これからは誰もが個人で将来のための資産形成に取り組み、資金を管理・運用していく時代です。本連載は、元銀行員でファイナンシャル・プランナーの高橋忠寛氏の最新刊で、2015年10月に刊行された『銀行員が顧客には勧めないけど家族に勧める資産運用術』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋し、お金との上手な付き合い方や、効率のよい運用に役立つヒントを紹介します。

税金を少なくして「手元に残る資金」を増やす

「アセットロケーション」というのは、第9回の連載でも触れた「アセットアロケーション」と響きが似ていますが、両者はまったく異なる概念です。

 

アセットロケーション というのは、税制も考慮して効率的な資産の配置を考えることです。「資産をどこに置いておくのが効率的か」を考えて税金の優遇制度を活用します。差し引かれる税金が少なくなれば、手元に残せるお金は増やせるからです。

 

今後、NISA(少額投資非課税制度)や確定拠出年金(DC)など各種制度が拡充されてくるにつれて、個人が資産運用をするうえで、アセットアロケーションとともにさらに重要な考え方になると思います。

 

たとえばいま、個人が開設できる口座(資産の置き場)には、どのような種類があるのかを整理してみましょう。

 

まず銀行や証券会社の「課税口座」です。銀行や証券会社に口座を開設した場合、一般的にはまずこの課税口座を開きます。この口座で運用して増えたお金には税金がかかります。

 

これに対して、NISA(少額投資非課税制度)という制度が2014年より開始しています。これは、株式や投資信託などへの投資から得られる利益にかかる税金を非課税にしますという制度です。そして、2016年からは年間120万円ずつ、最長5年間の運用で生じた値上がり益、配当金、分配金については、非課税になります。

 

また、同時にジュニアNISAも登場します。これは0歳から19歳までの子どもを対象にしたNISA口座で、年間の利用上限は80万円です(18歳まで出金することもできません)。したがって、一家に夫婦と子ども2人いる場合は、最大で年間400万円までの投資には非課税枠が認められることになります。

 

投資をするのであれば、こうした非課税枠を徹底的に利用するべきです。

圧倒的に高い節税効果をもつ「確定拠出年金」

NISAという非課税制度について説明したら、もうひとつの大きな税制優遇制度である「確定拠出年金」にも触れないわけにはいきません。2015年10月現在、この制度を利用できるのは制度が導入されている会社に勤めている人か、自営業者など対象が限定されています。

 

したがって、公務員や専業主婦は加入対象ではないのですが、今後、確定拠出年金の加入資格が拡大します。民間企業に勤務している人で、その会社に厚生年金基金や確定給付年金のいずれもない場合は、月額5万5000円、年間にすると66万円まで掛けることができます(確定拠出年金の月々の掛け金は、加入者の勤務先の年金制度、あるいは自営業者かどうかによっても大きく変わってきます)。

 

確定拠出年金制度はNISAのように運用益が非課税になるだけでなく、毎月の掛け金が全額、所得控除の対象となり、その分、所得税や住民税が安くなります。この効果が非常に大きいため、他の税優遇制度に比べても圧倒的に節税効果が大きいしくみになっています。

 

最後に、従来から多くのビジネスパースンが利用していた非課税制度が「財形貯蓄」です。財形貯蓄は、貯めた資金の使用目的を問わない一般財形貯蓄に関しては収益に課税されますが、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄に関しては、それぞれ年金と住宅資金以外の目的で使わなければ、運用収益に対して非課税になります。投資から得られる運用収益に対して20.315%も課せられる税金は、コストと同じ意味をもちます。ですから、税金が差し引かれずに済むのであれば、まさに運用収益の改善にほかならないのです。

 

だからこそ、アセットロケーションを常に意識して、少しでも使える非課税枠があったら、積極的に活用するべきです。

 

[図表]各口座のシステム

銀行員が顧客には勧めないけど 家族に勧める資産運用術

銀行員が顧客には勧めないけど 家族に勧める資産運用術

高橋 忠寛

日本実業出版社

世の中に発信されている金融商品や資産運用に関する情報の大半は、金融機関など「売り手側」から出されているものです。また、最も身近な金融機関である銀行の営業担当者は、お金や金融商品に詳しいプロであるという一面と金融…

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