重要なのは「後継者の早期決定」と「育成期間の確保」
前回の続きです。
ここまで後継者候補を4つに分類して見てきました。それぞれメリット・デメリットがありますが、一般的に中小企業の事業承継がもっともスムーズに進めやすいのは親子承継、次に親族承継で、その次がたたき上げ承継でしょう。前回紹介した通り社外承継はあまり現実的ではありません。
誰を後継者にするかによって、事前準備に必要なことは異なります。しかし実は、相応の現社長と後継者のコミュニケーションや、従業員や取引先などとのコンセンサスを十分に得ていれば、誰が後継者であろうとそれほど大きな問題にはなりません。
客観的にいえば、適切な育成さえできれば、本人の経営者としての資質や能力、立場はクリティカルな問題ではないということです。重要なのは、早く後継者を決定し、育成に取り掛かることです。
後継者に必要なのは「自立心」と「自律心」
ただ、どんな後継者でも欠かせない指標を挙げるとすれば、自立心と自律心があります。本人に自立、自律する素養がなければ、次期社長としての育成が困難になるからです。
自立心は、他者(例えば現社長)に頼ることなく、独り立ちして自力で経営を行っていこうとする心構えです。後継者は自分の頭で考え、周囲の意見に耳を傾けながら、最後は自分で判断し、責任を負わなければなりません。
自律心は、自分の置かれた立場や境遇を理解し、自らを律して最適な行動を行おうとする心構えです。この2つの心構えさえ有していれば、よほどのことがない限り、新しい社長として育成していくことができます。
一般的に社長は「孤独」だといわれます。会社経営においてイエスかノーかを最終的に判断するのも、判断の最終的な責任を負うのも社長です。誰かのせいにすることも、甘えることもできません。また、社長を注意してくれる人もほぼいません。自社の幹部や部下に相談はできるかもしれませんが、何が正しくて、何が間違っているのか、コンプライアンスも含めて最終的に決めるのは社長自身なのです。