資産を将来CFの系列に置き換え、割高・割安を判断
本連載で見てきたように、プライシング理論においては、資産を将来キャッシュフローの系列に置き換えることで公正価値を計算し、割高・割安を判断します。本連載ではいくつかの資産について具体的な計算例を示しましたが、他の資産についても、基本的には同様の手順で公正価値を求めることができます。
DCF法は幅広い応用が利く便利な手法ですが、期待収益率の値や継続価値の推計値に結果が大きく左右される側面もあるため、計算前提を丁寧に吟味し、場合によってはいくつかの異なる前提を用意して計算結果を比較するなどした方がよいでしょう。
「金融派生商品」のプライシング理論も重要
補足になりますが、プライシング理論において重要な位置を占めるものの一つとして、金融派生商品のプライシング理論があります。
金融派生商品とは、株や債券などの伝統的な金融商品から派生的に生み出された金融商品のことです。株式コールオプションなどがその一例です。株式コールオプションは、基準となる株価(ストライク価格)を定めて、満期時点で実際の株価がそれを上回った場合、ストライク価格との差額分だけお金を支払うという契約です。
例えば、ストライク価格19,000円の日経平均コールオプションで、オプション満期1年の場合、1年後の日経平均が22,000円になれば、差額の3,000円(22,000円-19,000円)が支払われます。一方、1年後の日経平均が18,000円など、ストライク価格を下回った場合は、1円も支払われません。このように、株式コールオプションは、株式マーケットから派生的に生まれた金融商品です。
他にも様々な金融派生商品があるのですが、金融派生商品の公正価値を求めるためには、確率微分方程式などの高度な数学が必要になるため、本書では触れていません。けれども、将来キャッシュフローを推定し、割引現在価値を計算するという基本方針は同じです。