キャッシュレス社会が語られる中、ビットコインやイーサなどの暗号資産に、デジタル通貨としての将来的な役割を期待する声がある半面、様々な問題も報道されています。国際決済銀行(BIS)など国際機関からの最近の報告や講演などを参考にして、デジタル通貨の今後を振り返ります。
仮想通貨(暗号資産):下落傾向に終わりは見えず
米国株式市場は2018年11月20日に2%程度下落しました(S&P500種指数、ダウ工業株30種平均指数)。不安定な株式市場の動きに注目が集まる中、ビットコインをはじめ仮想通貨(暗号資産)も下落しました(図表1参照)。
[図表1]主な仮想通貨(暗号資産)の推移
例えば、ビットコインは一時4000ドルに近づくなど、イーサやライトコインなど主要な暗号資産は軒並み下落しました。
どこに注目すべきか:仮想通貨、キャッシュレス社会、デジタル通貨
キャッシュレス社会が語られる中、ビットコインやイーサなどの暗号資産に、デジタル通貨としての将来的な役割を期待する声がある半面、様々な問題も報道されています。国際決済銀行(BIS)など国際機関からの最近の報告や講演などを参考にして、デジタル通貨の今後を振り返ります。
まず、言葉ありき。日本ではビットコイン等を仮想通貨と呼ぶケースが多く見られます。ただ、国際機関などでは暗号資産と呼ばれています。その理由はビットコインなどは『通貨』としての機能を備えていないと見られるからです。
この点について、中央銀行の中央銀行であるBISの見解は明確です。「デジタル時代におけるマネーと決済システム」という講演で、暗号通貨という言葉を使用した場合の『通貨』はミスリードと警告しています。通貨(マネー)の機能として、①価値尺度、②価値保存、③交換があげられますが、現在取引されている「仮想通貨」の変動の大きさなどを考慮すれば、通貨とは言いがたいと思われます。
また、信用が基盤のマネーですが、暗号資産の基盤となるシステムのセキュリティに不安も見られます。例えば、BISの講演では、年初来だけで暗号資産から10億ドル(約1120億円)が盗まれた点などが指摘されています。
日本でも、日本銀行の雨宮副総裁が10月20日に『マネーの将来』と題して暗号資産について講演しています。要点を絞ると、日銀は現在のところ、一般の支払い決済に広く使えるデジタル通貨を発行する計画はないと述べています。
なお、あえてデジタル通貨と呼んでいるのは、現在市場で暗号資産で取引されている暗号資産でなく、これらの資産の技術基盤であるブロックチェーンや分散型台帳技術をソブリン通貨の信用と結びつけた、『デジタル通貨』を念頭においていると思われます。
なお、日銀はデジタル通貨に消極的ということはなく、欧州中央銀行と分散型台帳技術に関する共同研究を以前から進めてきています。
BISや日銀は暗号資産を通貨と見ることには否定的ですが、デジタル技術の進歩に伴いキャッシュレス化の方向に向かう点では一致しています。現金信仰の強い日本はキャッシュレス決済の一種であるカード支払いの普及はドイツなどと共に低水準となっています。しかし、日本でも現金以外の支払い・決済手段は身の回りで確実に増えていると感じます。
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[図表2]世界の主な国のカード支払い割合(対GDP比)
最後に、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事の11月14日の講演「新デジタル通貨と変化の風」を簡単に紹介します。先の両中央銀行のトーンに比べると、IMFは前向きです。
中央銀行の負債などの形態で、将来的にデジタル通貨の発行を検討する価値があると述べています。カナダや中国、スウェーデンなどを例に、真剣に検討されていることも紹介しています。もっとも、IMFも両中央銀行と同様の懸念も共有しています。デジタル通貨実現には紆余曲折がありそうです。
(2018年11月21日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト
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