将来CFが推定できない場合の「公正価値」を求める手順①

今回は、将来キャッシュフローが推定できない場合の公正価値を求める手順を見ていきます。※本連載はジブラルタ生命保険株式会社勤務、冨島佑允氏の著書、『投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門 プライシング・ポートフォリオ・リスク管理』(CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、株や債券、事業や不動産などの「本来の価値」を推定するプライシング理論について解説します。

単純な方法で割高・割安を判断する「マルチプル法」

DCF法について紹介してきましたが、この方法も万能ではなく、DCF法が使えない場合もあります。どういうときかと言うと、将来キャッシュフローがうまく推定できないときです。例えば、株式の配当額をしょっちゅう変更する企業もあります。その場合は、将来の配当額が予測しづらいので、DCF法は向いていないと言えます。

 

そのような場合には、マルチプル法という、より単純な方法で割高・割安を判断することがよく行われます。マルチプル法は、DCF法のように公正価値を求めるのではなく、相対的な比較をもとに割高・割安を判断します。

株式の場合によく使う「株価収益率」「株価純資産倍率」

例えば株式の場合、よく使われるのは株価収益率です。これは、株価を企業の一株当たり当期純利益※で割ったもので、株価が純利益の何倍の価格で取引されているかを表しています。英語ではPrice Earnings Ratioと表記するので、その頭文字を取ってPERとも呼ばれます。

※一株当たり当期純利益とは、普通株式に係る当期純利益を普通株式の期中平均株式数で割ったもの。

 

 

PERの低い銘柄は、企業が高い収益を上げているのに株価に反映されていない、つまり、割安と考えることができます。逆にPERが高い銘柄は、収益のわりに株が買われすぎている、つまり、割高ということになります。実際に投資判断に用いるときは、同業種の他銘柄と比較したり、その銘柄の過去のPERの水準と比較するなどして、相対的な割安・割高を判断するための材料とするわけです。このようにして、比率(マルチプル)を用いて判断することから、マルチプル法と呼ばれています。

 

他によく使われるものとしては、株価純資産倍率があります。これは、株価を財務会計上の一株当たり純資産※の額で割ったもので、英語表記PriceBook-valueRatioの頭文字をとってPBRとも呼ばれます。

※一株当たり純資産とは、普通株式に係る純資産を普通株式の期中平均株式数で割ったもの。

 

 

PBRは、財務会計上の株主価値である純資産と比べて株価がどれくらい評価されているかを見ているので、PBRが高い銘柄ほど割高、低い銘柄ほど割安ということになります。

 

マルチプル法は、株式以外の資産にも用いられています。例えばM&Aの世界では、株価倍率法が良く用いられます(類似会社比較法とも呼ばれます)。この方法では、企業価値と企業収益の比率を計算し、それを同業他社などの類似会社と比較することで割高・割安を判断します。

外資系生命保険会社の運用担当 

1982年福岡生まれ。外資系生命保険会社の運用部門に勤務。京都大学理学部・東京大学大学院理学系研究科卒(素粒子物理学専攻)。
大学院時代は世界最大の素粒子実験プロジェクトの研究員として活躍。その後メガバンクにクオンツ(金融工学を駆使する専門職)として採用され、信用デリバティブや日本国債・日本株の運用を担当し、ニューヨークでヘッジファンドのマネージャーを経験。2016年に転職し、現職では10兆円を超える資産の運用に携わる。
欧米文化に親しんだ国際的な金融マンであると同時に、科学や哲学における最先端の動向にも精通している。著書に『「大数の法則」がわかれば、世の中のすべてがわかる!』(ウェッジ刊)がある。

著者紹介

連載資産運用の基礎知識――投資対象の価値を見極める「プライシング理論」

投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門

投資と金融がわかりたい人のためのファイナンス理論入門

冨島 佑允

株式会社CCCメディアハウス

投資に使える! 金融がわかる! これから始める人でもファイナンス理論の“あの独特な考え方”が一から理解できるように、資産運用に携わってきた金融のプロが 1.プライシング理論(“本来の価値”をどうやって求めるか?…

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