ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報のディープ・インサイトを転載したものです。

 

クラリダFRB副議長の11月16日のコメントを背景に、米国国債利回りは低下(価格は上昇)しました(図表1参照)。10月のクラリダ副議長の米国景気に楽観的な講演内容に比べ、やや慎重な印象です。もっとも、市場の反応の背景にはクラリダ副議長の発言というよりは、最近の米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者のコメントなどが影響した可能性があります。

クラリダFRB副議長:中立水準に金利を近づけることは理にかなうと支持

米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長は2018年11月16日に米国メディアCNBCのインタビューで米金融当局は政策決定に際して世界の経済成長を考慮に入れる必要があるだろうと発言しました。

 

今後の金融政策として、現時点で2.5~3.5%と推計されている中立金利(景気を過熱も抑制もしない中立な金利)に達していないとした上で、中立金利の水準まで政策金利を引き上げることは理に適っているとの見方を示しました。

どこに注目すべきか:FRB副議長、地区連銀総裁、中立金利

クラリダ副議長の16日のコメントを背景に、米国国債利回りは低下(価格は上昇)しました(図表1参照)。10月のクラリダ副議長の米国景気に楽観的な講演内容に比べ、やや慎重な印象です。もっとも、市場の反応の背景にはクラリダ副議長の発言というよりは、最近の米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者のコメントなどが影響した可能性があります。

 

[図表1]米国10年国債利回りと政策金利の推移

日次、期間:2017年11月15日~2018年11月15日
日次、期間:2017年11月15日~2018年11月15日

 

まず、クラリダ副議長の発言内容を取り上げ、最近の変化を見ると、(軟調さも懸念される)世界の経済成長を考慮に入れる必要があると言及した点で、ハト派(金融緩和を選好)寄りと見られます。FRB副議長に就任後、公の場で見解を表明する最初の場となったピーターソン国際経済研究所の講演では、米国の生産性上昇などを指摘し、米国景気に楽観的見解を示したからです。金融政策についても、漸進的な利上げを支持しています。

 

16日のインタビューでは、最近の中国などの軟調な経済指標を意識してか、世界経済の成長への配慮を示した点は、ややハト派的な印象です。

 

 

次に、最近のFOMC参加者のコメントにも、ややハト派的な発言内容が見られます。例えば、ハト派からタカ派に転換したと噂されるシカゴ連邦準備銀行のエバンス総裁は3~4回の利上げを支持しつつも、世界経済への注視を求めています(図表2参照)。ハト派のバイアスが強い総裁はとにかく、比較的中立と見られるダラス連銀のカプラン総裁もインフレ率上昇を許容する姿勢を示しています。パウエル議長の14日の発言も、19年の米国経済について、基本楽観的ながら、海外経済の影響や、財政政策の効果低減など課題も指摘しており、解釈次第では、ハト派とも見られます。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

[図表2]最近のFOMC参加者のコメント

※カシュカリ~エバンスの各総裁は地区連銀総裁 出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成
※カシュカリ~エバンスの各総裁は地区連銀総裁
出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

最後に、解釈に苦慮していますが、FRBが15日に19年に金融政策の枠組みを再点検すると発表したことです。紙1枚の内容で、具体的な点検方法は明らかでありませんが、戦略や手法、コミュニケーションの手段などを再点検するとしています。ただ、インフレ率は2%前後の推移となり、政策金利も中立金利に近づきつつあると見られる中、確かに政策手段の見直しの時期かもしれません。2%のインフレ率を達成した後の金融政策とのバランスについて指針が必要と思われます。

 

本来、推定値であるため幅を持って見る必要がある中立金利は、政策金利の長期的平均を中立金利としていますが、個別のFOMC参加者は異なる推定値を述べている場合もあるなど、コミュニケーションに整理が必要な面も見られます。

 

もっとも、来年の再点検が足元の金融政策の方針に影響するとは考えにくく、また、最近のややハト派寄りコメントも、最近のイベントを反映したに過ぎず、足元、12月の利上げ方針は維持しているように思われます。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『FOMC参加者に、ややハト派的なコメントが見られるが』を参照)。

 

(2018年11月19日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【5/7開催】ABBA案件の成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【5/8開催】使わない理由はない!?
金融資産1億円以上の方だからできる「新NISA」活用術

 

【5/8開催】「相続登記」を放置するとどんなトラブルに?!
2024年4月施行「相続登記の義務化」を専門弁護士がイチから解説

 

【5/9開催】認知症対策だけじゃない!
数世代先の相続まで見据えた資産管理・承継ができる
「家族信託」活用術

 

【5/9開催】「海外法人のつくり方・つかい方」
日本に居ながら自分の「分身」を海外に作るメリットは何か?

 

【5/11開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【5/12開催】良い案件を見つける3つの方策とは?
「日本型オペレーティングリース」投資の基礎講座

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録