ロシア経済制裁、年内は見送りか

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報のディープ・インサイトを転載したものです。

 

米国によるロシアへの制裁が、米国の中間選挙後に拡大するとの懸念から、市場では選挙後、ルーブル安や国債利回りの上昇(価格は下落)となる局面が一時的に見られました(図表1参照)。今回は制裁法案承認の先送りの公算から、ルーブルなどが回復しました。ただ、ロシアへの制裁は今後もマイナス要因と見られますが、ロシア市場の抵抗力にも注目しています。

新ロシア制裁法案:米国議会は年内、制裁法案承認は時間切れで棚上げの公算

一部報道によると、新たなロシア制裁を命じる法案作成に関連する米国の有力議員から、制裁法案の年内通過は難しい見込みと伝えられています。

 

11月の中間選挙を終え、米国議会は歳出法案や連邦裁判所判事の承認、農業法案など重要法案が目白押しで、制裁法案の承認は時間切れとなりそうです。

どこに注目すべきか: ロシア経済制裁、CAATSA、中間選挙

米国によるロシアへの制裁が、米国の中間選挙後に拡大するとの懸念から、市場では選挙後、ルーブル安や国債利回りの上昇(価格は下落)となる局面が一時的に見られました(図表1参照)。今回は制裁法案承認の先送りの公算から、ルーブルなどが回復しました。ロシアへの制裁は今後も注意は必要ですが、ロシア市場の抵抗力にも注目しています。

 

[図表1]ロシア10年国債利回りとルーブル(対ドル)の推移

日次、期間:2017年11月20日~2018年11月19日
日次、期間:2017年11月20日~2018年11月19日

 

 

まず、ロシアというよりも、米国サイドの制裁への対応に一部遅れが見られることです。例えば、ロシア制裁に向け昨年夏に成立した「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)」により制裁対象が拡大されましたが、米政権がCAATSAによる制裁を実施したのは18年になってからです。トランプ政権のロシアへの配慮が指摘されています。

 

 

もっとも、米中間選挙で下院は民主党が過半数を獲得したことで、ロシアへの制裁が強まる可能性は考えられます。民主、共和両党の超党派によるロシア制裁の範囲拡大を目的に法制の準備も進められているからです。検討中の法案にはロシアが米国の選挙に介入した場合に資産凍結などが適用される法案などが検討されています。

 

米議会は中間選挙の結果を受け、上院は共和党、下院は民主党が過半数を握るねじれ議会として19年1月に開会します。新たな制裁法案の承認は年内時間切れの公算が高いと思われますが、優先順位が他の法案に比較して低いと判断された可能性にも注目しています。

 

次に、ロシアサイドでも、制裁に対する抵抗力を高めてきたことがあげられます。特に米国が標的とするロシア国債への当局の対応が見られます。例えば、ロシア政府は18年9月に、米国の制裁で市場が混乱した場合、ロシア中銀などを通じ国債を買い戻す緊急対応を公表しています。なお、ロシア国債に占める非居住者(制裁で被害を受けると想定される)の割合は低下しています(図表2参照)。

 

[図表2]ロシア国債の非居住者の保有割合の推移

月次、期間:2013年9月~2018年9月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
月次、期間:2013年9月~2018年9月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

最後に、ロシアに対する制裁の実効性を再確認します。14年のクリミア併合当時、ロシア制裁は、報道などからロシアを国際社会から孤立させる内容と理解されていた面があります。確かに制裁の中には効果の高いものも見られますが、一方で抜け穴も散見されます。例えば、ロシアの国営石油会社の大株主に英国大手石油会社が見られます。ロシアの液化天然ガス(LNG)事業に仏企業が資本参加するなどの事例が見られます。ロシアを孤立させるには規模が巨大で、制裁が完全に機能したとは言いがたい状況です。

 

ロシアへの経済制裁は、ロシアの軍事力拡大とも関連する話しである可能性もあり、市場への影響と共に、背後関係にも目を向ける必要があると思われます。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ロシア経済制裁、年内は見送りか』を参照)。

 

(2018年11月20日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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