今回から、労務判例からパワハラと認定された行為を見ていきます。※本連載は、堀下社会保険労務士事務所所長で社会保険労務士の堀下和紀氏、穴井りゅうじ社会保険労務士事務所所長で社会保険労務士の穴井隆二氏、ブレイス法律事務所所長で弁護士の渡邊直貴氏、神戸三田法律事務所所長で弁護士の兵頭尚氏の共著、『労務管理は負け裁判に学べ!』(労働新聞社)より一部を抜粋し、会社側が負けた労働判例をもとに労務管理のポイントを見ていきます。

大きな赤文字で部下を罵ったメールを一斉送信

<事件名>

A保険会社上司(損害賠償)事件(東京高判平17.4.20 労判914・82)

 

行為等

被告(上司)が、ポイントの大きい赤字で、「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。当SC(サービスセンター)にとっても、会社にとっても損失そのものです。あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。・・・これ以上、当SCに迷惑をかけないで下さい」などと記載したメールを、原告を含む従業員10数名に一斉送信した

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

5万円

 

<事件名>

三洋電機コンシューマエレクトロニクス事件(広島高松江支判平21.5.22 労判987・29)

 

行為等

面談において感情的になり大声で、「自分は面白半分でやっているかもわからんけど、名誉毀損の犯罪なんだぞ」「前回のことといい、今回のことといい、全体の秩序を乱すような者はいらん。うちは一切いらん」「何が監督署だ。何が裁判所だ。自分がやっていることを隠しておいて、何が裁判所だ。とぼけんなよ。本当に俺は絶対許さんぞ」などと叱責

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

10万円

母親の前で四つんばいの状態にさせ、殴る蹴るの暴行

<事件名>

東芝府中工場事件(東京地八王子支判平2.2.1 労判558・68)

 

行為等

①被告(上司)は、有給休暇申請を事務所の書記に伝言で伝えた原告に対し、直接被告か所属長に電話するように指示して、始末書の作成を求めた。被告は、始末書の作成を拒絶したが、被告の指示した方法に従って有休を取得した。ところが、原告は、被告の有休取得後に3日間にわたり、1日目は3回(合計3時間5分)、2日目は3回(合計5時間30分)、3日目は2回(合計4時間35分)、原告を呼び出して執拗に始末書の作成を求めた

 

②被告(上司)は、原告が他の従業員に比べて後片付けを始める時間が早いことをとがめて、原告を作業台まで連れて行き前日の後片付けを再現するように求めた。原告は忘れたといってこれを行わず、弁護士に連絡しようとして職場から200m離れた電話ボックスに向かった。被告は原告に職場に戻るように指示して、原告の腕をとって引き戻そうとした

 

→原告は、心因反応に陥り、欠勤した

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

15万円

 

<事件名>

ヨドバシカメラほか事件(東京地判平17.10.4 労判904・5)

 

行為等

①ポスターを丸めた紙筒で頭部を強く約30回殴打し、クリップボードで頭部を約20回殴打

②大腿を膝で3回強く蹴った

③頬を手拳で数回殴打、大腿部を膝で蹴り、頭部を肘やげんこつで約30回殴打

④原告Aを原告B(原告Aの母親)の前で四つんばいの状態にさせ手拳や肘で殴打して足や膝で蹴るという暴行を約30回加え、後日原告Aに遅刻と虚偽の連絡を強制的に謝罪させた

→原告Bは原告Aへの暴行に接したことでうつ病を発症

 

賠償額(1万円未満切り捨て)

①20万円

②10万円

③31万円

④原告A 100万円、原告B 403万円

労務管理は負け裁判に学べ!

労務管理は負け裁判に学べ!

堀下 和紀,穴井 隆二,渡邉 直貴,兵頭 尚

労働新聞社

なぜ負けたのか? どうすれば勝てたのか? 「負けに不思議の負けなし」をコンセプトに、企業が負けた22の裁判例を弁護士が事実関係等を詳細に分析、社労士が敗因をフォローするための労務管理のポイントを分かりやすく解説…

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