前回は、中小企業の採用活動に「ブランディング」を導入するメリットを解説しました。今回は、ブランディングで採用活動をグロースハックしていく方法を紹介します。

応募者は「未来の社員」であるというブランド戦略

ブランディングの実践にあたってとても重要なのは、ブランド・ビジョンを持つことです。これを従業員の行動とプロモーション双方で貫くことが、ブランド構築につながります。

 

アーカー氏は『ブランド優位の戦略』(ダイヤモンド社)において、ブランド・ビジョンを「ブランド戦略策定者が創造したり維持したりしたいと思うブランド連想のユニークな集合である。この連想はブランドが何を表しているかを示し、また組織の構成員が顧客に与える約束を意味する」と定義し、それらを「戦略策定者はブランドをどのように知覚されたいと思っているか」と短く端的に言い換えてもいます。

 

しかし、先述した通りファンが増えていくことで強い「ブランド」になるということを考えると、そこに顧客の存在を無視することはできません。つまり、アーカー氏の定義したブランド・ビジョンをより進化させた形は、次の通りに定義することができます。

 

〝ブランド戦略策定者がブランドを通して顧客とともに実現したい未来であり、そのためのありたいブランドの姿であり、顧客への宣言・約束である〟

 

長い言葉で定義しましたが、大切なのは「顧客とともに実現する」という姿勢です。採用ブランディングの場合の顧客とはつまり、応募者のことです。企業の目的(理念)を未来の社員と実現していくこと。その考え方が採用では重要です。

社員が熟練しながら、会社の認知度も上がっていく

ここで改めて、MOSEALSモデルの流れを確認しておきましょう。

 

●MOSEALSモデル

Meet(出会う)→Move(心が動く)→Search(調べる)→Experience(体験する)→Action(選考参加)→Love(ファンになる)→Share(人に伝える)

 

採用ブランディングが継続的な成果を生みだすための秘訣は、ファンの獲得にあります。ブランドを人であると捉えれば、ターゲットに「どんな信念・特徴を持つ人なのか」が伝わらなければ、理解も深まらず、ファンになりようもありません。「ブランド・ビジョン」とは、まさにそのブランドを定義する骨格そのものなのです。

 

これを採用市場に応用すると、先述してきた採用フローを貫く「コンセプト」そのものになります。採用市場において、自社がどう見られたいのか。応募者とともに、どんな未来をつくりたいのかを定義することが重要です。「採用市場で、応募者とともにどんな未来をつくりたいのか」は非常に難しい問いかもしれません。しかし、それは例えば「業界全体の知名度を上げる」でもいいですし、地方の企業なら、「その地方の素晴らしさを伝え、ファンになってもらう」でもいいでしょう。

 

アーカー氏はブランド・ビジョンに関して、「いま達成していないことでもいい」と言及しています。重要なのは、自分たちが「どうしたいのか」なのです。ブランディングの重要な視点は、ここにあります。決して「何が正しいか」ではありません。

 

採用市場の特徴は、すでに応募者が存在し、その応募者が定期的に回転していくという点です。そのため、ブランド・ビジョンに裏付けされた採用ブランディングを実践していれば、社内の採用活動の熟練度も上がると同時に、採用市場でも徐々に認知されるようになり、毎年のように成果を得られるようになります。

「無名×中小企業」でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング

「無名×中小企業」でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング

深澤 了

幻冬舎メディアコンサルティング

人材採用に悩む「経営者&人事担当者」必読! 志望度の高い応募者を集める「効率的な採用方法」とは? ターゲットから選ばれる企業になるための革新的な「採用方法」を徹底解説します。

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