資産運用では、常に最悪のケースも想定しておく
銀行で投資信託などリスクのある商品へ投資していて、期待するような運用結果にならずクレームに発展することは珍しいことではありません。銀行側はきちんとリスクを説明したと主張し、お客さまは「聞いてない!」と主張します。
銀行の営業担当者がきちんと説明していないケースもありますが、実は説明していたとしても、お客さまには、期待どおりリターンが実現している状況ばかり印象に残ってしまい、ネガティブな情報は記憶に残っていないケースも多いように思います。
資産運用を始めたばかりのころは、自分にとって都合のよい未来だけを考えがちです。資産運用に成功して、高いリターンが得られた場合のことばかりを夢想しています。これでは、逆風が吹き荒れたときに大あわてになるのも当然でしょう。
一方、資産運用の経験値が高い方は、常に最悪のケースを想定したうえで、それが起こったときでもあわてないように、事前の準備を怠りません。事前の準備とは、常に自分が許容できる範囲を超えたリスクをとらないようにすることです。
過去の推移で大まかなリスクの大きさを把握する
投資信託を事例に考えてみましょう。
投資信託の過去の基準価額の推移で、大まかなリスクの大きさを把握することができます。過去の基準価額の推移を確認して、急落している時期を見つけて、何割くらい下がっているか確認してみましょう。もし、投資を検討している投資信託が、10年以上の運用実績が確認できないようであれば、同じ資産クラスの指数を利用します。日本株に投資する投資信託であれば、TOPIXや日経平均株価です。
次に自分自身が、どのくらいの損失までなら平静でいられるかという、最大許容損失額を考えます。たとえば、1年間で150万円の損失までなら覚悟ができる人がいたとします。その人が最悪の状況で3割下げるリスクのある投資信託に投資をするのであれば、投資元本はいくらまでにしておくべきか計算できます。この場合、30%の下落率で150万円の損失になるための投資元本を計算すればよいわけです。計算式は、A×0.3=150万円になるためのAを求めればよいのですから、
A=150万円÷0.3=500万円
となります。つまり最大30%の下落が生じたときに、損失額を150万円に抑えるためには、500万円がこの投資信託を購入する上限額になるのです。
このように、最悪の状況を想定しておけば、多少、マーケットが下がったとしても、あわてふためくことはありません。リーマンショックのような金融危機があっても、多くの資産は6〜7年経てば元の水準に戻っています。
金融危機があっても、そこで投資をやめずに続けられた人は評価額も回復して、結果的に損はしていません。負けてしまった人は、続けられなくて途中で投資をやめてしまった人です。続けるためにも、自分の許容できる下落幅に収まる程度の投資額にしておく必要があります。それが長期的に資産形成を続けていくための要諦でもあるのです。