前回は、日銀が「物価上昇率2%」という目標を達成できない理由を取り上げました。今回は、銀行の「貸し出し」が伸び悩む背景を見ていきます。

借金を減らし、内部留保を厚くしている企業

日銀は大量の資金を供給しているのに、なぜ、銀行による信用創造の機能はうまく働かないのでしょうか。

 

銀行による信用創造が働くには、銀行から資金を借りたいという個人や企業がたくさんいることが必要です。みんなが銀行からお金を借りて使うことで、お金が世の中を回っていくのです。しかし、いまや個人も企業も以前のようにお金を使おうとしません。

 

そもそも、世界で最も速いスピードで少子高齢化が進み、人口減少も始まった日本では、社会全体の経済活動が伸びません。個人レベルでは「もうそんなに買いたいものはない」という状態です。

 

企業としては、商品やサービスが国内市場でどんどん売れるという自信が持てないため、新しい工場や店舗を造ったり、社員を増やしたりするわけにはいきません。

 

むしろ、かつてのバブル崩壊や2008年のリーマン・ショックの経験から、多くの企業は借金を減らし、内部留保を厚くしています。特に大企業でその傾向が顕著です。

2016年度、上場企業の自己資本比率は初の約4割超え

日本経済新聞社の調査によれば、手元資金が有利子負債より多い「実質無借金」の上場企業は、2016年度末で2016社にのぼり、上場企業に占める割合は前年度から1.6ポイント上昇、58%になったそうです。

 

世界的に景気が回復し、利益が増えている分をせっせと借金の返済に充てているのです。

 

同じく日本経済新聞社が上場企業(金融などを除く)を対象に自己資本比率を集計したところ、2016年度には前年度から0.8ポイント上昇し、40.4%になっています。自己資本比率は、株主から預かった自己資本が総資産に占める比率のことで、上場企業で4割を超えたのは初めてのことです。

 

自己資本比率が高いということは、借入金が少ないということであり、やはり上場企業の多くが、新たに資金を借りるどころか、むしろこれまで借りていた分をどんどん返していることを示しています。銀行の貸し出しが伸びないのも無理はありません。

企業のためのフィンテック入門

企業のためのフィンテック入門

小倉 隆志

幻冬舎メディアコンサルティング

圧倒的な「コスト削減」「業務効率化」「キャッシュフロー改善」を実現する最新技術とは? フィンテックは一時の流行の枠を超え、次のステージに入っているという見方が大勢を占める。 ビットコインのリスクなどマイナス要…

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