今回は、中小企業の経営者が、銀行交渉のために理解したい「銀行特有の仕組み」について説明します。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

解消された根抵当…会社社長と銀行支店長の「その後」

ここまで、ある会社の事例を紹介してきました。

根抵当を外さない、A銀行の支店長がいて、

その根抵当を外すことに協力してくれた、

B銀行の支店長がいました。

結果、根抵当は外れ、その会社でのA銀行の融資は、

そっくりそのまま、B銀行に入れ替わりました。

 

A銀行の融資額は、ゼロになったのです。

根抵当が外れ、その会社は、無事に土地を子会社へ売却しました。

と同時に、親会社での借入はなくなり、

子会社での、B銀行からの借入だけが、残りました。

 

これは、5年ほど前の出来事です。

A銀行、B銀行、の支店長たちは、その後、どうなったのか…。

 

この会社があるのは、地方のなかでも、遠方です。

かなりの田舎です。

そもそも、銀行の数が限られています。

融資がなくなったA銀行とも、

口座の取引などは、そのまま残ってます。

融資がなくなったからといって、完全に縁が切れる、

ということではなかったのです。

 

まず、

根抵当を拒んだあげく、すべての融資を失った、

A銀行の支店長は、その数か月後、子会社への出向となりました。

年齢から考えると、片道切符です。

A銀行の担当営業も、支店長の出向後、

間もなく、他支店へ異動になりました。

といっても、もちろん、上位支店ではなく、

支店ランクでは同じくらいの支店です。

そもそも、今回の舞台となった支店そのものが、

A銀行のなかでは、低いランクの支店だったのです。

 

一方、

根抵当外しに協力してくれた、B銀行の支店長は、

その後まもなく、本部へ異動になりました。

まさに、栄転です。

しかしその後、地方銀行再編の嵐が吹き始めました。

B銀行も、ある地銀との合併を余儀なくされました。

B銀行は、いわゆる、第二地銀なのです。

そんななか、栄転となった支店長も、

子会社へ出向になった、とお聞きしました。

根抵当や融資の獲得が銀行員の生きる道!?

このような話しを聞くにつれ、

銀行の組織・体制が、

支店長や営業担当の意識・行動を作り出し、

その影響を受けるのが、中小企業の経営者だな、

と、つくづく感じるのです。

支店長にせよ、営業担当にせよ、

銀行人事のルールに従い、生きてきたのです。

銀行のなかでの己の生き筋を高めるには、

根抵当や融資を獲得するしかないのです。

個人保証や、高金利、社債なども、しかりです。

銀行員は、そういう思考にならざるをえないのです。

 

その銀行員を相手に、負けずに交渉をする経営者は、

銀行員の思考や特性、銀行の仕組みを、

よくよく知っておかねばばらないのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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