今回は、日銀による「金融政策」の現状を見ていきます。※本連載では、松本大学松商短期大学部経営情報学科の藤波大三郎教授による著書『たのしく学べるファイナンシャル・プランニング』(創成社)の中から一部を抜粋し、ファイナンシャル・プランニングの基礎知識の中から「金融資産運用」について解説します。

現在は、緩やかなインフレを起こす「リフレ政策」に

(4)金融政策

 

日本銀行は金融政策を実行し、物価の安定を目指しています。現在は、アベノミクスの一環として年率2%のインフレ目標を設定して、後で述べる長短金利操作付き量的・質的金融緩和を行っています。この金融政策の実行の方法としては公開市場操作という方法を使っています。現在、日本銀行は市場から主に国債を購入する買いオペと呼ばれる金融緩和政策を取っています。

 

日本銀行は、買いオペによる国債の購入代金を金融機関が日本銀行に持っている当座預金口座に支払います。その結果、マネタリーベースと呼ばれるお金の量が増え、社会全体の金融が緩和されることになります。マネタリーベースは、日本銀行の当座預金にあるお金と日銀券(紙幣)の発行残高および貨幣流通高の合計額を指し、ハイパワード・マネーとも呼ばれ、440兆円程度あります(2017年1月時点)。

 

このマネタリーベースを現在の日本銀行は金融政策の直接の目標としていましたが、平成28年9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入して資金量に関する目標はメドとしています。現在の日本銀行はこうした金融緩和を行って緩やかなインフレを起こすリフレ政策と呼ばれる金融政策を取っています。また、日本銀行の当座預金の一部をマイナス金利とすることで銀行に貸出を促しており、金利水準の一層の低下を目指しています。

「金融政策はデフレに効果があり」と捉えている日銀

世のなかのお金の量は銀行預金などで示されるマネーストックという指標があり、世のなか全体のお金の量を表し、960兆円程度あります(2016年12月時点)。一般的にマネーストックが増えるとインフレが起きるとされています。そのマネーストックが増えるためには、前に述べたマネタリーベースが増える必要があるとされています。

 

このマネタリーベースとマネーストックの関係については専門的な議論となるので割愛しますが、現在の日本銀行は資本市場から国債や株式投資信託等を大量に買い入れることによって、マネタリーベースを増やし、緩やかなインフレを起こせると考えています。かつての日本銀行は、デフレは人口減少とわが国の潜在的な経済成長力の低下が原因だとしていて、こうした金融政策ではデフレを止めることはできないと考えていました。しかし、2013年からは方針を大きく転換し、金融政策はデフレに効果があるとしています。

 

そして、日本銀行は平成28年9月に、前に少し触れた、長短金利操作を行う「イールドカーブコントロール」と消費者物価が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースを拡大する「オーバーシュート型コミットメント」を実施しています。イールドカーブコントロールは、長期金利の極端な低下を阻止することを目的としています。オーバーシュート型コミットメントは、消費者物価が安定的に2%(除く生鮮食品)を超えるまでは金融緩和を止めない約束をするということです。

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