ブランドに関わるデザインは一貫したストーリーが必要
パッケージ、カタログ、ウェブサイト等々、ブランドにかかわる全てのデザインは、その核となるストーリーを一貫して表現したものとなっていなければなりません。そのためには、デザインにかかわるデザイナーやスタッフ全員が、ストーリーについて深く理解していることが必要になります。
ちなみに私の会社では、自社開発するブランドのデザインについては、パッケージ、ウェブサイトはもちろん広告まで全てを内製化しています。これまでの経験から、外部の人に依頼してしまうと、どうしても作業スピードの遅れなどが出てきてしまうからです。
もっとも、「ブランドデザインは絶対に自分たちで全て行うべき」と決めつけているわけではありません。デザインを外注することによって、ブランドのストーリー性が生み出されるケースも考えられるからです。「現代美術の巨匠○○がデザインした△△」などという商品はその典型例といえるでしょう。
ブランド開発のプロセスにも、知的財産権への目配りを
ブランド開発のプロセスでは、知的財産権への目配りも必要になります。知的な創造活動によってつくられたものは、知的財産として法律上の権利を与えられ、保護を受けることができます。このような知的財産の権利(知的財産権)を守る仕組みを知的財産権制度といいます。
ニッチブランドも、それを開発した者の知的創造活動によって生み出されたものであるため、知的財産権が認められる可能性があります。具体的には、以下のような権利が発生する場合があります。
①特許権
比較的程度の高い新しい技術的アイデア(発明)が保護の対象になる。「物」「方法」「物の生産方法」という3つのタイプがある。保護期間は出願の日から20年。
②実用新案権
物品の形状、構造または組み合わせにかかわる考案が保護される。保護期間は出願の日から10年。
③意匠権
形状や模様など、物のデザイン(意匠)が保護の対象になる。保護期間は登録の日から20年。
④商標権
自己が取り扱う商品・サービスと、他者が取り扱う商品・サービスとを区別するマーク等の営業標識(商標)が保護される。保護期間は登録の日から10年(更新が可能)。
これらの他にも、商品によっては著作権、回路配置利用権、育成者権などの知的財産権が発生するケースがあります。いずれの権利についても、発生する要件については法律で定められているので、その要件を満たすことが知的財産権として保護を受けるための大前提になります。特に右にあげた4つの権利は、獲得するために「申請」もしくは「登録」の手続きが必要になるので注意してください。
ことに特許権、商標権に関しては、将来海外での販売を予定しているのであれば、国際商標の申請も同時に行うことをおすすめします。海外販売を行おうとしたときに、万が一、現地で別の第三者によって特許権や商標権が取得されてしまっていると、その権利者にライセンス料(権利の使用料)を支払わなければならなくなるかもしれません。とりわけ中国には、ライセンス料目当てに楽天市場等の大手ECモールで露出しているような商品の商標を片っ端から登録する業者も存在します(私の会社のブランドの中にも知らないうちに中国で商標登録されていたものがありました)。
そのような業者から不当にライセンス料を要求されないようにするためにも、知的財産権の取り扱いに関してはグローバルな視点をもつことが不可欠となるのです。
また、ブランドの全体設計を進める中では「3カ年計画」も策定します。これは、3年間で達成する売上や利益等の目標をまとめたもので、いわばブランドの事業計画になります。
たとえば、Aというブランドを立ち上げて3年後に3億円の売上を計上することを目標として掲げた場合、まずはじめに行うのは1年目の売上目標の設定になります。
ここで「Aの発売1年後の売上を1億円にする」という目標を立てたとしましょう。その際、売上の内訳についても以下のように流通販路ごとに具体的に定めます。
●楽天市場で2000万円
●自社サイトで2000万円
●リアル店舗(日本)の流通で4000万円
●海外の流通で2000万円
そして、それぞれの販路で売上目標を達成するために必要な顧客数とその顧客を獲得するためにかかる広告費を計算します。具体的に述べると、「楽天市場と自社サイトそれぞれで2000万円の売上をあげるためには、両サイトで新規客100人、リピート客100人を獲得しなければならない」と考えた場合、新規客を集めるためには広告を使わなければなりません。そこで「どのような広告を利用するのか」を検討する場合、候補としてはリスティング広告、インスタ広告、フェイスブック広告などがあがるでしょう。新規客100人で1000万円の売上を獲得することを前提にした場合、広告費にはおそらく200万円程度はかけられるはずです。その200万円を、「リスティング広告に○○万円、インスタ広告に○○万円、フェイスブック広告に○○万円・・・」などというように割り振っていきます。
この広告予算の割り振りを行う際には、CPAとLTVの観念をしっかりともっておくことが必要になります。
広告予算の割り振りに必須な観念、CPAとLTVとは?
CPAとはCost Per Action(Acquisition)(コスト・パー・アクション)の略で、広告単位の指標であり、顧客獲得(acquisition)について一人あたりの支払額、または、何らかの成果(action)や問い合わせ(Inquiry)一件あたりの支払額を示します。
つまり、商品の販売においては、利益となる成果1件を獲得するために要した費用のことです。「顧客獲得単価」ともよばれ、総コストを成果獲得数(コンバージョン)で割ることによって導き出されます。たとえば、月間20万円の広告費をかけて40件の成約を得た場合には、「20万円÷40件」の計算式から、CPAは5000円となります。このようなCPAの数字をもとにして各広告にどれだけの費用をかけるのが適切なのかを判断していくことになります。
LTVとは、Life Time Value(ライフ タイム バリュー)の略で、「顧客生涯価値」を指します。一人、あるいは一社の顧客が、特定の企業やブランドと取り引きを始めてから終わるまでの期間(顧客ライフサイクル)内にどれだけの利益をもたらすのかを算出したものです。
つまり、販売者側と顧客の取り引きが継続的に行われることによって、顧客からもたらされる利益を指します。
このようなLTVの観点からは、顧客の満足度を高めてリピート率を上げるためにはどのような広告に優先的に予算を割り当てるべきかを検討することが求められます。こうした広告効果を考慮しながら必要な広告費を算出し、売上とともに3カ年計画にまとめていくことになるのです。