前回は、投資用不動産が「生命保険代わり」にもなる理由を説明しました。今回は、不動産投資による所得税の減税にあまりメリットがない理由を見ていきましょう。

「損益通算」による所得の還付が、所得税節税の仕組み

不動産投資のサブメリットとしては節税効果もあげられます。具体的には、不動産を購入することにより、①所得税、②法人税、③相続税の負担を軽減することが可能となります。

 

まず、①所得税の節税効果からみていきましょう。例えば、現在、1000万円の年収があり、所得税を年間で80万円支払っているとしましょう。このような状況で、不動産を購入し、その年に100万円の不動産の赤字経営(不動産収入よりも支出の経費が多い場合)だとすれば、課税所得から100万円が引かれた額が課税対象となります。

 

そして、その税金が60万円になるとしたら、源泉徴収されていた20万円の差額分については還付されることになるわけです。

 

このように、不動産投資の過程で赤字が生じることを前提として、自身の給与所得と不動産の赤字経営を引き算する、損益通算と呼ばれる手法で所得還付を受けるのが所得税節税の仕組みになります。

税金の還付を受けるには「赤字経営」になることが必要

ただ、率直にいえば、こうした所得税節税の効果はそれほど大きなものとはいえません。なぜならば前提条件として「赤字経営」になったうえで所得との損益通算をし、所得を下げなければ税金の環付は受けられないからです。

 

そのメリットを多少享受できるのは、物件を購入してから1〜2年程度です。具体的には、1年目は支払った諸費用分の計上が可能なために、2年目は不動産取得税を支払うために節税効果を得られます。単独で投資用不動産を所有している場合には、せいぜいその程度に過ぎません。したがって、所得税の還付への過度の期待でマンション経営を始めるのは禁物です。

 

仮に現金一括で購入した場合は不動産の収入のほうが経費よりも上回り、給与所得と不動産収入の黒字経営分を足して増税、というのが一般的です。ですから目標達成のあとは増税が通例です。

 

それにも関わらず、「節税対策のために毎年1部屋購入している」という方が多くいますが、もしかしたら、“簡単なマジックにかかってしまっている”のかもしれません。

 

確かに、毎年1部屋ずつ購入していれば、毎年「大きな諸費用の計上」を行うことが可能になるので、損益通算を通じてそれなりの節税効果は期待できます。しかし、「単体で見たときには」決して大きな節税効果はもたらされていません。

 

にもかかわらず、あたかも「税金がずっと戻り続ける」かのような営業トークに誤解しているお客様ケースも多く見受けられるので、ここであえて注意を促しておきたいと思います。

 

また、②法人税の節税については、個人ではなく法人の形で不動産を所有した場合にのみ関係してきます。

 

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本連載は、2017年12月25日刊行の書籍『不動産投資の「勝ち方」が1時間でわかる本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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吉村 拓

幻冬舎メディアコンサルティング

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