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夫へのあてつけ…? 愛人との箱根旅行を経費で落とす女

<あらすじ> 夫にも愛人がいるのではないかと疑念を持った雪江は、一方で巧にも他の女の影を感じ取ってしまう。夫と愛人、二人への感情はどちらも恋愛感情ではないと自身で確かめつつも、巧への独占欲に揺さぶられる雪江。そんなある日、ついに夫のカード明細から明確な証拠を発見してしまい……!? 一部の富裕層しか知らない「愛人」を持つことの金銭的な損得勘定に真剣に迫るリアル小説、女編〜第8回。

──夫に他の女がいることを知った場合、世間の妻はどう対処しているのだろうか。

 

24センチの女物のパンプス。

 

ホテル宿泊のカード明細。

 

証拠がふたつ見つかれば、おそらく「黒」であろう。

 

夫のカード明細は、家計とプライベートの支出が混在しているため、毎月雪江がチェックして家計簿に記帳している。家計支出の分は、後で共通の財布から夫に返金している。

 

今月の引き落とし額が少ないように感じた雪江は、念のため先月のカード明細とつけ合わせてみた。

 

そして、ふたつめの証拠をそこに見つけてしまった。

 

先月、家計簿をつけたときには気づかなかった。そもそも引き落としは夫の個人口座だし、家計とは無関係な支出は、内容までチェックしていなかった。

 

シティホテルの名称。金額的には宿泊したものと思われる。

 

夫の仕事は徹夜になることも多い。だがその場合は会社に泊まるので、ホテルを利用することはない。ここしばらく出張もなかったし、書かれているホテルの名前は、雪江でも知っている都内の有名なホテルだ。

 

夫はきっと、24センチのパンプスを履く女とここに泊まったに違いない。

 

カード払いにするなんて浅はかすぎる。妻にバレたくないなら、現金で支払えばいいのに……。

 

雪江は、深いため息をついた。

 

見落としたままファイリングするほど、自分は夫に興味を失っていた。巧のことで頭が一杯になり、他のことは疎かになっていた。

 

夫も気づいているだろうか。

 

雪江が夫の不貞に気づいたのと同様、もしかしたら……。

 

***

 

「お願いがあるんだけど」

 

月曜日の昼下がり、 自宅での作業を終えた巧に雪江は話しかけた。

 

「何ですか?」

 

「明日、時間あるかな?」

 

「特に予定はないですけど」

 

「じゃあ臨時で1日、体を貸して」

 

「どういう意味ですか? 何か別の作業があるなら、今からやりますけど」

 

「そうじゃないの。ちょっと遠出につき合ってくれない?」

 

「遠出?」

 

「ええ。 気晴らしに旅行がしたくって」

 

「いいっすよ。だったら日帰りじゃなくって、一泊で行きましょうよ。雪江さん、明後日は仕事休めないの?」

 

雪江は、ちょっと考えてから答えた。

 

「そうね。 たまには外泊もいいわよね」

 

一瞬、夫の顔が頭をよぎった。だが望と出かけることにすれば、まず疑われることはないと 雪江は確信した。

 

***

 

旅行なんて、何年ぶりだろう。

 

夫が独立してからは、多忙でそれどころではなかったから、もう5~6年はしていなかったことになる。

 

巧に旅行を提案したのは、夫への腹いせだ。

 

マンションを買ったりフラッと遠出してみたり、巧と愛し合うようになって以来、雪江は衝動に突き動かされることが多くなった。

 

「望さんとは、旅行したりしないんですか?」

 

助手席で寛いでいる巧が話しかけてきた。

 

雪江の運転する車で、ふたりは箱根へと向かっていた。

 

「ないわね。大学時代、一緒に卒業旅行は行ったけど」

 

「つき合い長いんですよね。なんかいいなぁ、そういうの」

 

「お互い友達少ないから、たまたま長く続いただけよ。巧くんは学生時代の友達とか、つき合いないの?」

 

「ないっすね。俺、高校でてすぐ上京しちゃって、以来田舎には帰ってなくて」

 

「田舎ってどこだっけ?」

 

「福岡っす。たぶんこっちに出てきてる奴も何人かいるんだろうけど、大学行った奴とは連絡とってないから」

 

「そうなんだ」

 

「そういやこないだ、偶然、幼馴染とばったり会ったんすよ」

 

「へー。懐かしかったんじゃない?」

 

