前回に引き続き、労務判例からパワハラと認定された行為を見ていきます。※本連載は、堀下社会保険労務士事務所所長で社会保険労務士の堀下和紀氏、穴井りゅうじ社会保険労務士事務所所長で社会保険労務士の穴井隆二氏、ブレイス法律事務所所長で弁護士の渡邊直貴氏、神戸三田法律事務所所長で弁護士の兵頭尚氏の共著、『労務管理は負け裁判に学べ!』(労働新聞社)より一部を抜粋し、会社側が負けた労働判例をもとに労務管理のポイントを見ていきます。

退職勧奨を繰り返し、仕事をなくしたケース

事件名
クレジット債権管理組合等事件(福岡地判平3.2.13 労判582・25)

 

行為等

所長の横領が発覚後、原告2名に対し、他の従業員11名全員の面前で「誰か共犯がいるはずだ。お前やっただろう」「今、自分がやったことを正直にいえば、ここだけのことにして許してやる」等と大声で30分間にわたって述べた行為

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

60万円

 

事件名

(原告2名分)JWTジャパン事件(東京地判平20.7.29 労判971・90)

 

行為等

①退職を拒んでいたのに5回の退職勧奨

②担当業務を外し、出勤しても何もすることがない状況においた

③再就職活動に必要な期間は経過したとして会社への立入りを拒否した

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

60万円

 

事件名

日本土建事件(津地判平21.2.19 労判982・66)

 

行為等

①長時間の時間外労働を強要

②「お前みたいな者が入ってくるで、M部長がリストラになるんや!」との発言

③新入社員の原告に対し、「こんなこともわからないのか」といって、物を投げつけたり、机を蹴飛ばすなどした行為

④勤務時間中に、原告にガムを吐きつけ、測量用の針の付いたポールを投げつけて怪我させた行為など

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

150万円

怒鳴る、箱をぶつける、定規で頬をたたく等の暴行も

事件名

東京都ほか(警視庁海技職員)事件(東京高判平22.1.21 労判1001・5)

 

行為等

①シンナーなどの有機溶剤に対する接触皮膚炎等を起こす可能性が大きい体質であるXに対し、シンナーをXに示して「いい臭いすんな、ほら、この野郎、来い」と発言

②「職場全体から嫌悪されている」と述べて、火の付いた煙草を投げつけた行為など

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

165万円

 

事件名
エールフランス事件(東京高判平8.3.27 労判706・69)

 

行為等

①「こら。ここに来い」と呼びつけ、頭を平手でついた

②「会社辞めろ」と怒鳴る

③箱をぶつける、定規で頬をたたく、机にコーヒーをこぼすなどの暴行、嫌がらせ行為等

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

230万円

 

事件名
ファーストリテイリングほか(ユニクロ店舗)事件(名古屋高判平20.1.29 労判967・62)

 

行為等

①原告(店長代行)が被告(店長)の仕事上の不備を指摘し、「どういうことですか?反省してください」と連絡日誌に記載したことに対して説明を求めた際、被告(店長)が原告の胸倉をつかんで、背部を板壁に3回打ち付け、顔面に1回頭突きをした行為

②本件についての報告書の開示を2時間以上にわたって電話で求めた原告に対し、管理部長が「いいかげんにせいよ。お前。おー、何考えてるんかこりゃあ。ぶち殺そうかお前」と声を荒げて申し向けた行為など

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

230万円

労務管理は負け裁判に学べ!

労務管理は負け裁判に学べ!

堀下 和紀,穴井 隆二,渡邉 直貴,兵頭 尚

労働新聞社

なぜ負けたのか? どうすれば勝てたのか? 「負けに不思議の負けなし」をコンセプトに、企業が負けた22の裁判例を弁護士が事実関係等を詳細に分析、社労士が敗因をフォローするための労務管理のポイントを分かりやすく解説…

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