▲トップへ戻る
銀行に設定された「根抵当」の解除に成功した事例

今回は、前回に引き続き、銀行の「根抵当」の解除に成功した事例について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

「先ほど、残金を全額、振り込ませていただきました」

前回の続きです。

 

ある会社で、含み損を抱える土地の売却を、進めていました。

根抵当を盾に、A銀行は融資額をさらに増やそうとしました。

そこへB銀行が手を貸してくれました。

根抵当を外すのに必要な資金を、無担保・無保証で、貸してくれたのです。

これで、A銀行に全額一気に返済する、準備が整ったのです。

B銀行の支店長は言いました。

“〇月〇日の9時30分に、

 A銀行の支店長にアポを取り、訪問してください。

 9時すぎに、私共からA銀行に、返済資金を振り込みますから。”

 

その、Xデーがやってきたのです。

その日は私も、同行しました。

 

その会社から、A銀行の支店まで、車で5分ほどです。

9時過ぎに、B銀行の支店長から、経営者に電話が入りました。

“今、A銀行への振込を完了しましたので。”

“わかりました。A銀行へ向かいます!”

私たちは、会社を出ました。ミッション開始です。

 

その日はとびきり暑い朝でした。

少し早めにA銀行へ到着しました。

支店長が、玄関先の植木に水をやっていました。

“支店長、おはようございます!”

“おはようございます。これはお早いご到着ですね。”

表面上はお互いに笑顔ですが、お互いに腹の探り合い、

といった雰囲気なのです。

“どうぞ、お部屋に案内いたしますので。”

水やりを終え、支店長室へと案内してくれました。

 

こちらは私含めて3名、

先方も副支店長、営業担当を含めて3名でした。

挨拶もそこそこに、支店長が切り出しました。

“いやあ、最近は政治も経済も不安定で、

 いったい、いつ何が起こるかわからない世の中ですねぇ…。

 ところで、今日はいったい、どのようなご用件でしょうか?”

暑い日でしたが、その笑顔は冷ややかでした。

急にアポを取るのは、何かある、と踏んでいたのだと思います。

 

これまで交渉をしてきた、専務が言いました。

“ええ、実はですね。

 今日は改めて、根抵当の解除をお願いにまいりました。”

“その件でございますか。

 しかし・・・、その件は以前にも申し上げた通り、

 全額返済いただいた際に、解除させていただきますので・・・。”

“そうでしたよね。

 なので、お伺いさせていただきました。”

“えっ?どういうことでしょうか?”

“先ほど、残金を全額、振り込ませていただきました。”

支店長の表情から、笑顔が消えました。

「こういうやりかたしか、ないんじゃないですか?」

“どうなの?”

支店長は、営業担当に聞きました。

“いえ、特に動きはなかったのですが…。”

やはり、朝イチバンでの口座状況は、チェック済みでした。

B銀行の支店長が言ったとおりです。

その様子をみて、専務が言いました。

“振り込んだのは、ついさっきですから。”

“すぐ確認して。”

営業担当は、すぐ確認に走り、

最新の入金状況を印字した用紙を手に持って、戻ってきました。

支店長は、奪い取るようにして、その用紙に目を凝らしました。

営業担当、副支店長も、両サイドから顔を近づけました。

副支店長が指さし、言いました。

“入って、ますね・・・。”

顔を近づけあった3人の目が、テンになった瞬間でした。

 

“こ、これはいったい、ど、どういうことでしょうか?”

支店長の声が震えました。

“言われた通りに、全額返済させていただきました。

 なので、根抵当を解除いただけますよね。”

“いや、まあ、そうなんですが。

 そのようなことなら、先に一言おっしゃっていただければ…。”

“真っ先にお願いしたときに、お断りされたので、

 言われた通りにしたまでです。

 そこに出ているように、B銀行は、我々の望むスキームに、

 協力していただけましたので。

 解除していただけますよね?”

“わ、わかりました。こういうことであれば、しかたがないですね・・・。”

“お願いします。”

“しかし、こういうやりかたは、どうかと・・・。”

“こういうやりかたしか、ないんじゃないですか?”

専務が言い返しました。

“・・・・・。”

支店長は、何も言えませんでした。

 

まさに支店長の言葉通り、

いつ何が起こるかわからない世の中、だったのです。

ようやく、

根抵当解除の申し入れ用紙を受け取り、支店長室から出ました。

“ありがとうございました!”

何も知らない銀行員の、妙に元気な声が、響きました。

支店長以下3人の表情とは、対照的でした。

A銀行にとっては、

まさに億単位の融資が一気に消え去った、瞬間だったのです。

 

こうしてようやく、A銀行の根抵当は、解除できたのです。

 

(続)

株式会社アイ・シー・オーコンサルティング 代表取締役

昭和40年 大阪府生まれ。

平成元年 関西大学卒業後、兵庫県の中堅洋菓子メーカーに入社。経理、総務、人事、生産管理、工程管理、広報など、主たる管理部門で実力を発揮。

平成17年 株式会社アイ・シー・オーコンサルティングに加わり、経営指導業務を開始する。
以降、長年の現場実務経験と、師匠である井上和弘(アイ・シー・オーコンサルティング会長)の《井上式経営術》を武器に、日々、中小企業の黒子としての経営指導に邁進している。

指導実績:財務改善、税務・銀行対策、労務問題改善、経営企画、管理会計、IT・システム化、事業承継など。
また、日本経営合理化協会主催「後継社長塾」(塾長:井上和弘)、に塾長補佐として参加し、後継社長の育成にも尽力している。

著者紹介

連載経営者必読!融資を勝ち取る銀行交渉術

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

 

経営者の財務力を一気に アップさせる本〔補訂版〕

経営者の財務力を一気に アップさせる本〔補訂版〕

古山 喜章,井上 和弘

東峰書房

数字が苦手な人にこそ読んで欲しい!本書では、会社経営にまつわる数字を読み解き財務力をアップさせる方法を解説します。数字が苦手だからこそとことんわかりやすく理解する方法を見出した筆者。そのノウハウをお伝えし、経営…

 

海外不動産セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

オーナー必見!ハワイ不動産の「管理戦略」「出口戦略」最新事情

~これから購入する人も知っておきたい、売却まで見据えた「ハワイ不動産投資」のポイント<br>「ハワイ不動産売却時の税務」に精通した専門税理士もゲストで登場!

講師 内藤 克 田村 仁 氏
日時 2018年09月13日(木)
内容

・高値で売れる物件、なかなか売れない物件・・・

 2018年最新版!ハワイ不動産の売却事情とは?

・ハワイ不動産の所有や売却にかかるコスト、

 本当は何がどれくらいかかるのか?

・ハワイ不動産売却の基本的な流れ

・所有不動産の価値を下げずに売却するためのポイント

・売却まで意識したハワイ不動産の管理・修繕のポイント

・ローンの活用もあり!ハワイ不動産の上手な「買い替え方」とは?

・ハワイ不動産売却時の税務(解説:内藤克税理士)

・成功事例で見る「購入価格<売却価格」での売却パターン

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