過剰な借入金は「備え」ではなく、むしろ「爆弾」
銀行から借りまくれ!という類のミスリード本が絶えません。前回に引き続きその内容を検証していきます(関連記事『中小企業社長に「銀行から借りまくれ!」とすすめる本の怖さ』参照)。
ある本では、次のような趣旨の内容が書かれていました。
「貸してもらえるなら、借りられるだけ、借りておくべき」
借りたら返済しなければならない、ということを全く考えていないのだろうか、と思ってしまうのです。が、銀行借入について、このような書き方をしている本や記事が、最近多いのです。
借りられるだけ借りたら、どうなるでしょうか? 現金は一時的に増えますが、当然、返済も金利も増えます。この著者の理屈は、返済をして借りられる枠ができたらまた借りる、ということです。要は、めいっぱい借りっぱなしにしておけ、ということです。
私たちのもとには、借入金が増えすぎてどうしたらよいのか、という相談もあります。これ以上は借りられず、返済のメドもたたず、どうすればよいのかわからない、と頭を抱える経営者です。そのような場合、まず業績もよくありません。この著者は、「それでいいんですよ」とでも言うのでしょうか。
役員報酬を大幅カットし、売れる資産は売り、手元資金を吐き出させ、不採算部門を閉鎖し、銀行に借り換えやリスケの交渉をする、など、血のにじむような対策で難局を乗り越えます。そうするしか、生き延びることができないのです。
しかし、そのような状況にしてしまったのは、経営者の「借りられるだけ借りておく」という思考が原因です。そのような思考でめいっぱい借りて、その資金を有効に活用できる経営者はいません。目の前にお金があれば、それが借金だろうと、金づかいが荒くなります。また借りたらいい、となります。
で、にっちもさっちも行かなくなるのです。それに、低金利がいつまでも続くわけではありません。自社の事業に飛び火する〇〇ショックも、いつ来るかはわかりません。
過剰な借入金は、そのような事態の備えになりません。むしろ、爆弾を抱えているようなものです。必要な資金だけを良い条件で借りる、ということに力を注いでほしいのです。
まだまだ、こういった本には不可解なことが山ほどあります。
1~2%の金利を「低い」と喜ぶ愚かな経営者たち
またある本には、次のような趣旨の内容が書かれていました。
「日本の企業は1~2%ぐらいの金利で借りることができる。多くても3%を超えることはない」
つまり、1~2%のような低い金利で借りられる、というわけです。1~2%など、私たちにすれば、「そんな高い金利で借りているんですか!」となる数字です。日銀が毎月公表している、新規融資の平均金利でも、直近で約0.7%(2019年1月現在)です。今の相場では、金利1~2%だと、それは高いのです。
とはいえ、業種によれば、3%を超える金利も存在します。例えばパチンコ業界は、融資を受けること自体がまだまだ厳しく、借りられても3%を超えている、というケースをよくお見かけするのです。
確かに1~2%の金利なら銀行は貸すでしょう。いまどき、そんな高金利で貸せるのなら、財務が多少悪かろうと、銀行は目をつむります。貸す先がないからです。この著者の言うように、
「借入金があるから借りられる」
のではなく、銀行の思惑は、
「財務状況が多少悪くても、1~2%の金利なら貸してやろう」
ということなのです。
それを、「1~2%の低い金利で借りられる」というのは、大きな勘違いです。このようなことが活字になるから、これを読んだ経営者が、自社の借入が1~2%の金利でも、「うちは低い金利なんだ」と間違って解釈してしまうのです。
先日お会いした経営者も、無借金から借入をし、「0.28%で借りました」と言っておりました。1~2%の金利で喜んでいては、ダメなのです。もし、どう交渉しても金利が1%を切らないのなら、それは財務状況に問題があるからなのです。格付(スコアリング)が低いのです。そのことを理解し、格付改善を目指してほしいのです。