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ナイショっ!愛人とのゴルフを「交際費」として計上する男

<あらすじ> 愛人であるマナミを「架空の社員」にし、給与手当を支払うことにした倉田。そんな倉田へ想いが傾きつつ、別の若い男に抱かれるマナミ。そして、妻が自分を疑っていることに気づき始めた倉田は……。一部の富裕層しか知らない「愛人」を持つことの金銭的な損得勘定に真剣に迫るリアル小説、男編〜第9回。

男がシャワーを浴びている間、マナミはスマホをチェックした。

 

メッセの内容は、倉田からのゴルフの誘いだった。

 

ゴルフは、短大時代に少しだけかじったことがある。当時揃えたハーフセットも、まだクローゼットの中にある。

 

赤坂のクラブでホステスをしていた頃、ママに頼まれ、一度だけ客とラウンドしたことがある。全く勘が戻らず140も叩いてしまったが、客はマナミにゴルフの腕など求めておらず、むしろ困った顔をするたび、手取り足取り教えたがった。

 

おじさん世代になると、ゴルフはスポーツではなく社交術になる。仕事を離れ、長時間一緒にラウンドすれば、堅苦しい関係だった相手とも打ち解けることができる。息が上がることなく、ボールを打ちながら穴に落とすだけの緩いスポーツは、運動不足の中年でも楽しむことができる。

 

爽やかな朝日を浴び、昼からビールを飲み、自然に囲まれ体を動かす。ビジネスマンにとって、ゴルフは格好のレジャーだ。もちろん接待となれば、仕事を忘れてはならないが。

 

マナミがゴルフクラブを握るのは1年ぶりだ。きっとまた勘が取り戻せないまま終わるに違いない。そして倉田もクラブの客同様、優しく教えてくれるはずだ。

 

マナミは「行きたい。連れてって」とだけ返信し、男と入れ替わりにバスルームへ入った。

 

+ + +

 

週末、倉田の車はマナミと山本とユカリを乗せ、 御殿場のゴルフ場へ向かった。

 

「それにしても意外だったな。ユカリもマナミちゃんもゴルフができるなんて」

 

「できるってほどの腕前じゃないですよ。たまたま大学時代にデビューしたんです」

 

マナミが答えた。

 

「ユカリも?」

 

「私はホステスの頃、客に教えてもらったの」

 

「じゃあもしかして、ゴルフセットも客に買ってもらったとか?」

 

「もちろん」

 

ユカリは平然と答えた。

 

「妬いちゃうなー。今度俺がもっといいゴルフセット買ってやるよ」

 

山本が冗談めかして言った。

 

「オトナ気ないな、ミッチーは。大してやらないのに買い換えるなんて、もったいないよ」

 

「ユカリってさ、けっこう金銭感覚マトモだよね。滅多におねだりとかもしないし」

 

「違うの。物欲ないだけなの。たとえばゴルフセットに客の愛情がこもっていたとしても、もう二度と会わない関係じゃん? だったら物に罪はないよ」

 

クールなユカリは、正論を言った。山本はやれやれ、という顔をした。

 

「もし今日がゴルフデビューだったら、遠慮なくミッチーに買ってもらうよ」 

 

ユカリは、山本の腿に手を置き、ニッコリと微笑んだ。

 

後部座席でじゃれつくふたりをバックミラー越しに見ていた倉田は、そっと助手席のマナミに視線をやった。

 

「ユカリ達、仲良いよね」

 

視線に気づいたマナミが、倉田の気持ちを代弁した。

 

「俺たちだって、仲いいじゃん」

 

「そうね。でも今日の資郎はいつもより元気なく見える。何かあった?」

 

マナミは鋭い。倉田のわずかなテンションの違いに気づいていたようだ。

 

「いや別に。大事な人を3人も乗せているから、安全運転を心がけてるだけさ」

 

「……それならいいけど」

 

元気がないわけじゃない。ただ、心からリラックスできないだけだ。

 

妻が浮気を疑っている。

 

まだ完全にバレたわけではないが、ほころびが見つかってしまったようだ。

 

隠し通してきたつもりだった。うまくやれていると思っていた。

 

だが実際は、あちこちに痕跡を残していたのだろう。髪の毛一本でさえ、女は探偵の如く 見破ってしまう。妻もその点では鋭かったようだ。

 

まだ山本には話していない。できればどこかのタイミングで相談したいと倉田は考えていた。

 

