前回に引き続き、労務判例からパワハラと認定された行為を見ていきます。※本連載は、堀下社会保険労務士事務所所長で社会保険労務士の堀下和紀氏、穴井りゅうじ社会保険労務士事務所所長で社会保険労務士の穴井隆二氏、ブレイス法律事務所所長で弁護士の渡邊直貴氏、神戸三田法律事務所所長で弁護士の兵頭尚氏の共著、『労務管理は負け裁判に学べ!』(労働新聞社)より一部を抜粋し、会社側が負けた労働判例をもとに労務管理のポイントを見ていきます。

無視などのいじめ、容姿のからかいもパワハラに

事件名
美研事件(東京地判平20.11.11 労判982・81)

 

行為等

①新人を原告に近づけないようにしたり、挨拶をしても返さない等のいじめ

②美容カウンセラーからテレフォンアポインターへの降格

③降格を拒否した原告に対し、「あなたがいると会社がつぶれてしまう。いうこと聞かなければ自宅待機だ」と発言

④「午後3時までにすべての私物を持って出て行きなさい」と発言し、原告を事務所から出させた等

→原告は腰痛、うつ病を発症し退職

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

305万円(退職後1年分の逸失利益225万円を含む)

 

事件名

川崎水道局(いじめ自殺)事件(東京高判平15.3.25 労判849・87)

 

行為等

①被告ら(上司3名)は原告に対し「何であんなのがここに来たんだよ」「もっとスケベな話にものってこい」等を発言した

②K(同僚)に対し「原告に風俗店のことについて教えてやれ。経験のために連れていってやってくれよ」などといって原告をからかった

③原告に対し「スケベ麻原(オウム真理教の教祖)」「むくみ麻原」などといって容姿を嘲笑した

→原告は精神分裂病を発症して自殺

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

2345万円

「集中力低下の原因だ」と結婚指輪を外すよう命令

事件名

音更町農業協同組合事件(釧路地帯広支判平21.2.2 労判990・196)

 

行為等

業務量の増大に対する軽減措置なし、「こんなこともできない部下はいらんからな」などと上司が約3時間にわたり厳しい口調で叱責

→原告はうつ病を発症して自殺

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

1億398万

 

事件名

円国・静岡労基署長(日研化学)事件(東京地判平19.10.15 労判950・5)

 

行為等

①上司が「存在が目障りだ、居るだけでみんなが迷惑している。お前のカミさんも気がしれん、お願いだから消えてくれ」と発言

②上司が「何処へ飛ばされようと俺は甲野は仕事しない奴だと言い触らしたる」と発言

③上司が「お前は会社を食いものにしている。給料泥棒」と発言

④上司が「肩にフケがベターと付いている。お前病気と違うか」と発言など

→原告はうつ病を発症して自殺

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

労災を認定

 

事件名
名古屋南労基署長(中部電力)事件(名古屋高判平19.10.31 労判954・31)

 

行為等

①「主任失格」「お前なんかいてもいなくても同じだ」などの叱責

②結婚指輪を付けることが仕事に対する集中力低下の原因になるとの独自に見解に基づき、「目障りだから、そんなちゃらちゃらしたものは着けるな指輪を外せ」と命令など

→原告はうつ病を発症して自殺

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

労災を認定

労務管理は負け裁判に学べ!

労務管理は負け裁判に学べ!

堀下 和紀,穴井 隆二,渡邉 直貴,兵頭 尚

労働新聞社

なぜ負けたのか? どうすれば勝てたのか? 「負けに不思議の負けなし」をコンセプトに、企業が負けた22の裁判例を弁護士が事実関係等を詳細に分析、社労士が敗因をフォローするための労務管理のポイントを分かりやすく解説…

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