親事業者の優越的な地位の濫用を取り締まる「下請法」
中小企業のうち製造業などは、大手企業の下請けが中心です。中小企業活性化のために、政府では従来、下請企業の取引条件の改善に取り組んできま
その代表例が「下請法」(正式には「下請代金支払遅延等防止法」)です。この法律は下請取引を公正にし、下請事業者の利益保護を図るため基本的に親事業者が守るべきルールを定めており、そのルールが守られない場合、行政が親事業者(発注者)に対して法的な措置を取ることもできます。
下請法は、独占禁止法を補完するものと位置付けられており、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるのが狙いです。
独占禁止法では優越的地位の濫用かどうかをさまざまな要素から総合的に判断するのに対し、下請法では下請取引の発注者(親事業者)を資本金の区分によって一律に「優越的地位にある」ものとして取り扱い、より迅速で効果的な規制が可能になっています。
具体的には、親事業者が守るべきルールとして、4つの義務と11の禁止行為が規定されています。
[図表1]下請法の適用対象となる取引当事者の基本金区分
[図表2]下請法における4つの義務
[図表3]下請法における11の禁止行為
下請代金の支払は「できる限り現金」という通達も
2016年12月にはさらに、中小企業庁長官と公正取引委員会事務総長の連名で、「下請代金の支払い手段について」という通達が出されました。
これは50年前に出された「下請代金の支払手形のサイト短縮について」という通達を見直し、親事業者による下請代金の支払について、次のように求めるものです(ただし、今回の通達そのものに強制力はありません)。
①下請代金の支払はできる限り現金によること
②手形等により下請代金を支払う場合には、その現金化にかかる割引料等のコストについて、下請事業者の負担とすることのないようにすること
③下請代金の支払についての手形等のサイトについては、繊維業90日以内、その他の業種120日以内とすることは当然として、段階的に短縮に努めることとし、将来的には60日以内とするよう努めること