前回は、ニッチブランド創出における「マーケティング調査」の重要性を解説しました。今回は、既存のECサイトのデータ収集に使えるマーケティングツールを紹介します。

世界中のECモールの売上・販売数を推計する「Nint」

マーケティングでは、競合分析、つまりは競合となり得る既存のECサイトのデータを収集し分析を行うことも必要となります。たとえば、今現在、Aという商品の企画・開発を検討しているのであれば、それと似通った特徴をもつBという商品を販売している店のデータを、具体的には「その店ではBをいくらで販売しているのか」「その店でBはどれだけ売れているのか」などのデータを入手しなければなりません。

 

「他の店の売上なんてどうやって集めればよいのだ・・・」と思うかもしれませんが、マーケティングに必要な他店のデータを収集するために利用できる便利なツールやサービスがありますし、また、初心者でもデータの分析を簡単に行えるシステムも存在するので、それらを使えば、誰でも簡単に競合分析を行うことができます。

 

参考までに、私の会社やグループ会社で実際に使っている主要なツールやサービス、システム等を紹介しておきましょう。

 

 

(1)Nint

Nint(ニント)はECデータプロバイダーのアドウェイズテクノロジーが運営する、ECサイト向けの分析ツールです。日本のECモール上位3社、中国のECモール上位シェア80%以上、世界中の有力ECモールの公開情報(ビッグデータ)を収集し、そのデータを独自システムによって分析し、売上・販売数などを推計する仕組みとなっています。

 

2018年6月現在、以下の4種類のツールが提供されています。

 

①Nint ECommerce

楽天市場、Yahoo!ショッピング向けのツールです。各ECモールのカテゴリ別市場規模、人気ショップの売上、競合ショップの広告戦略が把握でき、ヒット商品の兆しに競合企業よりも早く気づくことができます。

 

②Nint Research

メーカー、小売業向けツールです。各ECモールのカテゴリ別市場規模、ショップランキング、人気商品がいくらで販売され、どれだけ売れているかが分かります。マーケティングや商品企画のヒントが得られます。

 

③Nint Seller

アマゾンセラー向けツールです。セラー、ASIN(Amazonグループが取り扱う、書籍以外の商品を識別する10けたの番号)、商品の売上や販売数が分かります。カテゴリーの市場規模からOEM戦略が組み立てられるほか、オリジナル商品で価格競争を避けた商品モデルを見つけることも可能。また似た仕入先のセラーも自動で教えてくれます。

 

④Nint China

中国最大級のECモールで今何が売れているのか、中国マーケットで人気商品がいくらで販売され、どれだけ売れているのかが分かります。また中国の政策方針の変更によるトレンドの変化も把握できます。

amazonや楽天のマーケティングツールもある

(2)amazon seller central

Amazon seller centralは、アマゾンで商品を販売する際に利用する出品管理ツールであり、以下のような機能を備えています。

 

①在庫管理

商品登録や在庫管理などの出品情報の管理。

 

②注文

受注処理など注文に関するデータの管理。

 

③レポート

売上やアクセス数など様々なデータの抽出と分析。

 

④パフォーマンス

顧客評価などのパフォーマンスの確認。

 

⑤設定

登録情報や配送料の設定。

 

このうち、③と④の機能を通じて得られるデータがマーケティング分析に役立ちます。

 

[図表]amazon seller central

 

(3)Google Analytics

ウェブサイトと連携することにより、自動的にアクセス解析を行い、その結果を「リアルタイム」「ユーザー」「集客」「行動」「コンバージョン」という5つのレポートのかたちで表示してくれます。

 

アクセス・離脱等のユーザー行動を把握するのに最適なツールといえますが、楽天市場に関しては機能に制限を受けます。一方で、自社サイトに関しては入口(どのページからの流入か)、出口(コンバージョンしたページ)も把握することが可能となっており、かなりの詳細なデータが取得可能です。

 

(4)MIERUCA(ミエルカ)

株式会社Faber Company(ファベルカンパニー)によって提供される人工知能を使ったクラウド型のSEO・コンテンツ改善サービスです。狙いたいキーワードの検索市場の大きさや、競合サイトの流入キーワードを可視化するツールを利用できます。自社と競合他社のキーワード別の流入差を可視化することにより、「競合に差をつけられていないか」また「そのオンライン市場の大きさはどれくらいか」などを確認することができます。

 

また、競合と自社の〝ブランド名〟や〝商品名〟〝会社名〟を登録しておくことで、「ブランド名」や「商品名」と一緒に検索されるキーワードを定期的に自動収集する機能も備えています。競合ブランドが、新しく手がけてきた施策やブランド戦略の調査に活用することが可能です。

 

(5)GRC

検索順位をチェックするツールです。検索順位をチェックしたいサイトのURLとそこへアクセスするための検索ワードを設定することで、設定した検索ワードでのサイトの検索順位が表示されます。検索順位の推移がグラフで表示されるので非常に分かりやすいです。3つのURLと20個の検索ワードが設定可能な無料版もあります。

 

 

(6)楽天市場のマーケティングツール

楽天市場に出店している場合には、そこで用意されているマーケティングに役立つ様々なツールが用意されています。一例を示すと、世間で大きな注目を集めている検索キーワードでありながら、楽天市場内ではまだそのワードを使った商品がないものをリストアップして教えてくれるサービスなどが存在します。私の会社でもこの“not found list(ノット・ファウンド・リスト)”を使って商品企画を考えることもあります。

ニッチブランド革命 デジタルマーケティング時代のヒットの法則

ニッチブランド革命 デジタルマーケティング時代のヒットの法則

山口 恵市

幻冬舎メディアコンサルティング

好きなものを「つくって広めたい」が現実に! これからの市場を支配するのは、小さなニーズを狙って届けるニッチブランド!? ニッチブランドの企画からプロモーション、流通まで──新しいヒットの仕組みを徹底解説! ●なぜ…

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