今回は、改正された事業承継税制の「安易な運用」を控えるべき理由を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

見直しはされたものの、あくまでも「期限付き」

使い勝手が悪い! と言われていた事業承継税制に、

10年間の期限付きで、見直しがされました。

納税猶予の条件であった、8割の雇用制限を緩和するなど、

見なおされた点がいくつかあります。

 

身近な税理士先生にも、

「事業承継税制が改正されて、今がチャンスですよ。」

等と勧めてくる方が出てくると思います。

それでも、やはり、

この税制を安易には運用したくないのです。

 

雇用制限が緩和されたというものの、承認が必要です。

と、あくまでも猶予であり、すぐに免除されるわけではないのです。

猶予解除の爆弾を抱えたままになります。

この制度を選択すると後戻りはできず、他の手が打てなくなります。

当然、恩恵を前提にした制度なので、毎年の資料提出を伴います。

活用しなくてすむなら、それに越したことはない

どうも私には、

通りゃんせ通りゃんせ、と誘い込んでいるように思えるのです。

♪通りゃんせ 通りゃんせ

 ここはどこの細道じゃ 国税様の細道じゃ

 そぉっと通してくだしゃんせ ご用のないもの通しゃせぬ

 このこの社長のお祝いに お株を納めにまいります

 行きはよいよい 帰りはこわい

 こわいながらも通りゃんせ 通りゃんせ♪

 

つまり、

行きはよいよい帰りはこわい、の天神戦法ではなかろうか、

という気がしてしかたがないのです。

入口を広くして誘い込んでおきながら、時間の経過のなかで、

出口を小さくしてゆくのではないか、という危険を感じるのです。

 

何より、この税制を活用しなくとも、

高額退職金支給や種類株式活用で、

株価対策や株式対策が実現できるなら、それが何よりです。

時の経過を待たずして、解決できるのですから。

 

「しかし、この税制を使えば、コストがかからないですよ。」

とおっしゃる方が出てきます。

タダほど高いものはない、ということを、

その気になっているときは、忘れてしまうものなのです。

勧められたからと安易に飛びつかず、

踏みとどまって考え直してほしいのです。

 

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本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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