裁判所内で物件の買受人を決める「開札」
「開札」は入札期間終了後、あらかじめ定められた期日に管轄の裁判所内で実施されます。
裁判所の執行官がその場で入札書の入った封筒を開封し、入札者の名前と記入された金額を読み上げていきます。もっとも高い価額をつけた入札者が買受人となります。
物件の所有権が移るのは、開札日から3週間後
開札が行われ買受人が決まっても、物件の所有権がすぐに移転するわけではありません。
買受人は「売却許可決定」→「売却許可決定の確定」→「代金納付」→「所有権移転等」という手続きを経て、ようやく真の所有者になります。所有権の移転まで開札日から約3週間かかりますが、買受人は通常、住人との退去時トラブルを回避するため、所有権を獲得すると同時に引き渡し命令の申し立てを裁判所に行います。この要求に従わなければ「不法占拠者」と見なされ、強制退去の措置がとられることもあります。
したがって、開札日から3週間以内にもとの所有者は引っ越しを完了させる必要があるのです。ただし、実際に強制退去を行うには買受人は裁判所に申し立てて「強制執行の断行・立ち退き」という措置をとらねばなりません。
「引き渡し命令の申し立て」から、最終的に「強制執行の断行・立ち退き」が実施されるまでには「引き渡し命令の確定」→「強制執行の申し立て」→「明け渡し催告」といった手順が必須であり、約2カ月かかります。開札日から勘定するなら約3カ月の時間があるので、「その間に引っ越し先を見つければいい」と考えることもできます。
[図表5]開札から立ち退きまでの流れ
債権者と裁判所で手続きが進み、債務者は置き去りに
住宅ローンを支払えなくなったからといって、必ずしも競売にいたるわけではありません。「返済が破綻したのだから他に道はない」と考える人が少なくありませんが、競売は最悪の結末といえます。
不動産を売却したり債務を清算したりするときには通常、いろいろな交渉を行います。その後の暮らしがしっかりと成り立つよう、立ち退きの期限や引っ越し費用の提供、物件売却後の残債をどうするかなどについて交渉を進めるのが一般的な手続きです。
ところが競売になると、債権者と裁判所が事務的にどんどん話を進めてしまいます。債務者が債権者や裁判所と話をする機会はほとんどありません。家を失った後の生活を維持できるよう、工夫する余地がほとんどないのです。