データ収集の際には、できるだけ直近の情報を
前回の続きです。
まず、①国内外リアル店舗からです。
国内のリアル店舗、国外のリアル店舗いずれに関してもブランドのジャンルに応じて調査対象等は異なってきます。たとえば、美容関係のブランドを開発するのであれば、美容整形や皮膚科などのクリニックに通っている患者にはどのようなニーズがあり、そのニーズに対してどのような施術が行われているのかを調べます。
調査の結果、「シミを取りたい」「たるんだ肌を改善したい」というニーズをもっている人たちが多いことが分かったとします。そしてさらに、そうしたニーズに応えるために、シミを取りたいと望んでいる人に対しては「光をあててシミを取る」施術が、たるんだ肌の改善を求めている人に対しては「皮膚の奥にあるコラーゲンを生成させるために光をあてる」もしくは「糸を入れてぎゅーっとひっぱりあげる」「ヒアルロン酸を入れてハリを保つ」などの施術が行われていることが判明しました。
そこで、「そうしたクリニックの施術と同様の効果を実現できる化粧品、サプリメント、美容機器を開発することはできないだろうか」などと検討しながら、新しい美容ブランド創出の可能性を探っていくわけです。
なお、国内外のリアル店舗を対象とする場合に限りませんが、マーケティング調査でデータを収集する際には、できるだけ直近の情報を集めることが大切になります。半年前、3カ月以上前のデータを集めても、その間に市場のトレンドが変わってしまえばそのほとんどは無意味なものになり、役に立たなくなるおそれがあります。
それから、一般論として、データを集める際には市場価格の動きにも注意を払わなければなりません。
たとえば、市場規模が10億円のA商品に類似したB商品の開発を考えているようなケースで、半年間の間に市場規模は変わらないものの、A商品の市場価格が20%も下落するような状況となった場合には、今さらB商品を開発しても十分な利益を得られないおそれがあります。
ネット上の市場調査で重要な「キーワード検索」
インターネット上のマーケティング調査としては、前述のように②ウェブ、③各ECモール、④各アプリがあげられます。
まず、②ウェブのマーケティングについては、開発を検討しているブランドに関連するキーワードで検索をかけてみてニーズを探るところから始めます。具体的には「検索ヒット件数」「月間検索ボリューム」「広告競合性」「CPC(クリック単価)目安」―等々をデータとして把握することになります。
これらのデータの中でとりわけ重要となるのは「月間検索ボリューム」です。月間検索件数が100程度しかないものはニーズがほとんどないと考えられるので、商品化してもビジネスとして成り立ちません。ニッチなニーズを狙うにしても、やはり利益が出るか出ないかは慎重に検討することが必要になります。
たとえば、私の会社では「HMB100」という筋肉を維持促進するサプリを開発したことがあります。筋肉維持促進機能をもつ「HMBカルシウム」が海外で話題となったときにいち早く商品化を図り、実現したものです。
「HMB」で検索をかけてみても、当初は月間検索件数が100~200程度しかありませんでした。しかし、複数のメディアで取り上げられ、医師等の専門家が効果を実証するエビデンスを発表するなどの動きが現れた中でしだいに注目を集め始め、検索件数は大きく増えていきました。そこで、「これならいけるだろう」と開発を決めたのです。
また、このキーワード検索を行う際には、さらに別の言葉を組み合わせることによりニーズを絞り込んでいく作業も行います。「HMB」であれば「トレーニング」「プロテイン」「筋肉」「マッチョ」「サプリ」「効果」「筋トレ」「パウダー」「ビルドマッスル」などのワードとともに検索をかけて、どの組み合わせが最も検索ヒット件数が多いのかなどを確認・分析しました。
次に、③楽天市場やYahoo!ショッピングなどの各ECモール内でも、このようなキーワード検索を実施します。モールに用意されている検索エンジンはECの利用者を対象者としているため、GoogleやYahoo!のような一般的な検索エンジンを利用する場合に比べて、より消費市場の実情に即したニーズをとらえることが可能となります。
さらに、ECを展開している小売り企業、とりわけ大手企業の多くは顧客の利便性を図り④専用のアプリを用意しています。そのようなEC利用者向けのアプリでも、同様のマーケティングを行います。
なお、私の会社では越境ECを手がけているため、日本だけでなく海外のECサイトもマーケティング調査の対象としています。
たとえば、アマゾンで「現在、何が売れているのか」を調査するような場合には、日本のアマゾン(アマゾンジャパン)のほかに、アメリカのアマゾンにも目を通します。日本と同様、アメリカのアマゾンにも売れ筋商品をランキング形式でまとめた「アマゾンランキング」があります。それを眺めているだけでも「○○の商品が売れているのか。それならば、これに××の機能を加えた商品を開発して日本で販売すればヒットするかもしれない」などというように、新たなブランド創出につながる様々な気づきを得ることが期待できるのです。