「日付」を忘れると遺言書がムダになる!?
自筆証書遺言は、遺言者本人が独力で作成する場合が多いので、十分に注意を払わないと、今回ご紹介する事例のように思いもよらぬミスを犯すことになります。念のため、とりわけよくある失敗について確認しておきましょう。
①日付を忘れる
自筆証書遺言では、日付を記載しておかなければなりません。日付がなければ、遺言書は全体として無効になります。せっかく時間と手間をかけて書いたにもかかわらず、すべてがムダになってしまうのです。
最後に必ず、日付を書き落としていないか、チェックしましょう。
②別紙目録をワープロ書きする
たとえば、複数の不動産を所有しており、それを相続人のうち誰に与えるのかを遺言書の中で指定するような場合に、「いちいち書くのは面倒だから、パソコンで作成し、プリントアウトしたものを添付しておこう」などと自筆ではなく、ワープロ書きしてしまう人がいます。
しかし、自筆証書遺言は、先にも強調したようにあくまでも「自筆」で記されていなければなりません。したがって、ワープロで作成した箇所については、遺言書としての効力が生じません。
いったん、自筆証書遺言の形で作成すると決めた以上は、すべての文を一字一句、自筆で書くことを心がけましょう。
遺言書は「ごくシンプルに、あっさりと」書く
③事細かに書きすぎる
遺言書に、何もかも細かく書こうとしてしまうと、かえって重要なことを漏れ落としてしまう危険があります。前回紹介した事例も、建物については登記簿通り正確に詳細に記そうとしたことが、土地について失念する原因となったのかもしれません。
遺言書を作成するときは、何も詳細に記すことにこだわる必要はありません。たとえば、自宅を特定の相続人に単独で相続させたいのであれば、「自宅を○○に相続させる」と書いて名前と日付を記載し、拇印を押す程度でもよいのです。登記簿通りにすべて記載する必要はないのです。
要は、建物と土地をすべて特定の相続人に相続させるという遺言者の意思が遺言書の文面から明らかになっていれば十分なのです。細かく書きすぎて、本当に書いておかなければならないことを落とすぐらいなら、ごくシンプルにあっさりと書いておくほうがよい場合が多いでしょう。
どうしても詳細に書く必要があったり、あるいは細かく書くことにこだわるのであれば、致命的なミスを避けるためにも、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言を選択するのが適切かもしれません。