前回は、ECサイトのデータ収集に使えるマーケティングツールの例について取り上げましました。今回は、マーケティングツールのひとつである「Nint」を例に、どのように競合分析をするのか見ていきます。

マーケティングツール「Nint」がもつ7つの機能とは?

前回の続きです。

 

これらのツールやシステム等を使って、具体的にどのようなマーケティング分析が行えるのか、Nint(ニント)を例にして簡単に説明しておきましょう。

 

先に触れたNint ECommerceには次のような(1)から(7)の機能が備わっています。

 

 

(1)業種分析

楽天市場におけるマーケットの把握と市場での上位ショップや人気商品の分析

 

(2)ショップ分析

競合ショップや注目ショップの売上状況や商品施策などの分析

 

(3)商品分析

商品単位での売上、施策の分析

 

(4)広告分析

競合ショップや注目ショップの広告、サーチワード、ポイントなどの施策の分析

 

(5)過去広告

過去にさかのぼっての広告分析

 

(6)ECドクター

販売ジャンルが似たショップグループのデータから、自ショップの売上規模や広告・企画の頻度などを客観的に診断し適切な施策を探る機能

 

(7)SEO分析

楽天市場内の検索順位分析

ブランド化を検討している商品の関連キーワードを検索

以下では、主として(2)の機能を使って競合分析を行ってみます。

 

まずはブランド化を検討している商品の関連キーワードで検索をかけてみます。たとえば美白効果をもつといわれている天然成分の「ハイドロキノン」を使った商品の開発を考えているとしましょう。

 

「ハイドロキノン」で検索してみると―楽天市場で現在「ハイドロキノン」のワードを商品名にして売られているものが、その販売店(ショップ名)等とともにリストアップされます(図表参照)。具体的には、以下のような項目に関するデータが表示されます。

 

①商品名

②ショップ名

③ジャンル

④価格

⑤送料

⑥ポイント

⑦最近7日売上指数(千円)

⑧最近14日売上指数(千円)

⑨最近30日売上指数(千円)

⑩レビュー数

⑪商品評価

⑫追加済み数

 

これらのデータから、「『ハイドロキノン』を使った商品には今現在どのようなものがあるのか」「それらの競合商品がどのようなショップでどのジャンルで売られているのか」「送料は込みにしているのかそれとも別にしているのか」「ポイントは何倍にしているのか、どの程度の売上が得られているのか」「競合商品は消費者からどのような評価を獲得しているのか」などの情報を得ることができます。そして、これらの入手した情報をもとに、商品化の可能性を以下のように慎重に判断していきます。

 

「競合商品は少ないようだから、製品化すれば結構な売上を見込めるかもしれない」

「○○円の価格付けで月○○個売れているのであれば、市場で○%のシェアをとることができれば十分ビジネスになるだろう」

「○○円で販売しているショップの売上げがよいので、うちで売る場合にもその価格帯にあわせなければならないだろう。しかし、利益を得るためにはぎりぎりの値段になってしまう。そこから値下げをするのは苦しい・・・十分な利益をとれる商品ではないからやめようか」

 

 

なお、このハイドロキノンの成分を使った商品は実際に私のグループ会社で開発され、「プラスナノHQ」という名称で販売されています。

 

[図表]Nint

ストーリー性とともに「信頼性」への配慮も必要

以上のようなマーケティングを行っていく中で、開発するブランドのかたち、ターゲット層、そしてそのターゲット層の興味・関心を引くために必要となるストーリーが明確になっていきます。

 

例えば、前述した「HMB100」は、商品コンセプトの初期の段階では、ターゲットのイメージは単に「ムキムキの筋肉をつけたい人」程度のものにすぎませんでした。

 

しかし、そのような人達を対象とした競合商品は、プロテインをはじめ山のようにあります。そこでニーズをより絞り込んでいく中で、「筋肉ムキムキにはなりたくないが、ウォーキング等をしながらお腹をスリムにしたい」と思っている30代、40代の女性がターゲット層として浮かび上がってきました。

 

一方で、HMBの成分には筋力低下を防ぐ効能も認められていたことから、「年をとってからも自分の足でしっかりと歩きたい、そのために筋肉を維持したい」というニーズのある50代、60代の世代もターゲットにできるのではないかという意見も社内ではあがりました。

 

ただ、その後、マーケティング活動を続ける過程で、大手通販会社が50代、60代を対象にした同趣旨の商品の開発を進めているとの情報が伝わってきたため「大手を相手に勝負するのは分が悪い」となり、ターゲットはやはり30代、40代の女性に絞ることにしました。

 

こうして「女性は『しなやかに』。美ボディ」をメッセージとする「HMB100」のブランドストーリーが具体化していったのです。

 

ニッチブランドの設計においては、〝ストーリー性〟とともに〝信頼性〟への配慮も求められることになります。すなわち、「そのストーリーは本当に存在するのか」というストーリーの信憑性に関して、顧客に十分な納得感を与えることが必要になります。

 

信頼性を得るための具体的な手段としては、まずその裏付けとなるしっかりとしたエビデンス(根拠)を用意することがあげられるでしょう。

 

たとえば、先ほど触れた家庭用毛玉予防スプレー「undeg(アンデグ)」の場合には、「本当に毛玉ができないのか」を実証するために、ニットやウールはもちろん通常のセーターでは使われていないような多種多様な素材も対象にしたテストを行いました。

 

また、「商品開発の際に専門家の協力を得る」「信頼できる販路で販売する」ことなども信頼性を得るための有効な方法となるでしょう。

 

さらに、業界の権威と認められている人に使われている実績やメディアでの積極的な露出も信頼度を高めるうえで効果があります。

 

また、第13回以降に取り上げる販売後のプロモーションとも重なってきますが「口コミ」や「ランキング獲得」で世間の評価を得ることも、ブランドの信頼性を維持するうえで大きなプラスとなるはずです。

ニッチブランド革命 デジタルマーケティング時代のヒットの法則

ニッチブランド革命 デジタルマーケティング時代のヒットの法則

山口 恵市

幻冬舎メディアコンサルティング

好きなものを「つくって広めたい」が現実に! これからの市場を支配するのは、小さなニーズを狙って届けるニッチブランド!? ニッチブランドの企画からプロモーション、流通まで──新しいヒットの仕組みを徹底解説! ●なぜ…

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