今回は、マクロ経済の動向から2017年の不動産マーケットを振り返るとともに、2018年以降の見通しを見ていきます。※ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社のシービーアールイー株式会社(CBRE)。本連載では、そのリサーチ部門が世界の不動産市場の最新情報をお伝えします。

黒田日銀総裁の任期後も、金利は超低水準の推移か

低位ながらも安定した経済成長が期待される中、2018年も商業用不動産に対するテナント需要は堅調に推移するとみられる。ただし、アセットタイプやエリアによっては過去の水準上回る規模の供給が予定されているため、マーケットによっては貸し手市場から借り手市場へ移行していくと予想する。

 

<マクロ経済動向>

 

日本の経済は堅調に推移している。GDPは2016年Q1から2017年Q3にかけ、7四半期連続でプラス成長を記録した。7期連続のプラス成長は、1999年Q2から2001年Q1までの8期連続以来、約16年ぶり。牽引役は輸出ならびに企業の設備投資である。海外景気の回復とともに、為替(ドル/円)レートが前年に比べて円安水準で安定していることが、背景にある。

 

一方、実質賃金の伸び悩みで消費支出全体は冴えない展開がしばらく続いた。しかし、株高や為替の安定を背景に、百貨店では高額品や免税品の売上が回復傾向にある。労働需給が賃金上昇の加速につながれば、個人消費全般の持ち直しにつながるとも期待されている。完全失業率は2017年11月時点で2.7%と、24年ぶりの低水準にある。雇用環境の改善で消費マインドも改善基調にある。

 

CBREグローバルリサーチでは、2017年の実質GDP成長率を1.7%と見込み、2018年も同程度の成長を予想する。ただし、物価の上昇率は依然として低位で推移している。そのため、現在の緩和的な金融政策は当面のあいだ維持されるだろう。2018年4月には黒田日銀総裁の任期が切れる。黒田氏が続投する可能性もあるが、退任したとしても金融政策に大きな変更はないと考えられる。したがって、日本の金利はまだしばらくは現状の超低水準で推移しよう。

 

[図表1]経済、金融コストはともに低位安定

出所:CBRE Global Research、2017年11月
出所:CBRE Global Research、2017年11月

消費税10%で、2020年の日本経済はマイナス成長!?

米国においては、好調な景気を背景に、中央銀行であるFRBが金利引き上げを継続するとみられている。日米間の金利格差が広がることで為替は今後も円安傾向で推移する可能性が高い。ただし、CBREグローバルリサーチは、米景気は2019年以降に鈍化するとみている。利上げが市場金利の上昇、ならびに需要のスローダウンにつながると考えられるためだ。もちろんそうなれば再び米国FRBは金融政策を緩和方向に転換するだろう。

 

しかし、再度の金融緩和で景気浮揚効果が出てくるのは2021年以降と予想され、2020年の成長率は1%を下回ると予想される。米国の成長率の鈍化は、日本経済にも影響があることは言うまでもない。2019年10月に予定されている消費税の税率引き上げ(8%⇒10%)が予定通り行われることを前提とした場合、2020年の日本経済はマイナス成長になると、CBREグローバルリサーチでは予想している(図表2参照)。

 

[図表2]日米の実質GDP比較

出所:CBREGlobalResearch、2017年11月
出所:CBREGlobalResearch、2017年11月

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