資産の公正価値を計算する「プライシング理論」

今回は、「プライシング理論」の総括について述べていきます。※本連載はジブラルタ生命保険株式会社勤務、冨島佑允氏の著書、『投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門 プライシング・ポートフォリオ・リスク管理』(CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、株や債券、事業や不動産などの「本来の価値」を推定するプライシング理論について解説します。

資産を将来CFの系列に置き換え、割高・割安を判断

本連載で見てきたように、プライシング理論においては、資産を将来キャッシュフローの系列に置き換えることで公正価値を計算し、割高・割安を判断します。本連載ではいくつかの資産について具体的な計算例を示しましたが、他の資産についても、基本的には同様の手順で公正価値を求めることができます。

 

DCF法は幅広い応用が利く便利な手法ですが、期待収益率の値や継続価値の推計値に結果が大きく左右される側面もあるため、計算前提を丁寧に吟味し、場合によってはいくつかの異なる前提を用意して計算結果を比較するなどした方がよいでしょう。

「金融派生商品」のプライシング理論も重要

補足になりますが、プライシング理論において重要な位置を占めるものの一つとして、金融派生商品のプライシング理論があります。

 

金融派生商品とは、株や債券などの伝統的な金融商品から派生的に生み出された金融商品のことです。株式コールオプションなどがその一例です。株式コールオプションは、基準となる株価(ストライク価格)を定めて、満期時点で実際の株価がそれを上回った場合、ストライク価格との差額分だけお金を支払うという契約です。

 

例えば、ストライク価格19,000円の日経平均コールオプションで、オプション満期1年の場合、1年後の日経平均が22,000円になれば、差額の3,000円(22,000円-19,000円)が支払われます。一方、1年後の日経平均が18,000円など、ストライク価格を下回った場合は、1円も支払われません。このように、株式コールオプションは、株式マーケットから派生的に生まれた金融商品です。

 

他にも様々な金融派生商品があるのですが、金融派生商品の公正価値を求めるためには、確率微分方程式などの高度な数学が必要になるため、本書では触れていません。けれども、将来キャッシュフローを推定し、割引現在価値を計算するという基本方針は同じです。

外資系生命保険会社の運用担当 

1982年福岡生まれ。外資系生命保険会社の運用部門に勤務。京都大学理学部・東京大学大学院理学系研究科卒(素粒子物理学専攻)。
大学院時代は世界最大の素粒子実験プロジェクトの研究員として活躍。その後メガバンクにクオンツ(金融工学を駆使する専門職)として採用され、信用デリバティブや日本国債・日本株の運用を担当し、ニューヨークでヘッジファンドのマネージャーを経験。2016年に転職し、現職では10兆円を超える資産の運用に携わる。
欧米文化に親しんだ国際的な金融マンであると同時に、科学や哲学における最先端の動向にも精通している。著書に『「大数の法則」がわかれば、世の中のすべてがわかる!』(ウェッジ刊)がある。

著者紹介

連載資産運用の基礎知識――投資対象の価値を見極める「プライシング理論」

投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門

投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門

冨島 佑允

株式会社CCCメディアハウス

投資に使える! 金融がわかる! これから始める人でもファイナンス理論の“あの独特な考え方”が一から理解できるように、資産運用に携わってきた金融のプロが 1.プライシング理論(“本来の価値”をどうやって求めるか?…

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