マイナス金利政策の影響で、銀行は不動産投資を歓迎
株やFXに投資したい人に銀行はお金を貸してくれませんが、不動産に投資したい人には喜んでお金を貸してくれる状況が今のところ続いています。
これは、日本銀行の黒田総裁によって2016年2月に導入されたマイナス金利政策の影響によるところが大きいです。
日本のメガバンク(三菱東京UFJ銀行・みずほ銀行・三井住友銀行)や日本各地の地方銀行は、私たちから預かった預金を運用することで利益を出しています。そして、投資や融資に回していない分のお金を日本銀行に預けています。
マイナス金利政策以前は日本銀行にお金を預けると利息が付きます。この金利が限りなくゼロに近いので、ゼロ金利政策と呼ばれていました。各銀行はその分、顧客に支払う預金金利を下げることで、採算を保っていたのです。
ところが昨年からスタートしたマイナス金利政策では、日本銀行にお金を眠らせるだけで毎年0.1%の金利が取られてしまいます。つまり銀行にとっては、預けているだけでどんどん損をしてしまうのです。
結果として、銀行はお金をできるだけ企業や個人に融資していく方向になります。住宅ローンの金利が下がり、今まで借りられなかった属性の人でも審査が緩和されて借りられる可能性が高くなりました。
定収入のある「サラリーマン」という属性を高く評価
銀行は常に貸出先を探しており、そこで、しっかりした担保物件がある不動産投資の融資に目を付けたのです。
かつての不動産投資といえば、地主や事業で成功したような資産家が主なプレイヤーでしたが、いまやサラリーマンによる不動産投資は一般的になり、銀行も定収入のしっかりあるサラリーマンという「属性」を高く評価するようになりました。
この「属性」は、銀行融資を受けるときに必ず登場する言葉です。
銀行をはじめとした金融機関では融資の審査に際して、申込者個人に関して入手できるさまざまな個人情報を判断材料にします。その個人情報を「属性」と呼びます。具体的にいえば、年齢、年収、職種、勤務先の規模、既婚か未婚に加えて家族構成、住宅ローンの有無(既存の借入の有無)など、あらゆる種類の情報が含まれます。
その基準は金融機関によって変わる部分もありますが、一般的に「高属性」の人のほうが、より条件が良く、より高額の融資を受けられる傾向にあります。
簡単にいえば、独立したての個人事業主や小さな企業の経営者よりも、上場企業のサラリーマンや公務員、士業(医師・弁護士・公認会計士など)のほうが圧倒的に有利なのです。
銀行からすれば、貸し出したお金に金利をつけて返済してもらうことで利益を上げていますから、貸し倒れになることが最大のリスクです。特にマイナス金利以降、ただ日本銀行に預けているだけでは目減りしていくだけですから、銀行は必死で優良な貸出先を探さなければなりません。
そんななかで、属性および物件の担保というダブルでのリスクヘッジができる不動産投資は、非常においしい「貸出先」なのです。担保というのは債務者(借りた人)がお金を返せない事態に備えて受け取る、保証となる財産のことです。万が一、ローン返済が滞ったときには、銀行は担保を売って貸し出したお金を回収します。
サラリーマンであることの社会的な信用性に対して、積極的に貸し出す銀行が増えていることが、今の不動産投資ブームの要因となっています。
このように「マイナス金利政策が続く今だからこそ」という注意点はありますが、サラリーマン投資家が融資を利用しやすいこのタイミングで、効率的にレバレッジをかけられることが不動産投資の大きなメリットです。
他人資本である金融機関のお金を使って自分が欲しい物件を購入できるわけですから、うまく使いこなせれば、これほど素晴らしい仕組みはありません。