+ + +

 

ゴルフ場に着き、チェックインを済ませ、着替えてからラウンジに集合した。山本は慣れているようだが、倉田は女性とラウンドするのは初めてだったので、マナミとユカリを同伴しているこのシチュエーションが、なんだか照れくさかった。

 

「もしかして、ここ買ったのか?」

 

倉田が山本に尋ねた。

 

「ああ。会員権も法人名義で買えば資産になるしな(※)。今日も接待という名目で回るし、プレー費もこっちで領収書切らせてもらうよ」

 

「儲かってるんだな」

 

「まあそれなりにね。ここの経費を落とすために、ゴルフアプリ一本作らせたぜ」

 

うまいことやるもんだ、と倉田は感心した。

 

「ミッチー、早く早く!」

 

スタート時間になったらしい。カラフルなゴルフウェアに身を包んだ美女ふたりが、倉田たちを手招きする。

 

酒を飲んだりマナミを抱いたりする時間も楽しいが、こうやって青空の下、ダブルデートみたいなイベントを楽しむのもいいものだ。

 

よく見れば、自分たち以外にも男女2名ずつのグループはいくつかある。中には倉田たち同様、愛人同伴ではないかと疑うような中年の男性と若い女性の組み合わせもいる。

 

いつだったか、山本は「金のために働いてんじゃない。遊ぶために稼いでるんだ」と言っていた。

 

これまで堅実に稼ぎ、生活費と飲み代以外に浪費するような趣味もなかった倉田は、貯金と投資ばかりで金の使い方が下手だった。

 

遊ぶだけの金はある。なのに使わずにいたら、何のために働いているのかわからない。

 

もちろん仕事も好きだ。だが人生それだけというのも寂しい。

 

40手前にして、ようやく稼ぎのある人間らしく、遊びを満喫できるようになった。

 

だがこの幸せも、いつか終わらせなければならない。

 

(お願いだから、もう少しだけ目をつぶっててくれ!)

 

倉田は、心の中で神と妻に祈った。
 

 

〜監修税理士のコメント〜

※ゴルフ関連費は、接待なら経費計上できる?
 

編集N 接待ゴルフは当然「交際費」ですよね?
 

税理士  参加者および開催目的が取引先等への接待であれば交際費になります。山本の場合、倉田は取引先なので接待扱いにしてもセーフですが、愛人ふたり分の支払いについてはアウトですね。
 

編集N  でも表向き、ユカリは山本の会社のマスコット犬のトリマーだし、マナミは倉田の会社の外注だから、ある意味接待と言えるのではないかと。
 

税理士  経費の線引きは「所得を得るために必要な支出」かどうかです。果たしてユカリとマナミをゴルフに招待することが、業務に関連する人の接待といえるかは微妙です。
 

編集N ちなみに道具代や練習代、ゴルフ保険なんかも経費になるんですか?
 

税理士 道具については、会社が管理していてプライベートでは使わない前提であれば認められるかもしれません。練習代や保険料については個人的なものになりますので、たとえ接待のためにゴルフをするとしてもこれらは会社の経費にはなりません。そもそもゴルフ自体は仕事ではなく遊びですからね。
 

編集N  会員権も経費にできるんですか?
 

税理士  会員権は譲渡できるため「資産」扱いになります。ただし、売却時の売却価額が購入金額より下がってしまった場合は、値下がり部分が売却損として損金になります。それと会員権を保有する期間の年会費は交際費として経費にすることができます。
 

編集N  資産ということは、現金が会員権に化けるだけだから、節税にはならないんですね。山本は,そのことわかってるのかなぁ(笑)。

 

(つづく)

 

 

監修税理士:服部 誠

税理士法人レガート 代表社員・税理士

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作家/コラムニスト

1969年4月3日生まれ。東京都出身。跡見学園大学短期大学部生活芸術家中退。
2006年デビュー。『人のオトコを奪(と)る方法』『「アブナイ恋」を「運命の恋」に変える!』『アラフォー独女の生きる道』他、著作多数。
豊富な体験と取材から得た“血肉データ”による独自の恋愛観が定評。浮気や不倫といった「大人の恋愛」に造詣が深い。
富裕層の家庭で育ち、自身も自営業として節税に励んでいる。
「AllAbout」「ハウコレ」等、連載多数。

著者紹介

連載連載小説・愛人節税

この物語はフィクションです。

 

 

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