2018年に入っても不動産投資状況の「一服感」は続く
第14回で掲載した、2017年上半期の不動産市況でも解説したとおり、ベトナム人の不動産投資状況は一服感があるとお伝えしましたが、2018年に入ってもまだ、その傾向は続いています。一時期のように、手当たり次第購入するといった流れはなく、より条件の良い物件をじっくり見定めて購入しており、踊場を迎えている状況です。
購入の仕方も二通りあります。一つは、今までのように新規プロジェクトを狙っての購入、もう一つは、すでに販売済みのコンドミニアムや戸建ての転売物件(中古物件)購入です。特に現在は、後者が活発に行われており、新規でのプロジェクトは低迷気味です。
ベトナム側が捉えている、新規プロジェクト低迷の理由はいくつかありますが、最も多いのが「魅力的な新規プロジェクトが少ない」「魅力的なプロジェクトとして求められていない」というものです。
①販売価格
ハイクラス物件の売り出し価格が、2016年度の同ハイクラスタイプと比べ、20%~40%程アップ。現在時点では、売出しを行っているハイクラス転売物件(中古物件)と比べて差がない。
②立地
2015年、16年時に比べると、中心地でのハイクラス物件が減少。建築原材料の高騰や大型開発用地の確保などが難しく、郊外での開発が増え、ベトナム人的には住居や投資用としての魅力が落ちている。逆に、ミドル層やロークラス用のコンドミニアムや戸建ての投資物件購入は増えている。
③納期
プレビルド物件引渡までの納期の問題がある。住居用に購入するなら、気に入った物件を選べばよいだけだが、投資用の場合は、すぐに利回りやキャピタルゲインが活かせるコンドミニアムや戸建ての転売物件(中古)に人気があり、将来的な魅力を期待する物件や、VINHOMEのようなブランド物件以外は手を出しづらい状況が続いている。
現在、ベトナム人のハイクラス向けの新規プロジェクトとして、2区Thao Dien地区(メトロ1号線沿線)や、同区AN PHU地区など、古くからの別荘地域の整備が進み、インターナショナルスクールの増設や地元の有名レストランや外資レストランも増え、地域でのブランド強化につながっています。
周辺にも、ハイクラスのコンドミニアムや戸建てがあり、外国人の住居率も伸びているため、新規物件や中古物件の取引が活発です。特に、7区からの韓国人の移転が多く、他には、1区に隣接するBinh Thanh区のCity Garden増設分や、新規ではありませんが、転売物件(中古)としてのVINHOME「CentralPark」「GoldenRiver」なども人気です。
外国人投資家は「はずれ物件」を掴まないよう注意!
日本を含む海外からの投資は引き続き増加しています。2017年の統計では、海外投資家からの新規投資額は約359億USDとなり、2016年に比べて約44.5%の増加です。その中で、不動産投資額は約30億5000万USDで、総投資総額の8.5%に相当します。
先も述べましたように、ベトナム人の新規プロジェクト投資状況は踊場的な展開を迎えていますが、外国人投資家は依然増加しています。しかしながら、外国人購入枠(プロジェクトの内棟の30%)制限のため、ベトナム人が魅力的だと思わない物件までも購入している状況があります。そのため、開発の遅れや客付問題などに影響があり、「はずれ物件」となる可能性は大きいといえます。
特に日本人投資家にこの傾向が強く、自分の目でしっかり現地を視察し情報を集め、踊らされないように投資を判断していくことが重要です。
2018年下半期の展望ですが、ベトナム経済は順調に伸びており、内需も拡大し、海外からの企業や人の流入が増加を続けています。それに伴い、後半には、外国人投資家にとって魅力的なハイクラス、ミドルクラスの大型プロジェクトの販売計画が予定されています。法整備による外国人購入枠を変更する計画(ハイクラスの購入枠を、プロジェクト内、棟の30%→50%)や、外国人が購入した2015年7月以降の物件登記簿(通称ピンクブック)の引渡しも行われ、より多くの転売物件(中古)取引も活発化するでしょう。
ベトナム側も、急激な地価高騰で戸建てを購入できないミドル層が、住居向けに手ごろなコンドミニアムを購入していく傾向がより強くなるなど、2018年後半から末にかけては、踊り場からの脱却が見込まれます。