これからは誰もが個人で将来のための資産形成に取り組み、資金を管理・運用していく時代です。本連載は、元銀行員でファイナンシャル・プランナーの高橋忠寛氏の最新刊で、2015年10月に刊行された『銀行員が顧客には勧めないけど家族に勧める資産運用術』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋し、お金との上手な付き合い方や、効率のよい運用に役立つヒントを紹介します。

「手数料」を基準にして選択肢を絞り込む

コストの削減は、投資の経験値が低かろうが相場観がなかろうが、注意して意識しさえすれば誰にでもできる、唯一のリターンの改善方法です。そして、これを意識することによって副次的に得られるメリットがあります。

 

それは、現在5000本以上ある日本の投資信託から、まずは手数料という基準だけで絞り込むことができることです。これにより9割以上の投資信託を選択肢から排除できますので、かなり大きなメリットになります。

 

投資信託であれば、購入時に支払う購入時手数料がかからない商品から選ぶことと同時に、保有期間中に日々差し引かれる信託報酬(運用管理費用)の料率に配慮すべきでしょう。たとえば、銀行や証券会社の支店で株式投資信託を購入した場合、アクティブファンドだと、信託報酬が年2%を超えるものもあります。インデックスファンドだと0.5%前後です。

 

大した差に見えないかもしれませんが、毎年のことですから積み重ねるとものすごく大きな違いになります。

 

毎月2万円を30年間積み立て投資すると、累計投資額は720万円になります。それを年4%で運用できたとすると、信託報酬が2%で実質2%のリターン、信託報酬が0.5%だと実質3.5%のリターンです。30年後には、コスト控除前の4%だと、1346万円、3.5%で1239万円(+519万円)、2%で974万円(+254万円)となり、信託報酬が2%の場合と0.5%の場合では、お金の増え方が倍以上違ってくることがわかります。

 

インデックスファンドよりもさらに運用期間中のコストが安いのが、前回でも説明したETFです。こちらは個別企業の株式への投資と同じように、市場価格で売買をすることになります。

 

ただ、インデックスファンドと違い、自動積立投資ができませんし、分配金を自動的に再投資することもできません。残高の少ないETFや取引のあまりなされていないETFも多い点を考慮すると、投資経験を積んできて、ある程度まとまった資産を形成された方に向いているかもしれません。

「購入手数料」が高い金融商品には手を出さない

そもそも購入手数料が高い金融商品には手を出さないようにすることも大切です。

 

一時払いの保険商品は4~8%の手数料を間接的に契約者が負担することになりますし、債券市場で売買されている既発債には、表面的には見えない手数料が存在します。

 

外貨建て金融商品は、円を外貨に替えて購入し、外貨を円に替えて利息や配当金、あるいは売却代金などを受け取りますが、この円から外貨、外貨から円という2回の為替取引にかかる為替手数料が割高です。

 

したがって、海外資産に投資したいのであれば、円建ての投資信託で、外国市場に投資するタイプのファンドを選んだほうが効率的です。このタイプの投資信託では、まずお客さまが購入する際に支払うのは円になります。それを、投資信託が海外市場に投資する際に、お客さまから集めた円を投資先の通貨に替えますが、投資信託会社は、個人投資家よりも大きな金額で為替取引を行なうため、為替取引にかかるコストが割安になります。

 

ちなみに、上級者向けの資金管理の方法としては、海外と資金のやりとりをする機会が多い人は、外貨建てで送金などの決済ができる金融機関を使うのが非常に効率的です。外貨建てで取引できる投資信託など利用する商品の選択肢は限られてきますが、外貨で受け取った資金をそのまま外貨で運用して、また外貨のまま使うことができます。

銀行員が顧客には勧めないけど 家族に勧める資産運用術

銀行員が顧客には勧めないけど 家族に勧める資産運用術

高橋 忠寛

日本実業出版社

世の中に発信されている金融商品や資産運用に関する情報の大半は、金融機関など「売り手側」から出されているものです。また、最も身近な金融機関である銀行の営業担当者は、お金や金融商品に詳しいプロであるという一面と金融…

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