リノベーションで「賃料低下のスパイラル」から脱却
ここまでは、「リノベーションとは一体どんなものなのか」、そして、「なぜリノベーションをする必要があるのか」といった基本的な考え方を解説してきました。
最後に改めて、リノベーションのメリットを整理してみましょう(図表)。
[図表]リノベーションメリット一覧
現在所有している中古物件、あるいはこれから購入する中古物件に対し、入居者退去のタイミングでリノベーションを施すメリットは、以下のとおりです。
①安心感を得られる
安定した賃貸経営を長く続けるためには、将来的に起こりうるリスクや不安材料をできる限り排除し、経営に安心感を持たせることが重要です。
リノベーションを施すことは、他の物件との明確な差別化につながります。そして、その人気の高さと希少価値から市場の需要を強く惹きつけるので、入居者退去後の空室が長引く不安を大きく解消できます。
また、「築年数」というモノサシでしか測られない、無個性の空間と一線を画すことになり、築年数経過による賃料低下のスパイラルから脱却することにもなります。
さらには、フルリノベーションによって、通常のリフォームでは手をつけることができない給排水管などの設備にも手が入り、中古物件では当然に想定すべき、突発的な修繕リスクを減らすことができます。つまり、修繕支出や、他の住戸に対する損害賠償といった、寝耳に水的な金銭負担への不安も、同時に解消することができるのです。
リノベーションで賃貸経営に「充足感」をプラス
②満足度が高い
繰り返しになりますが、賃貸市場には、画一的で特徴のない物件ばかりが供給されています。
もともと東京ワンルームマンションには、その立地の特異性や鉄筋コンクリート造ならではの重厚感から、オーナーシップ、もしくは所有感といった喜びがあります。「自宅以外に、渋谷区〇〇駅徒歩△分でマンションを持っている」といった満足感です(賛否はありそうですが…)。
それに加え、室内のリノベーションによって、市場において希少価値が高い魅力的な居住空間に生まれ変わらせるわけです。その空間への愛着度も入り混じり、所有していること自体の満足感や喜びは何とも言えないものがあります。
また、入居者は、自分らしいライルスタイルを実現させてくれる、魅力的な居住空間を求めています。しかし、自分だけのライフスタイルを表現できるのは、単身者という限られた期間だけであるにも関わらず、市場にはそういった物件がほとんどありません。
リノベーション物件のオーナーは、そのような市場に対し、「入居者がワクワクできる魅力的な居住空間を新たに提供する」という社会的意義を担うことにもなります。
つまり、「自身の資産形成が入居者の毎日の幸せにつながっている」という喜びも感じられるのです。
「リノベーション」は費用対効果の面でも魅力的
③費用対効果に優れている
リノベーションは様々な側面から、費用対効果に優れていると言えます。
詳しくは後半の章で実例を交えて解説しますが、収益に関わる内容は以下の3つです。
(1)差別化された居住空間は、入居者入替時の空室期間を短縮させることになる
(2)家賃の引き上げ幅は物件によるが、家賃を引き上げても運営費の増加を伴わない
(3)リノベーション費用は会計上の「資産」として計上されるため、ほぼ全額が「減価償却費」として経費化できる。つまり、正味の手取り収益に関わってくる税務面でも、威力を発揮する
さらに、リノベーションの効果は資産価値にも大きな影響を及ぼします。物件の資産価値は、その収益性とリスク度合いの両方で決定づけられます。
運営費の増加を伴わない家賃の上昇という「収益性向上」と、空室や修繕といった「リスク要因の後退」という2つの側面が、収益還元法を元にした資産価値向上にダブルで寄与します。後ほど改めて解説しますが、ここでは「施工にかかった費用イコール単純にリノベーションによる資産価値の向上ではない」ということだけを覚えておいていただければと思います。