今回は、過去1年間の「戸建て転売事業者に対する不動産融資」に関するデータをもとに、米国不動産の市況変化について見ていきましょう。

米国株式相場急落の一因とされる米長期金利の急上昇

前回は、サンフランシスコ・ベイエリアにおける、地球温暖化による慢性的な水没予想地区について説明しました。今回は、戸建て転売事業者に対する、不動産融資に関わる過去1年間の市況変化について見ていきましょう。

 

2月2日に米労働省が発表した1月の雇用統計では、20万人の雇用者増加という予想以上の強い数字が発表される一方、米長期金利の急上昇を嫌気し米株式相場が急落しました。

 

この背景には、昨年9月あたりから長期金利の動向が膠着状況にあります。長短金利のフラット化・イールドギャップの縮小(イールドハンティングの活発化)が顕著だったところに、2018年初から長期金利相場が明らかに上抜けたようです。

 

今後は細心の注意を払い、相場展開にターニングポイントが到来しているかどうか、皆様にはぜひ見極めてほしいところです。

2017年、貸付債権はほぼ100%回収できる環境に

それはさておき、戸建て転売事業向け不動産融資については、連載第33回で説明いたしましたが、昨年末までの戸建て転売事業者向け不動産融資データが収集できましたので、そのイールドハンティングの状況を、カリフォルニア州を中心とした転売事業者向け不動産融資のデータで検証します。まずは下記の図表をご覧ください。

 

 

これは1万件超のデータをベースに、出口価格を評価した担保掛目を基準として、各格付け――大手格付け会社のそれと目線合わせすると、シングルA格からダブルB格に相当と思料。逆に適格格付け相当は上記AおよびBの一部と思料――に分類し、それぞれの格付けで、加重平均ベースの債権利回りと遅延・貸倒れ比率(金額ベース)の、2017年の推移を見てみました。

 

ちなみに、この種の貸付期間は6〜9カ月程度ですので、遅延債権を除けば貸付債権はほぼ入れ替わります。また、カリフォルニア州等担保処分の法的なローカルルールで、デフォルト救済期間がほぼ120日であることから、遅延の基準も120日経過したものを対象としています。

 

また、2017年は西海岸を中心に住宅価格が上昇継続した関係で、貸付債権が担保処分する状況になっても、貸付債権はほぼ100%回収できる環境でした。

 

時系列的にみると、まず不動産担保債権利回りが過去1年間で、連銀政策金利が上昇したものの、1.5%から2.0%近く低下していること(イールドギャップの縮小)。一方、遅延比率についても、過去1年間大幅に良化していることが分かると思います。

 

遅延が減少しているとはいってもリスクが低下しているとは言いきれないので、利回りを求めた投資家(イールドハンター)が、商業銀行が融資をしない領域に入り、利回りを押し下げていると言っても良いでしょう。

 

この傾向が強まったバックグランドは、やはり米国西海岸を中心とした住宅価格上昇の継続にあると言えます。

 

ちなみに、戸建て転売事業者向け不動産融資では、担保掛目75%以上の件数も増加傾向にあるのですが、ここではサンプル数が極端に減ることから、データ分析の対象から外しています。

 

また地域的には、カリフォルニア州35%、フロリダ州13%、イリノイ州6%、テキサス州5%、その他州35%となっています。

 

カリフォルニア州貸金業者のデータですので、数値を割り引いてみる必要があるとは思いますが、全米ベースで債権回収を行っているサービーサーのデータでも、同様な地域分布が見られます。住宅価格上昇が継続する地域には転売事業者が多くおり、資金需要も多いと言えます。

 

さらに戸建て転売業者の熟練度ですが、過去総件数75件、過去1年間25件以上の成功実績がある業者比率が1年前に比べ10%近く増加しており、逆に未経験者の比率が数パーセント減少しています。

 

不動産貸金業者の顧客層が、より熟練度が高い戸建て転売業者に集中しつつあるのです。割安な物件を見つけることができ、裁定取引も実施できる目利きと、エキスパテーズの有無が融資をうけるポイントとなっています。

 

投資利回りを求めた金融資本が、カリフォルニア州を中心とした不動産融資市場で、昨年1年を通して駆け巡っている実情がご理解いただけたと思います。

 

本記事の内容は筆者個人の分析・見解です。

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