前回に引き続き、平成に銀行から提供された商品・サービスと、それに手を出したことで泣きを見た中小企業の実情を見ていきましょう。今回は、「事業承継対策融資の拡大」について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

2011年から急拡大する「事業承継対策」関連の融資

だましファイル⑦「事業承継対策融資の拡大」

 

2006年、一般社団法人の設立が緩和され、

2010年、国よる事業承継税制が始まりました。

これらを受けて、2011年から急拡大しているのが、

事業承継対策に関連する融資です。

 

「一般社団法人を作って、そちらへ株式を移してはいかがでしょうか?」

「持ち株会社を作って、そちらへ株式を移してはいかがでしょうか?」

というものです。

銀行員育成用のセールストークマニュアル本にも、

この2項目は、事業承継対応の筆頭項目として、

登場するのです。

で、新設した社団法人や持株会社に、

株式の買い取り資金を融資しますよ、

というパターンです。

 

しかし、今年度の税制改正で、

一般社団法人の対策が、網をかけられたのは、

皆さんご存知のとおりです。

その場限りの融資獲得しか考えていない銀行員

それに、私たちが疑問を感じていたのは、

社団法人や持ち株会社が大きな借入をして、

どうやって返済していくんだ、ということです。

「配当で返していきます。」

と言われます。

しかし、長い期間で考えたとき、

配当を出し続けられるのか? という疑問が残ります。

 

早い話、オーナーの手元から株式が離れるものの、

根本解決は先送りなのです。

 

5年後、10年後、銀行の担当者は変わっています。

その時に、業績が悪化して配当では支払えない状況になって、

「今回は配当が出せないので返済を待ってほしい。」

などといっても、通るはずがありません。

 

今回の一般社団法人のように、税制も変わります。

それを言ったところで、

 

「当時の企画書には、現時点の税制において有効、

 と書いてあったはずです。」

 

と返され、何の対応もしてくれないのです。

銀行は、やり始めたら、各銀行が足並みをそろえ、

スキームをパッケージ化して、拡大販売してゆきます。

事業承継対策で、そんな拡大販売などされると、

お上の目に付き、網を掛けられるのは当然なのです。

 

結局、その場限りで融資を獲得することしか、

銀行担当者は頭にないのです。

そのような銀行に、事業承継の対策を委ねるのは、

危険極まりないのです。

 

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本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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