「そーっすね。昔よりさらに性悪女になってて、驚きましたよ」

 

「女?」

 

「あ、いや、その、女といっても、初恋の人とかじゃないっすよ!」

 

「ふーん……」

 

リラックスしていたせいか、巧は雪江に余計なことまで口走ってしまったらしい。しまった、と、いつになく慌てる素振りを見せた。

 

ふと、雪江の脳裏に先日見てしまった女からのメッセージが浮かんできた。

 

(まさかね)

 

「つまらないヤキモチを妬くより、今を楽しんだ方がいい」望の言葉を思い出し、雪江は懸命に頭の中のモヤモヤをかき消そうとした。

 

「ところで、明日は結局仕事休めたんすか」

 

巧が話題を変えた。

 

「遅出で午後から出勤よ」

 

「じゃあ、明日はチェックアウトしたらすぐに帰っちゃうのか……」

 

「そうね。でも今日は時間を忘れてのんびりできるわ」

 

「旦那さんには、何て言ってきたんですか?」

 

「『望と旅行に行く』って。もちろん望にも口裏を合わせてもらうつもりよ」

 

「大学以来の旅行かと思いきや、相手が俺とはね」

 

巧がニヤッと笑った。

 

「……悪い女になっちゃったな」

 

「ごめん、俺のせいでもあるよね」

 

「巧くんは悪くないよ。悪いのは夫」

 

「……そういうことか」

 

「え?」

 

「急に旅行なんて言うからどうしたのかと思ったけど、旦那さんへの当てつけか」

 

「なんでわかったの?」

 

「なんとなく。だって雪江さんが夜ウチに来るのって、旦那さんが帰ってこないからでしょ?」

 

「……お見通しなのね」

 

雪江は天を仰いだ。

 

夫の浮気が原因ではない。

 

自分がないがしろにされていることが、雪江は許せないのだ。

 

夫とセックスレスじゃなかったら。

 

夫が外の女と浮気していなかったら。

 

どんなタラレバを言い訳にしようと、雪江が浮気をしている事実に変わりはない。

 

欲望を理性で抑え込まず、自由に振る舞うことの快感は、常に罪悪感と背中合わせだ。

 

たぶん夫も同じ気持ちだろう。もし雪江に悪いと思わず浮気していたら、ますます許せない。

 

山の麓にあるリゾートホテルが見えてきた時、雪江は胸騒ぎを覚えた。

 

(今夜、夫も女とどこかに泊まるのかしら……) 
 

 

〜監修税理士のコメント〜

※愛人との旅費を経費で落とすには?
 

編集N  愛人であっても、たとえば外注扱いの人を同伴させる旅行ならば、慰安旅行扱いにできますよね?
 

税理士  会社の役員や従業員の慰安を目的とした旅行であれば「福利厚生費」として、取引先などの会社の業務に関連する人の接待を目的とした旅行であれば「交際接待費」として、会社の業務の取材や視察・研修等を目的とした出張であれば「取材費や旅費交通費」として、会社の経費にすることができます。

しかし、雪江の場合はこれらのどれにも該当しないのでアウトですね。あくまでも「会社の業務」に関連することが大前提です。
 

編集N 雪江は歯科医だから……地方のクリニックを視察することにすれば、旅行し放題ですね!
 

税理士  実際にどこのクリニックを訪問して誰と会ってどのような話をしたのか、視察結果の報告書や打合せ記録といった証拠が必要になりますね。視察である以上は、視察した事実を証明できる書類がなければ、税務調査で否認される可能性が高いです。安易な発想は危険です。

 


(つづく)
 

 

 

監修税理士:服部 誠

税理士法人レガート 代表社員・税理士

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作家/コラムニスト

1969年4月3日生まれ。東京都出身。跡見学園大学短期大学部生活芸術家中退。
2006年デビュー。『人のオトコを奪(と)る方法』『「アブナイ恋」を「運命の恋」に変える!』『アラフォー独女の生きる道』他、著作多数。
豊富な体験と取材から得た“血肉データ”による独自の恋愛観が定評。浮気や不倫といった「大人の恋愛」に造詣が深い。
富裕層の家庭で育ち、自身も自営業として節税に励んでいる。
「AllAbout」「ハウコレ」等、連載多数。

著者紹介

連載連載小説・愛人節税

この物語はフィクションです。

 

 

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