中小企業のオーナーに「銀行からの借入を推奨する本」の危うさ

今回も前回に引き続き、中小企業のオーナーに銀行からの借入をすすめることの怖さを検証していきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。※本記事は、2019年1月8日に掲載された古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。

過剰な借入金は「備え」ではなく、むしろ「爆弾」

銀行から借りまくれ!という類のミスリード本が絶えません。前回に引き続きその内容を検証していきます(関連記事『中小企業社長に「銀行から借りまくれ!」とすすめる本の怖さ』参照)。

 

ある本では、次のような趣旨の内容が書かれていました。

 

「貸してもらえるなら、借りられるだけ、借りておくべき」

 

借りたら返済しなければならない、ということを全く考えていないのだろうか、と思ってしまうのです。が、銀行借入について、このような書き方をしている本や記事が、最近多いのです。

 

借りられるだけ借りたら、どうなるでしょうか? 現金は一時的に増えますが、当然、返済も金利も増えます。この著者の理屈は、返済をして借りられる枠ができたらまた借りる、ということです。要は、めいっぱい借りっぱなしにしておけ、ということです。

 

私たちのもとには、借入金が増えすぎてどうしたらよいのか、という相談もあります。これ以上は借りられず、返済のメドもたたず、どうすればよいのかわからない、と頭を抱える経営者です。そのような場合、まず業績もよくありません。この著者は、「それでいいんですよ」とでも言うのでしょうか。

 

役員報酬を大幅カットし、売れる資産は売り、手元資金を吐き出させ、不採算部門を閉鎖し、銀行に借り換えやリスケの交渉をする、など、血のにじむような対策で難局を乗り越えます。そうするしか、生き延びることができないのです。

 

しかし、そのような状況にしてしまったのは、経営者の「借りられるだけ借りておく」という思考が原因です。そのような思考でめいっぱい借りて、その資金を有効に活用できる経営者はいません。目の前にお金があれば、それが借金だろうと、金づかいが荒くなります。また借りたらいい、となります。

 

で、にっちもさっちも行かなくなるのです。それに、低金利がいつまでも続くわけではありません。自社の事業に飛び火する〇〇ショックも、いつ来るかはわかりません。

 

過剰な借入金は、そのような事態の備えになりません。むしろ、爆弾を抱えているようなものです。必要な資金だけを良い条件で借りる、ということに力を注いでほしいのです。

 

まだまだ、こういった本には不可解なことが山ほどあります。

1~2%の金利を「低い」と喜ぶ愚かな経営者たち

またある本には、次のような趣旨の内容が書かれていました。

 

「日本の企業は1~2%ぐらいの金利で借りることができる。多くても3%を超えることはない」

 

つまり、1~2%のような低い金利で借りられる、というわけです。1~2%など、私たちにすれば、「そんな高い金利で借りているんですか!」となる数字です。日銀が毎月公表している、新規融資の平均金利でも、直近で約0.7%(2019年1月現在)です。今の相場では、金利1~2%だと、それは高いのです。

 

とはいえ、業種によれば、3%を超える金利も存在します。例えばパチンコ業界は、融資を受けること自体がまだまだ厳しく、借りられても3%を超えている、というケースをよくお見かけするのです。

 

確かに1~2%の金利なら銀行は貸すでしょう。いまどき、そんな高金利で貸せるのなら、財務が多少悪かろうと、銀行は目をつむります。貸す先がないからです。この著者の言うように、

 

「借入金があるから借りられる」

 

のではなく、銀行の思惑は、

 

「財務状況が多少悪くても、1~2%の金利なら貸してやろう」

 

ということなのです。

 

それを、「1~2%の低い金利で借りられる」というのは、大きな勘違いです。このようなことが活字になるから、これを読んだ経営者が、自社の借入が1~2%の金利でも、「うちは低い金利なんだ」と間違って解釈してしまうのです。

 

先日お会いした経営者も、無借金から借入をし、「0.28%で借りました」と言っておりました。1~2%の金利で喜んでいては、ダメなのです。もし、どう交渉しても金利が1%を切らないのなら、それは財務状況に問題があるからなのです。格付(スコアリング)が低いのです。そのことを理解し、格付改善を目指してほしいのです。

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株式会社アイ・シー・オーコンサルティング 代表取締役

昭和40年 大阪府生まれ。

平成元年 関西大学卒業後、兵庫県の中堅洋菓子メーカーに入社。経理、総務、人事、生産管理、工程管理、広報など、主たる管理部門で実力を発揮。

平成17年 株式会社アイ・シー・オーコンサルティングに加わり、経営指導業務を開始する。
以降、長年の現場実務経験と、師匠である井上和弘(アイ・シー・オーコンサルティング会長)の《井上式経営術》を武器に、日々、中小企業の黒子としての経営指導に邁進している。

指導実績:財務改善、税務・銀行対策、労務問題改善、経営企画、管理会計、IT・システム化、事業承継など。
また、日本経営合理化協会主催「後継社長塾」(塾長:井上和弘)、に塾長補佐として参加し、後継社長の育成にも尽力している。

著者紹介

連載経営者必読!融資を勝ち取る銀行交渉術

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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