今回は、不動産の「公正価値」を求める具体的な手順を見ていきます。※本連載はジブラルタ生命保険株式会社勤務、冨島佑允氏の著書、『投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門 プライシング・ポートフォリオ・リスク管理』(CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、株や債券、事業や不動産などの「本来の価値」を推定するプライシング理論について解説します。

不動産の評価額は「キャップレート」を用いて計算

不動産の評価額も、株式と同じような方法で計算することができます。不動産も株式と同様に、“満期”というものがありません。そのため、将来キャッシュフローが際限なく続く場合の公式が使えます。

 

不動産の場合、将来キャッシュフローは何かというと、不動産投資の純利益です。純利益とは、例えばマンションの場合なら、家賃収入から管理費などのコストを引いた、純粋な儲けの部分のことです。期待収益率は、不動産投資の世界ではキャップレートと呼ばれています。これは英語のCapitalization rateを略したもので、還元利回りとも呼ばれます。不動産評価額は、純利益とキャップレートを用いて以下のように計算できます。

 

 

例えば、年間1億円の純利益が見込めて、キャップレートが7%の不動産の評価額は、以下の通り14.3億円となります。

キャップレートの水準は他の物件との比較で決定

計算に用いるキャップレートの水準を決める際は、すでに市場に出回っている、似たような条件の他の物件と比較します。

 

例えば、築年数や駅までの距離等の条件が似ていて、年間の純利益が推定2.5億円のマンションが33.8億円で売られていたとすると、そのマンションのキャップレートは2.5億円÷33.8億円=7.4%と逆算できます。そのようにして、似たような条件の複数の物件のキャップレートを逆算して、それらの値を参考にしてキャップレートの水準を決めるのです。

投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門

投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門

冨島 佑允

株式会社CCCメディアハウス

投資に使える! 金融がわかる! これから始める人でもファイナンス理論の“あの独特な考え方”が一から理解できるように、資産運用に携わってきた金融のプロが 1.プライシング理論(“本来の価値”をどうやって求めるか?…

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