を実行してくれる「引継ぎのトラスティ」を指定しておくことが重要です。 米国内で、実際の遺産分割手続きができる人を指定しておくことが好ましいでしょう。
このように、リビングトラストを作るだけでは意味がありません。既にリビングトラストをお持ちの方はきちんとファンディングが行われているか、「引継ぎのトラスティ」が指定されているか、詳しい専門家に確認しましょう。
佐野 郁子
弁護士法人佐野&アソシエーツ 弁護士