「専門家に一任」するとかえって損をしてしまう!?
投資を「むずかしいもの」ととらえてしまうと、専門家にお任せしようということになり、結果として金融機関の営業担当者に判断を任せがちになります。営業担当者のアドバイスを真に受けて、提案されるがままに数年おきに投資信託を乗り換えたり、専門家に一任ということで、ラップ口座やファンドラップに申し込んだりすれば、金融機関にとって都合のよいお客さまになってしまいます。
本来、資産運用はむずかしいものではありません。理解できないほどにむずかしい商品は、複雑で手数料の高い粗悪品と考えて、選択肢から外してしまえばよいのです。金融機関側は儲からないから積極的には教えてくれませんが、金融商品はシンプルなほど利用者にとっては価値があります。
ラップ型の商品を使って、どんな商品をどんなタイミングで売り買いするかすべてお任せするサービスを利用すると、運用期間中、毎年3%程度のコストを負担し続けることになります。
日本で販売されている5000本を超える投資信託のなかから、本当に優秀な商品を選んで、最高のタイミングで売ったり買ったりしてくれるなら、たとえ高い手数料を負担してでも利用する価値はあるかもしれません。しかし、現実はプロといってもそんなことを実現できるわけがありません。
シンプルな商品性をもった投資信託を組み合わせる
運用には、市場平均を上回ることを目指す「アクティブ運用」と市場平均並みの運用を目指す「パッシブ運用」の2種類があります。アクティブ運用を行なう投資信託を「アクティブファンド」、パッシブ運用を行ない株価指数などのインデックスに連動する運用を目指すのが「インデックスファンド」です。
日本の投資信託は圧倒的にアクティブファンドのほうが多くあります。金融機関で紹介してくれるのもアクティブファンドです。プロが市場平均を上回ることを目指して運用している、このアクティブファンドですが、そのパフォーマンスの平均はインデックスファンドを下回ることは有名な話です。
なぜ、市場平均を上回り続けることができないのかというと、投資に必勝法のようなものは存在しないということと、アクティブファンドの運用手数料が高いためです。
もちろん、なかには市場平均を大きく上回る実績を上げている投資信託もありますが、全体のなかでいうと少数派です。市場環境によっても異なりますが、市場平均を上回っているのは2割くらいというデータもあります。そんな状況ですから、毎年平均を上回り続ける投資信託はかなり限られてしまいますし、あらかじめそういった投資信託を選ぶことはかなり厳しいことであるとわかると思います。
よほど投資信託の研究が好きな人であれば、趣味と実益を兼ねて選別に取り組めばいいかもしれませんが、多くの人にとってはアクティブファンドを選ぶことに時間と労力を費やすよりはインデックスファンドを利用したほうが効率的です。
ラップ型商品などが、本当に個々人の状況に合わせたオーダーメイド形式で、リスク許容度や投資経験、運用意向を緻密に分析してベストな商品の組み合わせで提案をしてくれたり、資産管理のサポートをしてくれたりするのであれば価値があるかもしれませんが、現状ではそこまでのサービスが期待できるものではありません。
結局、グループ関連会社の投資信託を組み合わせているだけで、お客さまのために本当によい商品を選んで提案しようとしているかは疑問ですし、最初は親身になってサポートしてくれた担当者も何年かすれば転勤でいなくなります。
このように考えると、わざわざ高いコストを払ってまで、ラップ型商品を活用する意味はほとんどないのです。それよりも、たとえばETFやインデックスファンドのようなローコスト、かつシンプルな商品性をもった投資信託を組み合わせれば、よりリーズナブルに、ラップ口座で運用するのと遜色のないパフォーマンスが得られるはずです。
ちなみに、ETFとは、Exchange Traded Fundsの略称で、証券取引所に上場され、株式と同じように売買されているインデックスファンドのことです。しくみがシンプルであればあるほど、中身をわざわざ複雑化して、よくわからないコスト負担をお客さまに強いるようなことができなくなります。
シンプルでコストの低い金融商品を長期間保有するという投資行動が、効率的な資産運用の基本です。
[図表]投資信託の種類とコスト(一般的なケース)